本島町笠島(ほんじまちょうかさしま)の町並み
繁栄の名残をとどめる笠島
国選定「重要伝統的建造物群保存地区」の笠島集落は、港町と城下町の雰囲気を併せ持っています。狭い道路が網の目のように通り、このうち集落の東寄りを南北に走る東小路と、これと直交して弓なりに通るマツチョ通りはやや道路幅が広くなっています。この通りに面して正面に親子千本格子の窓をあしらい、本瓦葺きで土壁を厚く塗った町屋形式の住宅がひしめき、それらが端正な美しさを醸し出しています。
現在、江戸後期の建物が13棟、明治時代のものが20棟ほど残っています。新しい家も街並みに調和するよう配慮されています。どの家にも随所に心憎いばかりの工夫の跡が見受けられます。
かさしまっぷ、ほんじまっぷ
笠島地区の地図(Google) ▶
笠島のここが見どころ (あいう文字は地図上の場所を示します)
あ. 真木(さなぎ)邸(まち並保存センター)
真木家は、1590天正18年に豊臣秀吉から島民に塩飽の領知権が与えられたとき、年寄と称したトップ4家の一つだった。江戸中期には宮大工として三代目五重塔(現存の塔はは四代目)の棟梁を務めた。島にしては広い敷地に、厨子(つし)二階建の代表的な間取りの主屋に蔵を持つ。まち並保存センターとして公開されており見学ができる。島びと手作りの土産物や関連書籍が販売されている。
公開時間 : 9時~16時
休館日 : 月曜、その日が休日の場合は翌平日、12月29日~1月3日、
1月4日~2月末日は土、日、祝日を除き休館
料金 : 大人 200円/人 子供 100円/人 (藤井邸の入館料を含む)
電話番号 : 0877-27-3828
い. 東小路(とうしょうじ)
集落の東寄りを南北に走る道路で、左右に古く落ち着いた街並みを堪能できる。江戸時代の民家に4メートル以上の地形石を使った家、さまざまなデザインの持送り(もちおくり)、虫籠窓(むしこまど)、親子千本出格子窓(おやこせんぼんでごうしまど)、そして起り(むくり)屋根など、見どころが多い。
う.小栗邸(おぐりてい)
小栗家は明治に入っても廻船業を営んで栄えた。典型的な町家構造を持つ。前の広場は町通りがなまって「マッチョ通り」と呼ばれる。また江戸時代には制札場があったことから札場(ふだば)とも呼ばれる。江戸時代の制札は現代の掲示板とは比較にならない重要な伝達機能だった。
え.髙島邸(古民家民宿 やかた船、旧高島清兵衛家住宅)
笠島集落には髙島、高宮、吉田などの同姓が多く、屋号で識別していた。この家は屋号を「清兵衛さん」といい、代々清兵衛を襲名した。江戸末期には宮大工で、自宅を地元の家大工に建てさせながら、自分は岡山へ出稼ぎして神社を建てていた記録が残る。現在はリフォームされて小綺麗な古民家民宿「やかた船別館」になっているが、築200年を超している。
お.吉田邸(旧なかや住宅)
築100年で集落では新しい方で間取りも町家造りではないが、建築素材やデザインに贅を凝らしている。所蔵の伊藤若冲 鶏図が本物であることが明らかとなり、評判を呼んでいる。入館料300円/人で公開されている。
LINEトラベルjpブログ ▶
吉田邸のブログ ▶
か.旧橘屋高島家住宅跡
この一角は、廻船で一時代を築いた橘屋の屋敷だった。今は昔、写真の庭石と古木を遺すのみで、かっての栄華を偲ぶよすがも無いが、石垣が示す広い敷地に思いをはせたい。
き.真木(まき)邸
真木(さなぎ)邸(まち並保存センター)の向かいの家は「まき」さん宅である。元々は「さなぎ家」の分家で「さなぎ」さんだった。明治初頭にこの家の徳助が、神戸で外国船の船家具修理を頼まれた時にひらめき、神戸市加納町で洋家具業を興した。このことは日本の洋家具発祥の地として神戸市史にも掲載されている。その時に「さなぎ」から一般的な「まき」に呼称を改めた。明治の初め、塩飽諸島は3軒に1軒が大工で、笠島集落も196軒中74軒が大工だった。宮大工、家大工、指物大工、船大工など各種の大工がいた。
まち並保存センターの開館時間に無料開放されており、パネルや、千石船模型が展示されている。
く.藤井邸
東小路の南寄りにある藤井邸は精巧に組まれた石垣上に、集落では珍しい妻入り(屋根の側面にあたる三角形側が入り口)で、間取りは他と同じ町家造りとなっている。起り(むくり)の屋根が上品である。藤井家は笠島集落の年番(一般の庄屋)を務めた家格で大量の古文書が残され、塩飽の歴史だけでなく江戸期の制度や文化に関する貴重な資料となっている。一部文書のコピーは香川県立文書館に保管されている。また文政、天保年間には、塩飽の舵取りの一人として日本の激動期に対処した記録に加えて、備中井原村(岡山県井原市)で事実上の在地代官であった大庄屋「大津寄家(おおつきけ)」の大規模な邸宅を建てた記録が残っている。まち並保存センターに見学希望を伝えれば無料で入館できる。
け.笠島集落見晴ポイント
東山登山道の登り口を「ビューポイント」の案内板に従って左手の急な階段を登ると、集落のいらかの波や本島瀬戸の景観を堪能できる。笠島まち並へ来て、これを見ないのはもったいない。