海 に い ち ば ん 近 い 駅
date:2005.08.12-14

 

8月12日(金曜日)、今日から仕事が夏期休暇に入る。嬉しいことにこの連休中には仕事の予定は入っていない。当然ではあるのだが。
午前8:30。実家のある広島へ帰省していく家内とシンノスケをバスターミナルに見送る。
さてと、、、。僕の夏休みも始まりだな。旅に、出ようか。
ガレージからパリダカ(HONDA XL125R PARIS-DAKAL)を引っぱり出しリアキャリアに荷物を縛り付ける。この旅ではなるべく荷物を最小限にしたかった。知らないうちに心に重い荷物を抱えてしまっているのか、少しでも身軽になりたかった。
ちょうど午前9:00。19回目のキックでシリンダーに火が入る。19回か、意外と素直にかかったなぁ。

 

阿波中央橋のオブジェ
11:45愛媛入りす

吉野川をさかのぼるように鳴門池田線をひたすら西へ、一路池田を目指す。
途中、阿波中央橋の両端に据えられた石のオブジェを写真に収める。実はこれ、かのイサム・ノグチの手による作品。遠くを見つめる少年と少女。何が見える、、何を見ている。
境目トンネルを越えるとようやく愛媛県。しかし遠い。ほんの80kmくらいの距離がとても遠く感じる。足の遅いパリダカでは車の流れに乗るのがやっとだ。

 

伊予三島で簡単に昼食をすませる。すこし体を休めたら松山方面へ向けて走る。市街地の渋滞路をかいくぐり、山道の街道をひた走る。ただひとり、ただただ走る。しかし孤独かといえばそうでもない。道中、内に向けて沸き起こる疑問に対し、もう一人の自分と議論を繰り返す。孤独な旅ではないのだ、僕はもう一人の自分を連れてきている。
しかし、、暑いなぁ。暑さが体にこたえる。か、帰ろうかな、、、。


坊ちゃん電車@道後
足湯@道後
松山から海岸沿いに西へ快走

道路標識が松山に入ったことを示す。目的地は松山ではないのだが、この辺で少し休憩を入れておこう。道後温泉につかって汗を流す余裕はないが、確か最近、無料の足湯が開設されたはずだ。よし、道後だ。
タイミング良く駅に坊ちゃん電車が入ってきていた。いいねぇ、ナローゲージってやつだ。狭軌と呼ぶ方がすきだな。
足湯は駅の正面の坊ちゃん時計の横にあった。熱すぎず、かといってぬるくもなく、絶好の湯加減。

 

 

 

ここは愛媛県双海町にあるJR下灘という無人駅。附近に民家も少なく、この駅に降りたとてどこに行くという場所もない。あるのはただ、目の前に広がる伊予灘の海だけ。そんな寂れた駅にもかかわらず、この駅をひとめ見ようと訪れる人が後を絶たない。
下灘駅は1999年から3年連続で“青春18きっぷ”のポスターの撮影地となったことがある。鉄道ファンの間では『海にいちばん近い駅』として知られ、訪れてみたい駅の上位 にランキングされている。
タケダが駅舎に足を踏み入れた時にも何人か訪れていた。
ホームから見えるあおい空、あおい海。タケダもこの海のように広く静かでありたい。
旅人は、心の荷物をこの駅に置いていくのだろう。そして、何かを得て帰るのだろう。
心の洗濯とは、こういうことなのだろうか。
旅には簡単なメモ帳を持っていくことにしている。旅の記録を簡単な日記にして残しておく。
どこに行き、何を見、、、何を感じたのかを書き留めておく。

駅の構内には『下灘ノート』と名付けられた大学ノートが置かれている。ナンバー1〜5までの5冊。この駅を訪れた旅人の、その時の想いが綴られている。春に訪れた者、北風厳しい冬に来た者、夜に辿り着いた者、雨の日にホームに降り立った者、青春18きっぷでやってきた者。
それぞれの旅人にそれぞれの旅の形があり、それぞれの想いがある。
そんな始終を見つめてきた下灘駅には、そんな旅人たちの想いが残像のように漂っている。
これからも、沢山のひとがここを訪れるだろう。
そしていつまでも、下灘駅は旅人から愛されつづけるのだろう。



ポスターと同じアングルから

キハが滑り込んできた

下灘ノート

 

 

夕方5時も回り、そろそろ寝床を探して移動しなければならない。
今日は日中35℃を越えるような超真夏日だった。きっと夜も熱帯夜だろう。こういう時は標高を500mほど上げてやるといい。
というわけで山間部のキャンプ場を目指して山道を進んでいく。
予定していたキャンプ場を見つけるのだが、どうも川原の広場を解放しているだけのサイトの様子。無料のわけだ。これはちょっと遠慮したいと、さらに山を登っていく。
困ったことにこれ以上標高を上げると寒くて野営しにくくなるということと、食料の調達が困難になってくる。
あいにく適当なキャンプ場を見つけることができず四国カルストのある姫鶴平まで来てしまった。とうに日は暮れて肌寒い。温度計は17℃。目の前にはテントサイトがあって何組もの家族連れがキャンプしてはいるのだが、この気温の中で野営はしたくない。
写真のハンサムボーイは駐車場で一緒になったH-Dスポーツスターの広瀬くん。京都からのツーリング。彼は姫鶴荘に予約を入れてあるらしい。宿で聞いてみると部屋は空いているらしいので僕も一泊させてもらうことにする。暖かい布団と、お風呂、そして夕食にありつくことができた。旅に出ると普段は普通 だと思っていることがありがたく感じる時がある。

 

□次のページへ続く□

 

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