2003 summer dance with venus
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{午前2:40のプレリュード}
GSX 1100S。モーターサイクルとしては最大クラスの排気量に反してコンパクトなメインキーをイグニッションに差し込む。時計回りに約10°、2色のインジケータが灯る。ポジションがニュートラルであることを示すグリーンと、赤いオイル警告灯。シート左側にあるコック状のチョークを目一杯絞り、キルスイッチがONであることを確かめた上でついにセルスイッチが押される。一連の動作にしたがって突如、内燃機関は目を覚ます。まずは2本だけのシリンダーが鼓動を始める。数秒おいて3気筒目、そして4気筒目へと火が入っていくのがこいつの癖。ヨシムラ製のTEMPメーターが暗闇に「24.0℃」のデジタル表示を浮かび上がらせる。左足が足首のスナップでペダルをひとつ落とす。暖気もそこそこのまま紅いテールランプは交差点を曲がり、まだ明け切らぬ
夜の向こうへと、消えていく。
{2003年8月12日(火曜日)1日目}
予定通り午前2:00起床をしたものの、昨夜が熱帯夜だったためほとんど眠ることが出来なかった。
今日は目一杯距離を走ることになる。二度寝を決め込むわけにはいかない。重度の眠気を引きずったまま2:40徳島を出発。
今日の目的地はたどり着けるところまで、今夜の寝床はたどり着いた空の下。
いともあっけなく、旅立てる。
前日の天気予報どおり天候は雨。どうしたものか、、、僕がツーリングに行こうとすると決まって雨が降る。しかし雨足はそれほどひどくはない。レインコートを着込んで走れば問題ないだろう。こんな事もあろうかと今年はレインコートも購入したのだ。
まずは大鳴門橋で淡路島に渡る。予算削減のために淡路島島内は下道を行くがなにせこの時間だ、ほとんど交通
量はない。いかんせん雨で濡れ続ける路面と海沿いの霧によって走行のペースが上がらない。しかしレインコートはたいしたものだ。雨天走行も全然苦にならない。
淡路から本州へのアクセスはフェリーを使う。これも毎度の事なのだが明石大橋を渡らず岩屋-明石間を運行する通
称「たこフェリー」を使う。明石大橋の料金が¥2050に対しフェリーは¥1150とお得。付け加えて20分と短い時間ながら小休止を取ることが出来る。
港に到着するやいなや即!乗船。 真夜中の運行とはいえ僕の乗った便にはお客さんが僕以外にいなかった。
明石港到着後、国道2号線で大阪を目指す。
走り出して急にカタナの様子がおかしくなる。ガス欠の時の感じに近い。つまり燃料が送られていないのか?まさか昨日満タンにしたばかりだ。コックもONになっている。PREで走ってみるが様子は変わらない。おそらく雨で濡れた電送系がトラブルを起こしているのだろう。ガス欠と思われるのは点火が間引かれているせいだと思う。実際、雨が小康状態になり車体に走行風を当てることが出来るとこの症状は消えた。
須磨からは阪神高速で西宮までショートカット(¥500)。西宮で高速から下りたま大阪市内を横断。近畿自動車道(¥300)、長原から西名阪(¥300)へ繋ぎ奈良県、天理へ。天理からは無料の名阪国道で三重県、亀山(ここまでが無料区間)まで走り次は東名阪自動車道にチェンジ。すでにSA・PAには沢山の行楽客で賑わっていた。雨だというのにみんな何処に行くのだろう?三重県内の御在所SAにて初めての給油。この時点で徳島から278km。
途中で雨も小降りに変わってきた。路面もセミウェットになりスピードも乗ってくる。アクセルを開け速度を上げつつ、一気に車の群れをごぼう抜き、、、、されながら愛知県、蟹江ICで下りる。ここからは下道を走る。
渋滞の名古屋市内を抜けてR19に入る。このR19は名古屋から長野県を繋ぐ幹線道。この道を迷わず行けばそこはもう信州。お昼過ぎにはすでに岐阜県に到着。途中何度か休憩を入れながら家内が持たせてくれたおむすびを食べる。ウエストバックの中で変形してしまっていびつな形状になってはいるが愛情のこもったおむすびは格別
の味がする。
寝不足のせいだろう、出発してからずっと前頭葉に違和感を感じながら走っている。休憩の度に猛烈に眠気が襲ってくるが一旦走り出すと自然とコンセントレイトしてしまう。随分体に無理を掛けているなぁと実感。
中山道(R19)で長野県に入る。ここはもう木曽路。
猿の親子の標識が愛らしい。
1時間に一度程度で適度に休息をとりつつもただひた走り続ける。思っていたりも距離を稼ぐ事が出来ている。早朝に都市圏をぬ
けて来れたのと関西圏をうまく高速でかわして来れたからだろう。長野入りしたくらいの時間で一泊する事になるだろうと思っていたのでチェックを入れていた道中のキャンプ場をどんどんパスしていく。
すでに木曽路、中山道を進む。どこにでもあるような山並みの風景ではあるがここにはやはり木曽路独特の感じがある。
15:00すぎにはもう諏訪湖のほとりにたどり着いていた。街道沿いに桃や葡萄を売る果
物の露店が目立ち出す。 湖畔の新設道が適度な弧を描くので気持ちよく車体を傾けてクリッピングから大きくアクセルを開けていく。っとその瞬間、対向車からのパッシング。!!取り締まりか、と急制動するがすでに目の前に警官が三角形の旗を持って待っていた。パッシング遅いんだよ。
交通違反なんて何年ぶりだろう。捕まってしまったものはしかたない。神妙にお縄を頂戴するか。
警官「21キロオーバーで2点減点の¥12000の反則金になります」
タケダ「はぁ、、、」
警官「徳島からですか?遠くから来ましたねぇ。」
タケダ「そうですねぇ、、、」
警官「スズキですか?カタナって言うんですよね?」
タケダ「そうですよ」
警官「19インチなんですか?復刻版なんですよねぇ?」
タケダ「もちろん!」
警官「はい、じゃぁ〜ここにサインと拇印ね」
タケダ「、、、、はぁ」
何年か違反していなかったので、自分は捕まらない、と過信していた。罰金と点数は痛いがいい薬だ、残りの日程も気を付けて安全運転で行こう。
諏訪湖を横目に半周し湖北へ回り込む。ここで2回目の給油、236km。スタンドのお姉さんに近くのスーパーマーケットを聞いて夕食の食材を調達。
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今夜のキャンプ地は諏訪湖畔から山へ入ること約10分のところにある霧ヶ峰キャンプ場。その名のとおり霧ヶ峰の高原のまっただ中にあるキャンプ場。(テント持ち込み¥400+1人1泊¥100)エアコンの名前になるくらいなので夏でも涼しい、、、、っていうか、なんか、ごっつい寒いんですけど。一度は半袖+短パンに着替えたけどどんどん下がる気温に対しまた洋服を着込んでいく。 |
夜中にトイレに起きだす。予想通り辺りは霧で真っ白。強力なライトがあればブロッケン現象が再現できたでしょう。予想出来なかったのがその寒さ。まだまだ気温が下がり続ける。冷やされたお腹が痛くなってきたので正露丸でドーピング。今日は天気が悪かったから平地での夜の気温がおそらく15℃くらい。ここはきっと標高1000m近くあるだろうから普通 に考えただけでも5℃くらいになる。口から吐く息が白い。寝袋の中で丸くなって眠る。とても8月のど真ん中とは思えない。テントの隣りの木の上でフクロウ(らしき鳥)が鳴いている。ここはすでにフォッサマグナの上。
一日で良くこれだけ走れたもんだと感心する。正確な記録は取っていないが本日の移動距離はおそらく510kmほどでだいたい間違いないだろう。走行時間は14時間。観光無しの全く移動だけの一日。
大鳴門橋、タコフェリー、阪神高速、西名阪、名阪国道と繋いだのは今回が初めてだが、上手く安価な有料道路と下道をつなげたと思った。この間をすべて高速道路で移動する事に比べると半分以下の予算だと思う。時間もそれほど大きくロスしないと思われる。例えば今後鈴鹿サーキットへ行くときはこのルートが有力だろう。