※ 間質性膀胱炎とは・・・
                            【はじめに】 【原因】 【症状】 【診断】 【治療】 
       
       【はじめに】 
        間質性膀胱炎(かんしつせいぼうこうえん)ってどんな病気? 
        みなさん、この名前を聞いたことはありますか? 恐らくこの名前を知っている人は特別な人かも知れません。 
        日本ではあまり知られていない(お医者さんでも)病名です。しかしアメリカではごくありふれた病名で、70万人以上の 
        患者さん(そのうち約90%が女性)がいると言われています。最近では、男性の患者さんも増えてきています。 
        男性の間質性膀胱炎患者は前立腺炎や前立腺肥大と診断されがちです。 
        一言で言えば(ほんとうは一言で言うのは難しいのですが)、『細菌感染を伴わない、慢性の膀胱炎症』と定義されます。 
        そこで、ここに間質性膀胱炎について簡単に説明します。なお、本サイトで提供される病気や治療法に関する情報は、 
        あくまでも参考情報であり、実際の診断・治療に置き代わるものではありません。   
       
                                                          【ページトップへ】  
       【原因】 
       
        間質性膀胱炎については、これまで様々な研究(その多くは欧米)が行われて来ましたが、未だに原因不明の病気です。 
        間質性膀胱炎の原因は一つではなく、多くの要因(機械的刺激、アレルギー性、免疫学的、神経血管性、感染、環境)が 
        関与していると考えられています。研究としては、膀胱粘膜の透過性の亢進、肥満細胞、神経原性、感染、尿毒性物質、 
        遺伝等が行われています。 
                                                          【ページトップへ】 
       
       【症状】 
       
        間質性膀胱炎は患者さんによって様々な症状がありますが、最も多いのは頻尿(おしっこの回数が多いこと)と尿意 
        切迫感(おしっこに行きたくなると我慢かできない感じ)です。そして次に多いのが疼痛(痛み)で、特に膀胱充満時 
        (膀胱におしっこが貯まった時)に多く見られます。痛む部位は膀胱、骨盤周囲、下腹部、大腿部、膣、外陰部等患者さん 
        により千差万別です。そしてこれらの症状は、変化(強くなったり弱くなったり)したり、自然に良くなったり、また再発 
        (ときには徐々に悪化)したりすることがあります。また性交時や飲食物(刺激物、アルコール、コーヒー、紅茶、たばこ等) 
        により症状が悪化することもあります。おしっこが出にくい人もいます。男性の前立腺炎や前立腺肥大とよく似た症状です。 
       
                                                          【ページトップへ】 
       
       【診断】 
       
        間質性膀胱炎の診断は簡単ではありません。間質性膀胱炎に良く似た症状の泌尿器科系の疾患(男性では前立腺炎や 
        前立腺肥大など)があるため、どの疾患であるか判断する必要があります。また、間質性膀胱炎の症状とその程度は患者さん 
        各々により異なることが、診断と治療を難しくしている原因の一つとなっています。ある患者さんにとっては常に尿意切迫感が 
        あることが耐えきれず別の患者さんは夜中じゅうトイレに行くために何度も何度も起きるため睡眠不足で疲れ切っていたり、 
        また他の患者さんでは痛みが最も辛く苦しいといったように患者さんひとりひとりで、訴えは異なっているのです。 
        また、痛みがないからといって、間質性膀胱炎から除外されるとは限りません。初期においては、痛みはなく、頻尿と尿意 
        切迫感だけが症状として現れることがあります。 
        泌尿器科専門医では以下のような検査を行い、総合的に診断しています。 
       
       1) 問診 
       
        詳細な問診を行い、既往歴(病歴)と、症状の種類と程度について確認をします。患者さんに問診票を渡し、記入したものを 
        泌尿器科の初診時に持参してもらうという方法をとっています。 
       
       2)膀胱鏡検査 
       
        間質性膀胱炎は膀胱内膜に何かしらの影響が及んでいる状態なので、膀胱鏡を用いて膀胱内部を調べることが重要です。 
        通常は麻酔をした上で、尿道から膀胱へ細いチューブ(飲み物のストロー位の太さ)を挿入しますが、そのチューブは、内視鏡 
        (膀胱内部を直接見て調べるカメラのようなもの)と、膀胱内に水(または薬液)を注入するためのルートの2つの部分から成り 
        立っています。膀胱鏡での検査により、他の疾患(腫瘍や結石など)との鑑別が行えます。 
       
       3)水圧拡張 
       
        水圧拡張は検査だけではなく、治療にも用いられる方法です。 
        まず麻酔をした上で、水(生理食塩水)で膀胱を拡張させ、膀胱の再大容量を調べます。膀胱壁が拡張されると拡張前には 
        見られなかった粘膜の断裂(crack)や点状出血(glomerulation)が認められます。点状出血は他の疾患でも認められるため、 
        その存在がすなわち間質性膀胱炎というわけではありません。有名なハンナー潰瘍(Hunner's ulcer)は間質性膀胱炎の 
        進行したタイプにのみ認められます。また、この検査によって膀胱壁の繊維化の有無も調べることができます。 
       
       4)ウロダイナミック検査 
       
        患者さんの膀胱内にためることができる尿量、最初に尿意切迫感を感じる尿量、そしてその時の痛みについて調べるのが 
        ウロダイナミック検査(尿路から排泄または通過する尿の貯留と流動を調べる検査)です。尿道から挿入された細いカテーテルで 
        膀胱内に水を満たし、その時の膀胱内圧を調べます。同時に、もう1本の直腸に入れたカテーテルにより腹腔内圧を測定します。 
       
       5)膀胱生検 
       
        膀胱生検とは患者さんの膀胱壁の数カ所から組織を採取する検査です。膀胱壁の表面とその少し深い部分の組織を採取し、 
        顕微鏡で調べます。膀胱生検は麻酔下で行われます。またこの検査は水圧拡張の前に行うことはなく(膀胱を拡張した時に 
        破裂する危険がある)、通常水圧拡張後(拡張後に変化で出やすい)に行われます。 
        顕微鏡で調べると、肥満細胞(mast cell:アレルギーと炎症反応に関与している細胞)が、間質性膀胱炎患者さんでは多く 
        認められます。また、好酸球やTリンパ球などが多く認められたという報告もあります。 
       
       6)カリウム感受性検査 
       
        カリウム感受性検査とは膀胱内にカリウム溶液を注入し、症状(知覚過敏)が出現するか否かを観察する検査です。 
        通常正常な膀胱粘膜は尿に対しては透過性を持っていません。しかし、間質性膀胱炎患者さんでは膀胱粘膜の透過性が 
        亢進していることが多く、このテストを行うと症状(知覚過敏)が出現することが知られています。特にこのカリウム感受性検査は 
        早期の間質性膀胱炎のスクリーニング検査として有用であると考えられています。 
       
       7)アレルギー検査 
       
        間質性膀胱炎患者さんでは、他のアレルギー性疾患(アレルギー性鼻炎など)や自己免疫疾患(SLE:全身性エリテマトーデス 
        など)を合併していたり、既往歴(病歴)にあることが知られています。 
                                                          【ページトップへ】 
       
       【治療】 
       
        間質性膀胱炎との確定診断がなされたら、主治医より症状の緩和を目的とした治療を開始するとの説明が行われるでしょう。 
        治療方法は、患者さんによって様々です。全ての患者さんに有効な治療薬もありません。ある患者さんに効いた薬が、他の患者 
        さんでは効果がない場合もあります。治療には、内服薬による治療(場合によっては何種類か併用します)、膀胱内注入療法、 
        水圧拡張、電気刺激法、外科的治療があります。 
       
       1) 内服薬 
       
       [抗ヒスタミン薬] 
        肥満細胞からのヒスタミン遊離が間質性膀胱炎の症状に関与しているとの仮説から使用されています。 
       
       [抗うつ薬] 
        三環系抗うつ薬もヒスタミン遊離を抑制するため、痛みを抑える目的で使用されています。また、膀胱をリラックスさせる作用も 
        あるので、尿意切迫感や頻尿の軽減が期待出来ます。 
       
       [鎮痙薬、抗コリン薬] 
        膀胱の筋肉を柔軟にする作用があるため、使用されています。 
       
       [Th2サイトカイン阻害薬] 
        気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の治療薬として発売されていますが、その作用(Th2細胞からのIL-4、IL-5の 
        産生阻害、IgEの産生、好酸球性炎症抑制作用等)から使用されている(臨床試験中)。 
       
       
       [鎮痛薬] 
        NSAIDS(非ステロイド性消炎鎮痛薬)は、痛み止めとして使用されています。 
       
       2)膀胱内注入療法 
       
        膀胱内に薬剤を注入し、直接膀胱壁に薬剤を作用させる療法です。くすりを内服するよりも膀胱に直接高濃度の薬剤を作用 
        させることが出来、また短時間膀胱内に注入することにより、全身性の副作用を防止できることが利点です。 
       
       [DMSO] 
        DMSO(ジメチルスルフォキシド)は、抗炎症作用、鎮痛作用、筋弛緩作用(膀胱筋肉を柔らげる作用)があるため使用されて 
        います。単独で使用することもあるが、ステロイドやヘパリンと混ぜて使用されることもあります。 
       
       [ヘパリン] 
        ヘパリンは血液凝固阻止剤として使用されていますが、膀胱壁粘膜の非特異的防御機構であるGAG(Glycosaminoglycan)層に 
        作用し、欠損や変性を補う作用があります。しかし効果発現には通常2〜3ケ月かかります。 
       
       3)水圧拡張 
       
        水圧拡張は間質性膀胱炎の診断とともに、治療にも有効な療法です。麻酔下に膀胱内に挿入したバルーンを膨らませ、膀胱を 
        広げる方法です。萎縮した膀胱を機械的に伸展し、組織に固着したさまざまな増殖因子を剥がす作用により効果があるとされて 
        います。 
       
       4)電気刺激法(TENS:transcutaneous electric nerve stimulation) 
       
        本法は他の治療法の補助として使用されることもありまが、まだ試験的な治療法です。患者さんの恥骨上または腰に置いた 
        電極から、体内に弱い電流を持続的に流す方法で、痛みのコントロールのため使用されています。 
       
       5) 
外科的治療 
       
        間質性膀胱炎の症状が非常に重度な場合には、膀胱拡大術や膀胱摘出術という手術を行う場合もあります。 
        しかし間質性膀胱炎は複雑な病態であることから、手術により間質性膀胱炎以外の病状の悪化が起こる危険性もあり、慎重に 
        検討する必要があります。 
                                                          【ページトップへ】 
       
       |