Q&A1
血圧や心臓
Q1 心電図検診で「カンフゼン」と言われたのですが、肝臓が悪いのでしょうか?
A1 それは肝不全ではなく冠不全です。

心臓の周りには、三本の冠動脈と言う動脈があり、それぞれ右冠動脈、左前下降支、左回旋支という名前が付いています。この冠動脈は心臓の壁に血液を送って心臓を養う大切な役目をしています。

高血圧症や高脂血症(高コレステロール血症)や糖尿病などがあると動脈硬化をおこし、心臓に「虚血」という状態を引き起こし、狭心症や心筋梗塞の原因になります。この冠動脈の血流が不足した状態を冠不全といいます。

ただ、心電図だけの診断では本当に冠動脈の循環不全があるのかどうかは確定しない場合が多いので、他の検査所見と総合して考える必要があります。

 
Q2 心電図検診で「心臓の線が一本切れているが心配ない」と言われましたが、大丈夫なのでしょうか?
A2 これはおそらく完全右脚ブロックあるいは不完全右脚ブロックと言われたのではないでしょうか?

心臓には刺激伝導系と言う心臓を動かすための電気の通り道があり、これは途中で左右2つに分かれており、それぞれ右脚、左脚と呼ばれています。

この右側の線、右脚は重篤な病気がなくても断裂していることがよくあり、右脚ブロックと呼ばれています。この線が切れていても、一部を除いて実際の心臓の働きには影響がないことが多く、多くは定期的に心電図をとって様子を見ていてもよいのです。

一方、左脚ブロックと言われているのであれば、今度は何か心臓に元になる病気がある可能性があり、この場合は心エコーなどの精密検査を必要とする場合があるので要注意です。


Q3 高血圧の薬を飲み始めるとずっと飲まなければいけませんか?
A3 そんなことはありません。

高血圧の原因には遺伝的なものがある程度関係していると言われています。その上に、肥満、塩分のとりすぎ、ストレス、運動不足などのいわゆる生活習慣が関係して発症すると言われています。

ですから、このような生活習慣、つまりライフスタイルを変えることによって改善する可能性が十分あるのです。お薬で治療していても、このような努力をしてお薬をのまないでよくなった人は沢山いらっしゃいます。

ただ、このような努力をしても十分血圧が下がらない人はお薬をずっと服用して治療する必要があります。、また、糖尿病や腎臓に障害のある人、すでに高血圧症の合併症を持っている人はお薬で130/80未満に下げておく方がよいと言われています。

Q4 高血圧の薬を飲み始めるとクセになると聞きましたが本当でしょうか?
A4 そんなことはありません。

患者さんにとっては、できれば薬など飲みたくないと言う本音からこういう質問をされるのであろうと思いますが、そもそも高血圧の治療をする主な目的は、それによって引き起こされる脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などの合併症を予防することが目的なのです。

睡眠導入剤などとと違って習慣性もなく、クセになるということはありませんが、お薬を服用して治療しなければいけない人は、むしろこれを習慣にして治療を続けていく必要があると思います。

私は歯磨きにたとえて説明します。虫歯(合併症)を予防するために歯磨きをするのです。歯磨きが「癖になるといけない」とやめる人はいませんよね。

Q5 グレープフルーツジュースと血圧の薬を一緒に飲むといけないと聞きましたが・・・
A5 ある種のお薬では本当です。

高血圧の治療薬でその作用の仕方でカルシウム拮抗薬と分類されているお薬があります。最近、このお薬の一部でグレープフルーツジュースと一緒に服用するとお薬の効果が増強され、過度の血圧低下をきたす事があるということが報告されています。

日本ではグレープフルーツジュースはそんなによく飲むものではありませんが、外国では問題になったようです。
自分の服用しているお薬ではどうなのか医師や薬剤師に相談してみてください。


Q6 高血圧の薬の中で腎臓に悪い薬があると聞きましたが本当でしょうか?
A6 そんなことはありません。腎臓障害を起こすのは血圧が高いことが一番悪いことだと考えられています。

血圧のお薬にもいろいろあり、CCB(カルシウム拮抗薬)というお薬の一部は腎臓の輸入細動脈を拡張させますが、輸出細動脈というところは拡張させません。お薬自体に腎保護作用はあまりありませんが、血圧を下げることで腎臓保護に役立っています。

一方ARB(アンギオテンシン受容体拮抗薬)というお薬は輸出細動脈を拡張させそれ自体に腎保護作用があると考えられています。

後者の方が腎臓によいので、そのことを言われたのだろうと思います。

腎臓に悪い薬はありません。現在は両者を組み合わせた治療が主流になっています。

Q7 自宅では血圧は高くないのに病院では高いといわれます。どうしてでしょうか?
A7 一つは自宅と医療機関とは血圧の基準が違います。

病院では140/90以上が高血圧ですが、自宅では家庭血圧といって少し低いことが知られています。自宅血圧では135/85以上が高血圧です。

もう一つは白衣高血圧といって医療機関で血圧が極端に高くなる人がいます。

ただ、白衣高血圧と思っている人の中には、そのうち高血圧になる人やすでに高血圧の人もたくさんいます。

一方自宅の方が高い人がいて「仮面高血圧」と呼んでいます。

Q8 何にも症状がないので血圧の治療をしなくてもよいのではないでしょうか?
A8 血圧の治療をするのは高血圧による脳卒中や心筋梗塞などの合併症を予防するためです。

米国のFraminghm研究や日本の久山町研究などでは病院血圧140/90以上で脳梗塞などの合併症が増加することが知られています。

症状が無くても治療する必要が有ります。

Q9 何故血圧が高くなるのでしょうか?
A9 難しい質問ですが、一番の原因は塩分のとりすぎだと考える学者がいます。

話せば長くなりますが、人類の歴史の中で、現代社会では塩分をとりすぎています。動物は元々海で生活していたものが、陸上に生活するようになり、塩分をできるだけ貯めておくように体の構造ができています。

それが現代では好きなだけ塩分をとるので高血圧になってゆくのだと考えられています。

Q10 高血圧には塩分制限が大切と言われ、塩分に注意しているのに血圧が下がりません。何故でしょうか?
A10 日本人の塩分摂取量は一日約12gです。欧米人は6g程度と言われています。

一日6g以下が推奨されています。

積極的に塩分を控えているという人で約1gの減塩しかしていないと言われています。

有名な循環器の先生が自分の塩分摂取量を測ってみたことがあります。その先生は塩分を徹底的に制限し、刺身も醤油なして食べていました。

結果は一日8gもとっていました。それほど減塩というのは難しいのです。
風邪・インフルエンザ
Q1 お医者さんは風邪をひかないのですか?
A1 医者も人間ですので風邪はひきます。

私の場合ですが、時々風邪は引きますが、インフルエンザなどが流行っている冬場は全くひきません。それはよく気をつけてひかないように注意しているからです。

すなわち@よく手洗いをするAうがいを励行するBよく睡眠をとり体力を温存するCインフルエンザワクチンを接種するDマスクを着用する、ということです。

Bは仕事柄なかなか難しいのですが、ワクチンの接種は大切で、私は毎年しています。冬場、時には一日何十人もインフルエンザの患者さんを診ていますが、もう十年以上かかったことはありません。

夏場油断から時に風邪をひきますが、患者さんに不安を与えないよう、お薬で症状を抑えて接しているのでひかないように見えるのかも知れません。


Q2 インフルエンザの薬で異常行動が出るというので心配です。どうすればいいのでしょうか?
A2 数年前「タミフル」というお薬を服用している10代の子が異常行動を起こし話題になりました。

その後の検証では因果関係ははっきりしないと言うことになっています。

外国では全く報告が無く、インフルエンザ感染自体に脳症を起こしたり、若年者が高熱時に異常行動を起こすと言うことが知られているからです。

念のために高熱時は目を離さないようにすると言うことが定説になっています。もちろんお薬を服用していなくても注意する必要が有ります。

Q3 子供が吸入するタイプのインフルエンザのお薬を使ったのですが、いっこうによくなりません。どうしてですか?
A3 吸入薬には「リレンザ」というお薬と「イナビル」というお薬があります。多分リレンザを使われたのだろうと思います。

吸入用デバイスの使い方が難しく、また小児は吸入には慣れていませんのでちゃんと吸入治療ができていなかった可能性があります。
また、抗ウイルス薬は48時間以内に使用しないと効果がありません。

使用に際して十分練習して使うのがコツです。

Q4 妊娠しています。インフルエンザにかかったとき治療してもよいのでしょうか?
A4 治療してかまいません。

新型インフルエンザが流行ったときに産婦人科学会より治療すべきと言う勧告が出されました。

Q5 熱が出てすぐに病院へ行きましたが、インフルエンザの検査は少し待ってといわれました。何故でしょうか?
A5 インフルエンザの簡易検査では発熱してもすぐには判断できないことが多いからです。また、何度も検査が保険で認められないためです。

個人差がありますが、だいたい半日以上しないと陽性に出ないことが多いようです。

抗インフルエンザ薬は48時間以内であれば効果があるので慌てる必要は有りません。

Q&A2