eastend of blueisland date:2004.04.10
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「日本」という国は「日本列島」という言葉が示す通り大小多くの島々が連なった成り立ちをしている。 |
北島町を出発してしばらく、徳島市内で車の波をかきわけながらの走行中に一台のTWのトラッカーと遭遇した。どうも若者(自分はすでに若者ではないという自覚がこう言わせるのか)が運転しているようだ。もちろん知り合いでも何でもない。交通
のよどみをかきわけて走る彼を、別のラインで先行する。そうすると今度が彼が別
のラインでパリダカをパスして前に出る。日常よくあるパターンにはまってしまったわけだ。 あちらは250ccのソロライディング、こちらは125ccのタンデムラン、その上年代物ときている。不利な状況ではあるが、ハンディキャップをやったと思えば悪い気もしない。 しばらくはこんな調子で抜きつ抜かれつしながら走り続けるのだが、あくまでもこっちが“その気”になっていることを気づかれてはいけない。クールに振る舞う必要があるのだ。こちらの気持ちを悟られないように無理なパッシングなどもしない。こうして暗黙のうちにレギュレーションが形成されていく。きっと信号一個分くらい離せば勝敗がつくのだろう。向こうも同じ事を考えているだろうことが彼の背中からひしひしと感じ取れる。しかしながらお互いの走りには隠しておくべきはずの“その気”が満々に溢れていた。 徳島市を抜けて小松島へ入るとやや交通量が減少し視界がクリアーになる。この時点で僕が先行。しかしここでアクセルを大きく開けて引き離すのはレギュレーション違反だ。あくまでも「流してますよ〜、気にしてませんよ〜〜」といったOUT OF 眼中的な演出を欠かしてはいけない。といいつつ赤石のトンネルを抜ける頃にはお互い80km/hほど出ていた。 |
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っと途端、視界の左端に警察官を発見「しまった!取り締まりか!」即座にUターンをしようかと思いきや中央分離帯があるので反対車線には逃げられない。頭が急速に回っているのが分かる。なんたって視界がスローモーションだ。運良く左に曲がる田圃のあぜ道のような細い道を見つけたのでそちらへ曲がろうと急制動をかけた。その途端、真後ろまで追いすがってきていたTWの彼が驚いて急ブレーキ!もう少しのところで接触するところだった。これは僕の方が悪い。 ちょっとしたハプニングがあったものの橘までやって来た。「蒲生田岬」の看板を目印に国道を逸れて東へ入っていく。
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ここは蒲生田岬にほど近い港町、椿泊。近年、白鶴酒造の「まる」という清酒のテレビコマーシャルのロケ地として起用された地であることがまだ記憶に新しい。コーマーシャルではテレビでよく見かける眼鏡の俳優が両の手に酒パックを掲げて大漁旗をなびかせた漁船の一団を臆面
もない笑顔で迎えるという演出。「お〜ぃ、まるだぞ〜!」の、アレだ。県人ならみんな憶えているだろう。 しかしながら、実際のところ椿港はテレビのような賑やかさとはほど遠い閑散とした港町で程良く寂れた空気を漂わせている。これをマイナスのイメージで捉える方もいるだろうが、本来こうした雰囲気にこそ日本人は美意識を見出すべきではなかろうか。「わびさび」でいうところの“寂び”だ。沖の海鳥もまたのんびりと波に揺られてよい案配だ。 |
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蒲生田岬まで後もう少し、というところに近年公共の温泉施設が登場した。ツーリングに温泉はつきものだ。 「船瀬温泉」というのだが、数年前に角田氏と轟の滝へツーリングの際に立ち寄ったことがある。下駄 箱に靴を入れようとするのだがすべての下駄箱にカギが無い。館内にいる人に聞いてみると、なんとまだ建設中。おかげで面 白い思い出が出来たものだった。 |
基本的に僕は環境の独り占めが好きだ。かといって空間から人を追い出すことは出来ない。だからいつも訪れたいところの本命は人がいない早朝一番とかに行くことにしている。今日も誰もいない露天風呂をひとりで満喫しようと10時の開館を狙っていた。残念なことに少し時間の読みが甘く、到着したのは10時16分。なにぶんへんぴな所にある温泉なのでだれもまだ来ていないだろうと思ったが、すでに一人先客あり。三国連太郎がドロップアウトしたような感じのおじいさんだった。三国連太郎氏が出ていくのを待って露天風呂を陣取り記念撮影としゃれ込む。
ここ船瀬温泉では受付で「四国最東端到達の証」というスタンプをおいてあるので是非スタンプ帳を持っていくといい。蒲生田岬の絵はがきをサービスでいただけるのでその裏側にスタンプを押すこともできる。 ちなみに入泉料¥500-也。 |
![]() 蒲生田大池湿地帯 |
![]() 道がドンドン細くなって |
![]() 遂には遊歩道に |
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椿泊からの山道も酷いものだと思ったが、船瀬温泉を出てからはもっと道路事情は悪くなる。舗装が古くあちこち傷んでいる、その上まだ未舗装の部分もあるし山からの落石も酷い。 初夏のような陽射しの中、黒々と茂った林の間を走っていると、どこか南の島国に来たような気持ちになる。徳島の風景とは思えない。 蒲生田大池に到着。この池を含む湿地帯には沢山の品種の植物が自生するらしく、それらが蒲生田の地名の由来にもなっているのだという。この池の畔に数台車を停められる駐車場がある。本来ならばここで車を置いて岬まで歩くみたいだ。そんなことはつゆ知らず細い遊歩道をどんどんパリダカで走破して進む。やはりパリダカできて正解だったかもしれない。 |
![]() 意外と急な階段は 緑に包まれ まるでジャングル |
![]() 蒲生田岬灯台 大正13年10月1日初点 |
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『東経134度45分10秒 北緯33度49分49秒』われついに四国最東端に到達せり
それは同時に四国東西南北端制覇の瞬間でもあった。 |
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今日はお弁当持参なのだ。といっても自家製ではない。道すがら去年改築が完成した阿南駅で売っている『阿波地鶏弁当』なる駅弁を買っておいた。ちなみに¥1,000-也。 |
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まだ日が高いので少し寄り道をする。別段観光地というわけではないのだが、タケダが個人的に気に入っているのが阿南市某所に実在する『月夜下』のバス停。竹藪の覆い茂る道を進んでいった先にあるバス停、夜、月光の下で待っていればどんなバスが迎えに来るのだろうと想像をかきたてる。 「月夜下18;14発 月夜行き」一度乗ってみたい気がする。 ちなみに終点「月夜」までは徒歩で数分です。 |
ひとつの旅が遂に終わりを迎える。断続的に続けてきた四国の東西南北の涯を訪ねる旅。感慨にふける思いを、今はうっすらと寂しさが染めてゆく。いつだってそうなのだ。私たちの旅はたどり着くことを目的としない。その道程が終わるとき、この旅の目的は既に達している。ともすれば、その道のりの上に最初の一歩を乗せた時、すでに終末を暗示しているのではないかとすら推測する。私たちは何とも儚くも切ない欲求の具現化なのか。すべての価値観を陳腐に置き換えるこの現代日本で、恥ずかしげもなく鉄馬を駆ることで自らの存在を誇示する種族。誰よりも速く、もっと遠くへ向かうことを最善とするプロパガンダ。より楽に便利にを合い言葉とする大勢の対局に立つ彼らを、多分に矛盾を内包する憂いを、私はいつまでも愛して止まない。 |
おしまい |
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