- ・対策の概要
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アワビ資源の減少に伴い、一般に以下のようなアワビ漁に対する制限が設けられている。
- 一定以下の大きさのアワビの採取禁止
- 漁期の制限(特に産卵期を避ける)および操業時間の制限
- 乱獲を招くような機器使用の禁止
しかしながら、こうした資源の減少を食い止めるための対策だけではなく、資源の回復を積極的に行う対策も望まれ、既にまだ実を結んでいるとはいえないまでも幾つかの対策が実施されている。主なものとしては以下のようなものがある。
- 汚染された環境の回復と生態系の研究に基づく自然に近い環境の整備
- 海産物としてのアワビ供給のための養殖産業
- 直接的な資源回復手段、または増殖産業としての稚貝の放流
いずれも大規模な対策であるため国の援助、企業の参入や多くの人々の関心と従事を必要とし、今後もこうした努力と研究の継続と発展が望まれる。
- ・アワビ養殖の現状
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アワビという高価な海産物の養殖が産業として十分に成立し得るとして、これまで多くの企業がアワビの養殖に参入している。しかしながら現時点では発展途上の段階と言え、まだ市場価格を左右するまでには至っていない。
問題としては、まずアワビ養殖技術そのもの、飼料をはじめとする非常に高いコスト、それからアワビが成長まで時間がかかることなどがある。こうした問題を踏まえ、現在ではさらなる大規模な投資を国内に行うよりも、むしろこれまで培われた技術を海外へと移植し、アワビの種類を選択しつつ養殖産業を発展させる傾向が見られる。
- ・稚貝の放流
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減少傾向にある種の個体数の増加、回復計画において稚魚の放流は有効な手段の一つとされるが、ことアワビに関しては現在のところそれほどの成果は上がっていない。絶滅の危機に瀕している種の個体数の回復は当然ながらかなりの期間を要するため、これまで長期的な展望を持って大規模な計画が実施されてきたが、放流したアワビの生存率は低く、またそれに対する決定的な打開策もない。
ただし、魚獲量の減少が進行する中で放流したアワビがその魚獲量のある程度の割合を占める以上、成果は一応見られる、と同時に放流を継続せざるを得ない状況となっている。
今後の課題としては、これまで稚貝のために用意した人工漁礁とそれを取り巻く海域全体の生態系を含めた環境の見直し、また稚貝の放流だけでなくアワビ漁全体に当てはまることだが、密漁への対策の強化などが挙げられる。
- ・海外におけるアワビ減少への対策
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現在国内でのアワビの供給不足を補うべく海外から輸入されるアワビも、世界的にアワビの個体数が減少していることから価格の高騰を免れない。輸入量の最も多いのはオーストラリアで、国産アワビと比べて3〜4割程度安く、加工食品として使われることが多い。
オーストラリアではアワビ漁のためのライセンス制の導入や養殖産業の展開により安定した生産高を上げている。また、かつては輸出量の多かったアメリカやカナダなどの国々のアワビ生産量が減少する一方で、近年では種の限定はあるものの新しい養殖技術の導入により中国、台湾などが低価格でアワビを輸出するようになった。
元々アワビ養殖技術の研究は日本で始まったが、現在では前述以外の国の他、北アメリカ西海岸、メキシコ、フランス、チリなど各国で研究が進んでおり、今後の発展が期待されている。