温泉あれこれ
さて、温泉とは広辞苑にはこのように記されています。
「地熱のために平均気温以上に熱せられて湧き出る泉。多少の鉱物質を含み、浴用または飲用として医療効果を示す。硫黄泉・食塩泉・炭酸泉・鉄泉などがある。わが国の温泉法では、地中から湧出する温水・鉱水および水蒸気その他のガスで、セ氏二五度以上の温度を有するか、または溶存物質を一キログラム中規定量以上含有するものをいう。」とある。
では、それを具体的に説明してみよう。
まずは「温泉法」なる法律から...そして詳しい泉質による温泉の分類
温泉の効能
- 概要
温泉の効能については諸説あります。多くの温泉の由来には動物や戦国の兵士のけがの治癒のために活用していた等の話が残ります。この治癒力の源は何でしょうか。それは別に述べてある泉質別の「効能成分」の他にも色々な要素が複雑に影響しあって効能を発揮している(シナジー効果or複合効果)としかいいようがありません。最近は入浴剤も人気で、日本人の温泉の効能への期待度と文化は非常に高いと言えます。
淋浴の効能としては、熱によって血管が広がり新陳代謝が高まり、体内の不要物の排泄を促すという温熱効果が有名です。また高温では、緊張、興奮の自律神経「交感神経」が活発になり、ぬるめの湯では、気持ちを鎮める働きをする「副交感神経」が優位に立って落ち着いた気分になります。このように温熱は負担をかけるものの、気持ち良さからくるリフレッシュ効果が望めます。
その他体表面にかかる静水圧により全身に圧力がかかり、内臓が刺激されるといった天然マッサージの効果もあります。特に多くの血液が集まる足への水圧では、ポンプアップ効果で、心臓への負担が減るとともに血液やリンパ液の循環も活発になっていくそうです。足湯や半身浴の効能はひとえにこの効果をねらった入浴法です。
また、これは水泳などでもいえることですが、水中では重力の負担がかなり軽減されることで筋肉が緩み、脳がリラックスした状態になるとともに、適度な運動は全身の無理のない筋力トレーニングになります。これを利用して筋力の弱った人や運動機能の低下した人のリハビリテーションにも利用されます。
- マイナスイオン作用?
さて、淋浴の効能としてよく引き合いに出されるのが水の多いところで発生するという「マイナスイオン」です。このマイナスイオンの効果については、ある資料によりますと「万病や老化の元であるといわれている活性酸素がマイナスイオンにより、活性酸素に電子を与えることでただの酸素になったり,ただの水になったりして、速効で活性酸素を消すことができ、恐ろしい体の内部の酸化や炎症を取り除く効果がある。」と書いてあります。さらに「血液を浄化するとともに血液の弱アルカリ化を進め、細胞の新陳代謝を活発にし筋肉の活性を高めて内蔵を健康にし、血液中のガンマグロブリンを増やしてからだの抵抗力・免疫力を高め、自律神経の機能を向上させて内分泌作用や造血作用を亢進する。」といった記述もあります。
しかしながらそもそもマイナスイオンの存在自体を疑問視する学者も多く、化学専攻だった私からみても正直なところ眉唾ものの効能と思っています。中学校で誰もが習う化学用語:陰イオンに対して紛らわしい表現を使う健康に関する効能表現の手法は、「アルカリイオン」などどともに、科学理解を混乱させる問題の多い表記であり「エセ科学」と批判されても仕方がないと私は思います。このような科学的に証明のできないものは、現代では安易に様々な商品の効能表記に多用されて公正取引委員会の頭を悩ませています。
ラドン温泉とは
- 概要
ラドンとは、元素記号Rn、原子番号86で、無色、無臭の気体である。ラジウムを発見したのは有名なピエ−ル・キュ−リ夫妻ですが、ラドンの存在をつきとめたのはドイツのエルンスト・ドルンという学者で1900年のことでした。ラドンは井戸水や湖水など自然界にも微量に存在しているが、あらゆる物質の中でもっともイオン化作用(電離作用)が強く、しかも水に溶ける安定した気体で、呼吸とともに血液にも吸収されることから、はやくから医療用としての活用が注目されていたようです。
日本では昭和35年から研究が進められ、ラジウムから絶えず放出される放射線のうち、人体に有害なベ−タ線、ガンマ−線を遮蔽し治療に有効なアルファ−線だけを抽出、そこから生ずるラドンを気体のまま活用するそうです。
しかしながら、福島原発で過敏になった放射能被害へのリスクから考えますとちょっと怖し疑問いっぱいの効能です。いろんな資料を見ますと人口の放射性物質に対してラジウムやラドンのような天然の放射性物質は違うといった説明がなされています。しかし絶対安全などとは書かれておらず、結局リスクはあるということは確かです。キュリー夫妻の発見したラジウムは、万病に効くものとして当時は様々な商品に入れられて販売されていましたが今は皆無ですし、彼女の実験室は危険なので今でも見学はできません。放射線治療とはそもそもハイリスクハイリターンの典型の治療法です。何を重視するかによってラドン温泉を活用するかしないかは決まるのではないでしょうか。少しの線量でも買い控えする予防原則を重視する消費者にとってはとんでもない温泉ですが、最後に日本工業新聞社「驚異の秘泉」に掲載されていたラドン温泉の効能を以下に紹介しますので参考にしてください。なお、愛媛県にはラドン温泉はありませんが、香川県にいくつかあります。
- 強力なイオン化作用
ラドン温泉へ入浴すると、呼吸によって肺から直接血液中に、また皮膚を通して組織内にラドンが吸収され、イオン化作用が血液や細胞に働いて新陳代謝を促進する。また血液の流れがよくなり、浄化される結果、血液をよごしたり、血管を早く老化させる中性脂肪、コレステロ−ル窒素化合物などはすみやかに体外へ排出され、組織の中では、凝りや痛みの原因となっている老廃物の化学反応が急速にすすんで短期間で解消する。神経痛・リュウマチ・ノイロ−ゼ・夜尿症・高血圧・動脈硬化・糖尿病・皮膚病・公害喘息・高コレステロ−ル血症・・・・といった病気に著効があるのは、このようなラドン独特のイオン化作用によるものだ。また、ラドンはこれらの諸病のほか自律神経失調症にもよく効き、飲用すると腎臓病・痛風の治療にも効果がある。とにかくラドン療法の対象となる病気は間口が非常に広く、ラドンが間接作用して効果のある病気を含めると、特定の急性疾患をのぞけば、ほとんど万病に効く、と言っていいほどである。
トロン温泉とは
ラドンはラジウム、トロンはトリウムから発生することにより現在も異なる名前で使われていますが、トロンはラドンの同位体です。同様にα崩壊によって放出するα線を活用するという点で、ラドンと同様に効能とリスクについては考えることができます。地下水がトロン鉱石と接触して温められて地上に湧出した鉱泉を活用したのがトロン温泉です。トリウムを最も多く含んでいる鉱石は「モナザイト」といい、非常に珍しい鉱石です。トロンは地球上で最もイオン化作用(生体の活性作用)の強いエネルギーの一つと言われ、欧米の物理学療法には、盛んにとり入れられています。トロン温泉として有名なのは、西ドイツのバーデンバーデンで、ヨーロッパ隋一の温泉療養施設として様々な病気の治療に優れた効果を発揮しています。鉱石「モナザイト」を用いた人工トロン温泉システム(厚生省承認番号(37D)第236号トロン浴素使用)です。トロンの作用によって、湯水はミネラルがたっぷり、湯質は弱アルカリ性となり、特に人体の痛みに対して素晴らしい効果を発揮するそうです。また、活性作用により細胞の隅々まで血液の循環が促進されて体の芯から暖まるその保温作用と効能効果は天然温泉以上に素晴らしいともいわれています。効能があるとされているのは痛みを和らげる効果、神経痛・肩こり・冷え性・痔・腰痛・うちみ・くしき・しもやけ・疲労回復等です。なお、愛媛県では天山トロン温泉があります。大洲にもオズメッセ トロン温泉オズの湯という温泉浴場がありましたが、現在では健康ランドオズの湯に名前が変わっているのでどうもトロンの活用はやめたようです。