2000 summer kyushu touring

正直言うと、このレポートを書いているのは実際に旅をしてから1年以上もたってからのことだ。しかしながら未だにその時の記憶がつい先日のように思い出されるのだから不思議なものだ。この旅のきっかけというのはいろんな偶然や機会が重なり合ったからだったと思うが、本当は自分を旅に駆り立てる明確な意思の存在だったと、今になって、そう思う。

2000年の春先頃だった。家内と車を走らせていると県外ナンバーのツアラーが僕の横を通 り過ぎていった。社会人で結婚もしている、そうそう1人で何日も遊び歩けるわけもないし、なんといっても休みが・・・なんて考えている自分がいた。「オレも行きたいなぁ、、、」無意識にそんな言葉を口にしていた。ホント、自分がどんな言語を話したのかという意識すら無かったんだ。その時だよ、「行けば」。?????、!旅の始まりだった。その後、偶然ショップのくじ引きで銀マットが当たってしまうし、偶然、九州出身の人と一緒に仕事をする機会が続いた、行き先を九州に決めたのは磯口氏に勧められたからだ。「やっぱ旅に出よう」、決まりである。申し訳程度のテントとシュラフをホームセンターで購入した。どちらも¥3000もしなかった。あとは何とかなるだろう。



愛媛県佐多岬の灯台

憧れだった四国最西端の地

出発の朝、もちろん早起きをする。午前5時起床、1時間後に出発。走り出してすぐシートにくくりつけたバックが落ちそうになった。固定の仕方が甘かったようだ。出発直後から初心者ブリを発揮しまくりである。まず九州へのアクセスのルートだが四国縦貫道を使って愛媛県の佐多岬からフェリーを使おうと考えた。地図で見ると、それまで遠い地だと感じていた九州が非常に近かったことに驚く。佐多岬からだと大分県まで目と鼻の先だ。経費削減のため脇町インターまでは下道を走行したが後はひたすら西へ向けて走り続ける。途中、何度かアクセルを大きく開けてみるが時速200km程で自制心と恐怖心のリミッターが作動しだしアクセルをもどす。200kmでの車体の振動といったら酷いものだ。以前乗っていたGSX-R1100とは直進安定性なんか雲泥の差。しかしながらカタナって本当に200km出るんだ、、、と感心。
なんとかね、愛媛県の佐多町まで来たんだけど佐多岬半島の長いことといったらなかったね。途中、休憩した道の駅から原子力発電所が見えたのには驚いた、四国に原発があるなんて知らなかった。無知な分感動できるので得をする。フェリーの出発30分前に乗り場についたけどその先の佐多岬まで行こうかどうか迷ってしまう。今フェリーに乗れば午前中に九州に上陸出来る。岬まで行けば次の便まで2時間ロスってしまう。しかし再度ここを訪れることが出来る保証はない。「行こう」悩むことはない、自分の気持ちに従うだけだ、簡単である。
案の定乗り過ごしたフェリー乗り場で愛媛県から出発のCRMと岐阜県から屋久島を目指すというZ750FXのライダーと出会い、航行中旅の極意を教わる。「野営というのはねぇ、あえて人気のない山の中でするもんだよ、オレなんか昨日の夜は河原で素っ裸で水浴びしたもんサ。」「人がいない方がイイの!クマなんかより人間の方が怖いんだから」・・・・ベテランとはすごいものだと感心しながら聞いていたが後々あまり参考にしない方が良いことを悟ることになる。



午後2時頃、晴れて念願の九州、大分県の佐賀関に上陸。タンクバックの地図をたよりにR197をR10に繋ぎつつ別 府市を目指す。最初の目的地は湯布院、露天風呂が目当てだ。途中サルで有名(?)な高崎山を通 過、「高崎山って大分なのか、知らなかった」そうこうするうちに別府に入る。別 府でも温泉入ればよかったな。 湯布院に到着したのは4時位だったと思う。自分勝手に想像していた湯布院像と現実のギャップを感じながらも温泉を求めてさまよう。左上の写 真は“ぬるかわ温泉”で一風呂浴びたところ。まさか次の年もここを訪れようとは予想もしなかった。さてさて、今日はどこまで走れるだろうか?食料はどこで調達したものかと思案しながら「やまなみハイウェイ」に入る。まるで高速道路のような快適性(実際以前は有料道路だった)と雄大に広がる熊本の大地、遠くには阿蘇の外輪山を臨みながら走る。陶酔の一時だった。程良く日が暮れだしたので寝床を探そうとオートキャンプ場らしき所を見つけるがRVだらけでなんか場違いな感じがする。しかたなく近くのドライブインのパーキングに寝床を設営する。周りには車で泊まろうとしている御同輩が大勢いるので集団の中にいるという安心感があった。フェリーで会ったベテランさんの境地にはなかなかたどり着けそうもない。お向かいにワゴンで来たらしい初老を迎えたご夫婦がキャンプ用の椅子に腰掛けてランタンのほのかな灯りに照らされながら語り合っている。とてもイイ雰囲気だった。僕の知らない世界がそこにはあった。




大地を感じさせるやまなみハイウェイ

明けて翌朝。「寒い、何故だ8月のど真ん中だゼ」と6時頃に目覚めてテントからはい出すと辺りは一面 の霧景色。幻想的と云う言葉が決して大げさではない景色が目の前に広がっていた。そうか、昨夜は暗くて気が付かなかったけれどどうやら高原で寝ていたらしい。ドライブインのサニタリーで洗顔をすませ、荷物を乗せて朝靄の中を走り出す。辺りはまだ眠っている人が多い、カタナのエンジンをかけるのにも気が引ける。うっすらと霧が残る静寂の高原に唯一響くカタナの排気音、そして自分を取り囲む360°の大パノラマ・・・・ここは天国かい?目指すは阿蘇山だ。

 


旅の計画中に阿蘇山の付近に『草千里』を発見していた。テレビのCMで見てから僕の中の憧れの場所の一つになっていた。緩やかに曲がりくねった登り道を馬と併走しながら草千里へ登っていく、やはり天国に来たのかもしれない・・・。
阿蘇山のロープウェイ乗り場まで登ってきたが、その日は 頂上付近にガスが発生してそれ以上は通 行止めになっていた。非常に残念だが仕方がない。またいつかこの地を訪れることを誓い山の反対側の道を抜けてこんどは高千穂渓谷を目指す。


阿蘇の山道を南下しR325に入る。1時間も走らず次の目的地の高千穂渓谷(写 真左)に到着。自然だけが創造する事の出来る美しさに脱帽。こんな綺麗な場所が日本に有るなんて、自分の世界の狭さを知る。お盆の連休なので観光客も多く駐車場待ちの車がず〜と並んでいた。渋滞を横目に次は近くの天岩戸神社を訪れる。ここには神話に知られる天岩戸が実在する、いや実在するというのはおかしいな、正確には天岩戸として伝えられている場所がある。境内は参拝無料で申し出れば数人1組で神主さんが境内を説明しながら天岩戸が見える場所まで案内してくれる。当の天岩戸、この境内の前面 の山の中腹に有るらしく神主さんが説明をしながら「あれです 」と指をさしても見えるのは茂みばかり。双眼鏡がいるかも。こういった神話が生まれるのも天地創造の名残をその地形にとどめる九州の大地という背景があってこそではないかと思った。

 

 


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