はじめに 「ツボ」とは何か ツボはいつ頃から解っていたのか
ツボの数はいくつか ツボの多い身体の場所 ツボの形、大きさや深さは?
ツボの話 アラカルト ツボを効果的に利用するには ツボ療法に期待すること(目的)
家庭で行えるツボ療法の各種


このページは徳島市の依頼で「ツボ健康講座」と題し、2003年5月より週一回2時間、全16回シリーズで3年間開催した市民健康講座の内容をまとめたものです。
 昨今の健康ブームの一翼を担う各種「ツボ健康法」には、一円玉、温灸、爪楊枝、エレキバン、ドライヤー、米粒など身の回りの用品を応用したものがよく紹介されています。 しかし、せっかくの方法も正確に「ツボ」が取れなくてな意味がありません。また「ツボ」の正しい知識があれば「ツボ健康法」の効果が非常に大きくなります。
 現在日本では「ツボ」を制度上、正式に履修するのは鍼師灸師のみです(指圧マッサージ師は簡便に学ぶ)。また厳密にはツボ療法を国家免許を持たない者が第三者に行うのは違法行為となることがあります。
 素人知識と生兵法で家族や知人に「ツボ療法」を行い大きな事故になったケースもあります。
 こうしたことを踏まえ「自分でできる」事を中心に「ツボ健康講座」を進めました。
 一般知識としての講義と、ツボを利用した自分でできる健康法の実技の分野に分かれていますが、ここでは「ツボの一般的な知識」をまとめてみました。
 実技部門は「自分で出来るツボ健康法」のページを参照

 難解な部分もありますがツボに関する教養知識として興味がある方はどうぞ先にお進みください

 
経穴(ツボ)の知識           
 
○「ツボ」とは何か
 
 
「ツボ」という言葉での表現は一般に、思うツボ、ツボを押さえる、ツボを心得る、ツボに入る、成功のツボなどのように使われています。このように一般的な認識では、「壷」「要点」「急所・弱点」「大切なところ」として認識されています。
 
 「ツボ」と日本語で表現し始められた時代は不明です。
 ツボ(壷)は穴(けつ・あな)のイメージから隠し場所・大切な物の保存を意味し、人の体にあるツボも要点、急所としての反応部が陥凹部や押すと窪む部が多いことから「穴」(ケツ・あな)⇒壷⇒ツボ、と日本語では表現されるようになったのではないでしょうか?
 武術などで言われる急所には(殺所として 眉間(印堂)・水月・ミゾオチ(鳩尾)・水溝。また活所として 欠盆・中府・労宮・湧泉・百会などが有名ですが、いずれもツボの名称と同じです)
   
 このように「ツボ」は一般的な認識では、「要点」「急所・弱点」「大切なところ」「反応点」と捉えられていますが、専門的には「経穴(ケイケツ)」「気之門戸」「気穴」「孔穴」「ユ穴」「穴」と表現あるいは表記されます。経脈上に存在する気穴の流行出入りする穴のような処で、病気、健康阻害時に現れたり、体表面上の診断点であり同時に治療点でもあるところです。英語表記ではMeridian PointやAcupuncture-Moxibustion Point。
 また、経脈とは「ツボ」と「ツボ」を連絡する連絡網であり、本流は内臓や各種感覚器官にに深く入り込み身体全部を網の目のように走る「気」の連絡網のことです。丁度国中を巡る鉄道網と駅舎のい関係に似ています。
 最近よく耳にする、足の裏のツボ、耳のツボと言われるのは正式には東洋医学での由緒正しい「ツボ」とは異なります。足の裏のツボは正しくはリフレクソロジーといわれ近年英国より伝わったものが日本式や台湾式に変態して流布された一種の西洋医学的見地に立つ反応帯療法です。耳のツボも同様に近年、西洋医学的な反応点として発見発展されたものです。ここでの「ツボ」は純然たる東洋医学での「経穴(ツボ)」について話を進めていきます。
 
 西洋医学的には経穴(ツボ)の存在は現象的、機能的には否定されていませんが、形態解剖学、物理的にはまだその存在としては証明されていないのが現状です。
 
○ツボはいつ頃から解っていたのか
 
 中国4000年と言われますが 歴史上の文献としては2200年前の漢の時代に完成した最古の医学書「黄帝内経」や「傷寒雑病論」には「ツボ」の存在が明らかにされています。
 しかし、もっと古くから存在していたとされ、原初は「痛を持って穴となす」或いは「得気(鈍・麻・痛・快・電などの感覚)」感覚の集大成から次第に系統立ってまとめられたと思われます。

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○ツボの数はいくつか
 
 俗説では、1年の日数になぞられ365穴とされますが、中国古代の1年は360日(漢書:三統暦 1年360日 19年7閏月 メトン周期と同じ)
 我々が学んだ教科書(30年前)では 354穴。現在WHO認定(1989年)は361穴(内単穴52)名称で361、位置では679。国際経穴学会では670穴。となっています。それは奇穴、新穴(中国)、私穴・口伝・秘伝・家伝と言われる「ツボ」も沢山あり国際的に「ツボ」の再編がされているためです
 
○ツボの多い身体の場所
      
 経穴(ツボ)は、筋肉の間・腱の間・骨の間・骨の割目や隙間・関節の陥凹部・脈拍が触れる部に沢山あります
 


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○ツボの形、大きさや深さは?
 
 ツボの形は決まっていませんが、押すと痛い所・堅い所や凝(しこ)りを感じる所・落ち込んだような所・黒子(ほくろ)・斑点・丘疹(蚊に咬まれた後のよう)・水腫・知覚異常・温感異常の所が多いようです。また皮膚電気抵抗変化・発汗異常んも部もあります。
 このようにツボは状況や反応に個人差があって定まっていません。ですがここがツボだとはっきり判るほど治療効果も大きい事が多いようです。
 


○ツボの話 アラカルト
 
 有名なツボのNO1はなんと言っても「足三里(あしのさんり)」でしょう。松尾芭蕉の「奥の細道」の冒頭部分。ー 月日は百代の過客にして行かふ年も又旅人也。・・・・。もゝ引の破をつゞり、笠の緒付かえて、三里 に灸すゆるより、松嶋の月先心に かゝりて、・・・。昔の旅はある意味命がけです。行程はすべて歩行。健脚が必要です。また旅の食事も水が代わり食あたりや水あたりにも要注意です。まだ各種風土病やツツガムシなどの被害もあります。「足三里」は胃腸を丈夫にするだけでなく足腰も丈夫にします。また保健穴として有名で身体を壮健にしたり免疫力を高めることはよく知られています。芭蕉を含め昔の人は健康上の知恵として、この「足三里」のツボにお灸をして長旅に備えるよき習慣があったようです。
 
 「病膏肓に入る」の成語で知られる「膏肓」のツボも有名です。「膏肓」の膏も肓も心臓の上下を取り巻く膜の事でここに病が進入すればもう助からないとされる部です。この部に一番近いツボが「膏肓」なのです。
 
 船釣りに行かれる方では「シックオフ」といわれる船酔い止めのリストバンドをよくご存じでしょう。この商品は腕の内側の「内関」と言う吐き気や目眩に効果がある「ツボ」に突起刺激を与えるようにした「ツボ療法」です。 
 船酔いなど乗り物酔いは 中国古来では「注車注舟」と言い、童子の小便を呑めば効果があるとされていました。
 
 他にも、婦人病や妊産婦によく使われる三陰交。逆子をかなりの効率で治す「至陰」 なども有名です。    
 
 おもしろい?ツボに、「おへそ」これは「神闕」というツボで意識不明や重篤な場合に起死回生 回陽救逆を目的に使います。
 「会陰」という肛門と生殖器の間のツボは水に溺れたときに使うとされています。
 鎖骨の上の窪みの部は「欠盆」のツボでここには肺先が直接触れられるため、活法としても利用されていました。
 「癲癇」という疾患では発作が起きたとき古人は「草履を頭に乗せる」ことをお聞きになったことはないでしょうか?お年寄りに伺ってください。癲癇は「天に感じる病だからいつも地に接している(感じてる)草履を頭に乗せることで中和(陰陽バランスを取る)ことで治そうとしたからです。実際このとき草履を乗せる頭の頂上部が「百会」のツボで脳性疾患や精神不安などの治療によく用います。またこの「百会」は痔疾にも効果が大きくよく利用します。頭のてっぺんがお尻の穴に効く。癲癇の草履の話同様におもしろいですね。
 
 子供ができない女性のことを「産まず女(うまずめ)」と言いますが正しくは漢字で「石女」と書きます。子宮が石で出来ているから子供が出来ないからそう呼ばれたようです。この婦人の妊娠に拘わるツボが下腹部の「石門(せきもん)」です。うまずめの石を冠した名前です。昔は堕胎に使われたツボと言われています。
 
 腹式呼吸の基本は臍下「丹田」(ヘソ下三寸を中心とした部)を意識した呼吸ですが、この臍下「丹田」にあるツボが「気海」と「関元」です。「気海」気の海とされるように呼吸による天空の気を納めるとされた部です。「関元」は東洋医学での腎と拘わる大切なツボで元気生み出す大切な所とされています。「ツボ」は呼吸法だけを見てもこのように座禅、ヨガ、武術など様々な所に関わっています。
 
 また、風池・風門・風府・風市・翳風 など「風」がつくツボがあります。これらのつばは「風邪」の治療や「中風」などやはり「風」に関わる病気に効果があり古来よりよく用いられています。
  
 五臓六腑の名称を冠したツボに、肺兪・心兪・肝兪・胆兪・脾兪・胃兪、腎兪・大腸兪・小腸兪・膀胱兪などがあります。これらのツボも対応する臓腑病を治療したり、逆に臓腑に異常があるとこの対応するツボに先ず反応が現れてきます。        
     
 他にも特効穴といわれ、痔疾に「百会」・逆子に「至陰」・食あたり「に裏内庭」・心悸昂進に「?門」・時出血に「孔最」・中耳炎に「照海」・感冒に「風門」・小児虚弱に「身柱」など、特定の疾患に非常に効果が大きいツボも沢山あります。


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 ○「経穴(ツボ)」を効果的に利用するには下記の点に留意
 
  ◎ ツボを選ぶにはツボの数が少ないほど治療効果は大きい
  ◎ 漢方薬同様に「証」が大切。何何に効くツボという取り方はダメ
     日々刻々と変化する病気の性質状態や体質差からツボを選ぶ
  ◎ 効果は諸刃の剣であること。ツボや与える刺激の種類と量、
    方法を間違うと作用は逆転し悪化することに
なる恐れがある
  ◎ ツボは名称にその効果を暗示していることを利用すること
  ◎ 気の流れを考慮。万歳の形で陽気は陽経を上から下に、
    陰気は陰経を下から上に身体の表面を流れる(気の流れ)を考慮
する事が肝心
  ◎「経穴(ツボ)」の組み合わせが重要        
   ツボ療法の代表は鍼灸(ハリ・キュウ)療法
   ◎ 正しくツボを取ることが何より大切 

○ツボ療法に期待すること(目的)
 
  病気治療:古来よりその効果は多くの人に支持されて今に至っています
       痛みの疾患や自然治癒力を高めるため慢性病に適しています
  病気予防:「未病を治す」とも言われ免疫力を高める効果があります
  健康維持:自律神経の調整や胃腸の働きを整え、生活習慣病を防ぐ期待が大きい
  老化防止:呆け防止や回春効果があり、今後の介護予防にも大いに期待されます
 
 しかし、一般の人が行えるツボ療法の範囲は法的問題があり、一般的には、専門的な治療用針、灸痕の残るような艾を用いた施灸は出来ません。特に第三者に対しての行為は国家免許を持つ者以外には禁止されています。また指圧も骨折事故が多いため他人に行うことは慎むようにしてください。

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○家庭で行えるツボ療法の各種

 指圧を応用したものには、市販のツボ押し棒を使用したり、ゴルフボールでツボをグリグリと刺激したり、木槌や小ハンマーでツボを軽く叩くなどがあります・
  針治療を応用したものには、市販のエレキバンやマグレ絆などのツボ貼附、米粒貼付などもあります。また爪楊枝やインクの無くなったボールペンの先でチクチクとツボを刺激したり、硬貨の縁やプーンの腹を利用してツボを擦る方法もあります。また気の流れを応用した11円玉療法もあります。
 灸治療を応用するには、市販の中国棒灸、せんねん灸など温灸用品を用いたり、タバコの火をツボに近づけたり遠ざけたりして温灸代わりにしたり、ドライヤーの熱風を用いたり、 隔物灸といってニンニク・ショウガ・塩・和紙などを適当な大きさにしてツボに置きその上に艾を乗せ点火する方法などがあります。