[scudelia:cinema]
magical mystery tour
2004 funk fuji-yama page-1
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霊峰富士 |
![]() 吉田口五合目の風景 |
■ある時登山を始めようと思った。それは今から2年ほど前のこと。 突然に家内が富士山に登ってみたいと言いだしたことがきっかけだった。この国で一番高いところに登ってみたいのだという。 オートバイでもなければあまり遠くへ行くことは好きではない性分だった。ましてや登山のような重労働などもってのほかという怠惰な人間の部類に僕は入る。そんな僕が「よし!行ってみよう!」なんて思ってしまうのだから不思議なものだ。 今にして思えば、その頃から富士が僕らを呼んでいたのかもしれないと、そう思う。 今の自分には出来ないかもしれないことに挑んでみる。そうこれは自分たちへのトライアルだった。それが安易なことであれば、こんなに心は逸らなかっただろう。 |
■もちろん登山の経験なんてあるはずもなかったし、普段から体力を鍛えているわけでもなかった。しかも体はすでに老化を始めている。そんな人間が突然日本一標高の高い山へ登るのも無謀と思われた。 |
■今回の富士登山は始めてということもあって旅行会社のツアーを利用することにした。徳島から富士山までの交通
機関や山小屋の手配もそうだが、多数ある富士山頂へのルートをガイドしてもらうのが一番の目的となる。 近頃では関西圏へ向かう高速バスの便が増えたとはいえ、大阪出発am07:20という早朝に大阪に着くバスはなかった。仕方なく大阪の吹田市岸辺に宿を取り一泊することにする。 良い機会なので、以前から行ってみたいと思っていた梅田のスカイタワービルの屋上にある空中庭園に行ってみた。大阪に来るたびに行こうと思ってはいたのだが、その度に予定が合わずに延び延びになっていた。館内に貼られた国内のタワーを紹介するポスターを見ると、いつの間にかほとんどのタワーに登っていることに気が付く。別 段、高いところが好きというわけでははないのだが、すでにいっぱしのタワーマニアかもしれない。 |
![]() 大阪スカイタワービル |
ついでに梅田駅にある大型アウトドアショップモールのGAREを覗いて地方ではなかなかお目にかかれないメーカーのショップを散策。ゴーグルと帽子の良いのがあれば買おうかと思ったがイマイチ気に入る物がなかった。今回は目の保養だけ。 ■さて、明けて翌日。日付は8月13日。なんとか時間ぎりぎりでヨドバシカメラ北側のバスターミナルへ到着。予約したJTBは大型バス2台が乗り付けていた。僕らは2号車の組。 |
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■トンネルを抜けるとそこは雪国だった、、、は川端康成。 富士スバルラインを抜けるとそこはもう富士山の五合目だった。ここで標高はすでに2305mにもなる。この登山口へアクセスする有料道路「スバルライン」は富士山の登山シーズンは一般 車両の乗り入れを規制しているので公共の交通機関かわれわれのようなツアーバスしか見かけない。おかげで混雑もせずここまで来れたわけだ。自家用車で来なくて良かった。 しかしバスで急激に2000m越えをするのだからこれだけで高山病になる人もいるだろう。ちょっと問題ありである。外の気温は空調のきいたバスの中よりも低い。 いまさらの告白になるが、僕は体力的に富士山を登り切る自信はなかった。もうここに来られただけである意味達成感を得てしまっている。あぁ、出来ることならこれで帰りたい、、、。 |
![]() 入山口の看板 |
![]() さて出発! |
■帰りたいといっても帰らせてもらえるわけもないのでいざ出発しましょう。 慌ただしいことに、バスが着いたかと思うと間髪を入れずロッジ風の建物で着替をすませ少し早めの夕食を取って、さぁ出発!と息を付くひまもなく追い立てられる。僕らの乗ってきたバスの46人がひと組のパーティーで登っていく。 |
■おどろくことにこのツアーの参加者の半分近くが若い女性だけのグループだったこと。おねぇちゃんたち山をあまくみたらいかんぜよ(何故か土佐弁)っと思ったらこれがなかなか。たいしたものでサクサクと登っていくもんだ。結構登りなれている感じがする。
後のメンバーはシルバーの夫婦連れが三組、小中学生の子どもを連れた家族連れひと組。若い男性の四人組、若いカップルひと組、そして僕らを含む中年夫婦連れが三組ほど。 |
![]() 下界の景色を雲が覆う |
■pm6:00 入山。すでに立秋を迎えて日の入りも早い。薄い雲が下界の町を覆い始め、その雲海の中へ太陽が沈もうとしている。剣山のような連峰であれば奥深い山へ入っていくために山の上からでも人里は見えないものだ。富士は独立峰なので附近の街並みや五湖の姿もよく見える。この独立峰であるということは、富士を美しく見せている要因でもある。 白から漆黒へのグラデーションを奏でる雲、蒼から藍へ移る空のグラデーション。その境界を太陽が薄くオレンジに染める。しだいに薄紅は闇に汚され、じきに闇が訪れた。荘厳な景色を横目に見つつ背中へ目を向けると岩肌をむき出しにした富士の陰が闇の中に不気味に浮かんでいた。その威圧感のある姿には少しばかり恐怖を感じる。 頂上付近にぽつぽつと電気の明かりが見える。あそこまで行くと頂上なのかと思いきや、ガイドの話によるとそこはまだ八合目附近でそれをさらに越えたところに頂上はあるという。 |
![]() ガイドの菊池くん |
![]() 闇夜に浮かぶ八合目 |
![]() もうダメのジェスチャー |
■パーティーの先頭を行くのは強力の菊池くん。今回の先導役だ。年令にして30歳前後だろうか。さすがに登りなれたもので短パンに半袖のシャツという軽装に大きなザックを担いでどんどんと登っていく。いくら登っても疲れるそぶりもない。よほど山が好きでなければこんな仕事はできないだろう。こうして彼は何度この山を登り降りしたのだろうか。彼によると猛暑に沸く下界とは反対に今年の山の温度は低い(寒い)のだという。こんなところにも異常気象の影響があるのだろうか。 ■富士は見る山であって、登る山ではないと経験者は言う。視界に広がるのはず〜〜〜〜っと先まで同じ様なガレ地と岩場ばかりが続く。富士は本当に高山植物に恵まれていない。もともと高山植物というのは北方に生息していた植物が氷河期に気温の下がった日本にも生息域を伸ばしてきて、氷河期が終わり気温の低いままの高地に取り残されたものだ。日本アルプスなどは本の写
真で見ると夏の季節には様々な高山植物が咲き乱れている。富士は比較的年令の若い山で氷河期よりもずっと後に出来た山なのでこうした低温性の植物が生息しない。 |
![]() 七合目山小屋トモエ館へ到着 |
![]() なんでも高額な売店 |
■鉛のように重くなってしまった両の足を引きずりながらなんとか七合目まで到着。真冬なみの気温ではあるが登山中は汗をかくほど体は暖かい。逆にこうして止まってしまうと冷たい高所の空気が背中の汗を一気に冷やして風邪をひいてしまいそうだ。 ■山小屋には仮眠するための部屋と売店が備わっている。面白いのがそこで売っている品物の値段なのだが。まずこんなところでまともな値段で売っていないことは誰でも分かっているだろう。けれどまさかこれほどまでとは、、、。ちなみに1本120円程度のジュースは400円。80円くらいで売ってそうなあんパンも400円。ラーメンはなんと1杯1200円もする。思わず笑わずにはいられない。いやいや笑っては失礼にあたる。すでに3000mを越えている場所まで物資を運んで来ているのだから足元を見ているとは一概にはいえないのであった。僕のように数リットルもの飲料水を担いで登るのは大変なので上で調達できるに越したことはない。そんなときに水が1本400円でも有り難いとさえ思う。 |