(2015第2回)カンツォーネと陽光の国を行く −第2回−


【1日目:12月7日(月)関空→フランクフルト→ローマ】

 夏の北欧への旅をキャンセルせざるを得なくなり、年内の旅行は諦めかけていた2015年。その年末も近い12月、なんとか旅行会社のツァーに一人参加して旅立った私。行き先は、欧州でも暖かそうな南イタリア。かねてから訪れてみたいと思っていたカンツォーネの故郷に:向けて、いよいよ関空からテイクオフである。さてさて、どんな旅が始まるだろうか。


日本人の恥


機内にはクリスマスの飾りつけも 出迎えるCAさんに「グーテンモルゲン」と挨拶してルフトハンザ航空の機内へ。日本からドイツ・フランクフルトを経由してイタリアへと飛ぶ。完璧な日独伊3国連携ルートである。

 着席すると、中東系ドイツ人かと思われるCAさんが
「Mr.ぽんど、Welcome」と私の名前とともに英語で挨拶をしてくれる。「ウェルカムドリンクは何にしましょうか?」と言うので、とりあえずオレンジジュースを頼んだ。

 私の左側の座席に座っている日本人夫婦が
「レッドワイン」と言っている。CAさんは「レッドワインは離陸して水平飛行になってからお出しする。ここではワインならスパークリングワインになる。それでなければジュース類にしていただきたい」という趣旨のことを英語で伝えた。が、件の夫婦は、英語が理解できないらしく、「レッドワイン、レッドワイン」と繰り返している。日本人CAさんが出てきて説明し、ようやく意味を理解したようだが、なんとも不満そう。

 この夫婦づれ、年齢は私と同年配。分別があってもよさそうなのに、離陸後も13時間の飛行中、
ビールやらワインやら、次々に要求して持ってこさせた。それも座席ポケットの機内誌の写真を示して、ジェスチャーで。酔っ払って声も大きい

 ビジネスクラスの運賃を払っているから当然、という態度である。酒代で運賃を取り返そうというつもりかも。たびたびCAさんを呼びつけるものだから、私がCAさんに頼んだコーヒーのサーブを忘れられるという実害も発生した。

 
「あ〜あ、日本人の恥」と嘆息する私。 

機内食

ルフトハンザ航空 ビジネスクラスの機内食(往路) 先に言ってしまうが、機内食は往路では洋食、帰路では日本食をオーダーした。そして、結論も先に言ってしまえば、
洋食はおいしく日本食はイマイチだった。特に日本食のご飯の端の方が硬くなっていたのはいただけない。機内で温め直すわけだから仕方ないのだろうが、帰路で積み込む日本食って、ドイツではなく、日本で調理したものを一旦ドイツまで運んで、ドイツから日本への帰路に提供しているのだろうか?ルフトハンザ航空ビジネスクラスの機内食(復路) (写真左が往路、右が復路の機内食の一部)

 ただ、感心したのは、ビールを頼んだら、缶ビールではなく、
瓶入りビールが出たこと。揺れやすい機内では、安全を考えて缶ビールが供されるのが普通なのだが、さすがビールの本場、ドイツのナショナルフラッグキャリアである。

13時間の苦行

中国東北部を飛行中 ルフトハンザ航空機は、関空を離陸した後、瀬戸内海を西に飛んで進路を北に変え、岡山・鳥取両県を縦断して日本海に出る。ロシア沿海州からユーラシア大陸上空に入り、中国東北部を斜めに飛んで、ハルビンの西方を経て再度ロシア領入りし、シベリアの白い大地を見下ろしながら飛んでいく。東西冷戦時代には、考えられなかった飛行ルートである。

 かつて欧州へ飛ぶには、アンカレッジを経由する時代があった。その頃に比べたら、格段に飛行時間は短縮された。それでも関空からフランクフルトまで
約13時間かかる。これが夜間の飛行なら、寝て行けばよいのでまだマシなのだが、今回のように午前中に日本を発つ場合は、日本の生活リズムに慣れたままの身、そう簡単に眠れるものではない。

 座席前面のディスプレーで映画なども見られるようになってはいても、正直、外国エアラインの日本映画は
面白くない
 私の席は、まん中の列の通路側。だから窓外の景色も、トイレに行くときくらいにしか見られない。通路側の席は、私自身が希望して確保したものだが、退屈と言えば退屈である。機内に持ち込んだ「イタリア語会話集」を開いてめくったりもするが、ズボラな私は身が入らない。ディスプレーに現在の飛行位置を表示させ、ぼんやり眺める以外、することがない。

 このまま13時間。うーーーん、
これはもう「苦行」である。かつて、英国に飛んだ時は、エコノミー席の3人掛け椅子の真ん中で、この状態を余儀なくされた。あれは、本当につらかった。トイレが近い私には、「苦行」を超えた「拷問」だった。分不相応なビジネス席に乗っている理由の一つは、あの英国往復の再現が嫌だから、でもある。今回は通路側だし、座席がほぼ水平に倒せるので、格段に楽なのだが、それでもつらい。シベリアの上空は、とんでもなく広いため、我が搭乗機は、遅々としてなかなか進まないかのように感じる。

フランクフルト

瓶ビールが出るところは、さすがにドイツの航空会社 
「もう欧州へ飛ぶことはこれっきりにしたい」との思いが頭をかすめる。そう言いながら、「喉元過ぎれば」なんとかで、ケロッとして、また欧州便に乗るかも知れないのだが。

 海外旅行に行き始めた頃は、何もかもが珍しく、飛行機の中で過ごす時間も、無料のお酒を賞味しながらCAさんと帰属国の言葉でたどたどしい会話を交わすなどして、楽しみのひとときでさえあったのだが、若からぬ身となった今では、
苦痛以外の何物でもない

 そんな苦行を経て、現地時刻16時前、やっとドイツ・フランクフルトに到着した。

 ここは、6年前の2009年8月に、娘と欧州3ヶ国を訪れた時の到着地である。
 あの時は、どこかノンビリした雰囲気があった。しかし、2度目のフランクフルト・マイン国際空港は、
全然雰囲気が違っていた。言うまでもなく、テロ対策が厳しくなったからである。

 私たちの目的地はイタリア。でも、ドイツ、イタリアともにシェンゲン協定加盟国、ということで、入国審査は、このドイツの空港で受ける。私たちは、日本パスポートの威力なのか、簡単に入国スタンプをもらえたが、長々と質問をされている外国人も多かった。

セキュリティチェック

 続いて、ローマ行きへの乗り換えのため、再度セキュリティチェックを受ける。手荷物とジャケットをトレイに乗せてローラーに、と思ったら、検査官のオバサンが怖い顔をして
「モバイル!」と言う。携帯電話は、外してトレイに乗せていたので、ほれ、このとおり、とベルトに着けていた携帯電話ケースが空であることを示したが許してくれない。ベルトごと外してトレイに乗せたら、やっと通してくれた。

 次に両手を上げた姿勢で、試着室のような長細い箱の中に立つ。これが
噂の3Dスキャナーか、と思う。テロリストのお蔭で、我々までこんな検査を受けなくてはならないのだ。

 厳しいチェックのため、時間が押してきた。急いでローマ行きの搭乗口へ。2時間ほどの乗り継ぎ時間があったのに、休憩する暇など何もなく、そのままローマ行き航空便に乗り込む。

 この航空便もルフトハンザだが、今度はエコノミー席である。夕焼けのフランクフルト・マイン国際空港を発った後、2時間ほどのフライトだ。
 飛行時間が短くとも国際便である。頼めばビールなども出してもらえるが、機内食は甘いケーキが1個。さすがに、お酒を飲む気にはなれない。3人掛けの通路側に私、奥に同じツァーの母子2人組。しばし言葉など交わしていたが、疲れからか眠くなってきた。目が覚めたら、既にローマ上空。着陸体制に入っていた。 

チョンボ2発目

 降機前に気付いた。関空からフランクフルトまで搭乗した飛行機の座席前ポケットに「イタリア語会話集」を
置き忘れてきたことを。
 決して高価な本ではないが、この旅の間、何かと頼りになるだろうかと思って持ってきたものである。うーーーん、つらい。関空でのユーロ両替忘れに続いて、早くも
チョンボ2発目。どうもいけない。集中力を欠いている。年齢のせいかも。

「座席番号で調べたら私の持ち物だと分かるから、日本の航空会社なら、帰りの便に届けてくれるかも」
 いくら日本の航空会社でも、ここまではしてくれないだろうか?
「ドイツ人は、きちんとしているだろうから、航空会社もそれくらいしてくれるかな」

 結論を言えば、
そんなサービスは、してくれなかった。当たり前か・・・。

空港のトイレで難儀

 とにもかくにもローマに着いた。レオナルド・ダ・ヴィンチ空港だ。
「はるばる来たぜ ろーまへ♪」との思いが募る、と言えば、横浜から汽船で40日ほどもかけて欧州入りした明治期の留学生に叱られるだろうか。

 荷物を受け取る前に、トイレへ。
えっ!ちょっと何?このトイレ。横に並んだ男性の小用の便器が、日本では珍しくなった「朝顔型」のものなのである。それはよいのだが、欧米人の体型に合わせているらしく、便器の位置がかなり、というか相当高め。だから、私のような短足人間は、爪先立ちをしないと用が足せないのだ。イタリア人は、欧米人としては小柄だと聞くが、それでも、私の足の長さは、この国では「規格外」らしい。

まさかの夕食なし

このケーキが夕食代わりになろうとは・・・ 空港が工事中とかで、重いスーツケースをガラガラと引きずりながら、バスの駐車場まで向かう。延々と歩かされて、足腰に爆弾を抱えている私にはこたえた。

 ホテルにチェックインする前に、さらに
とんでもないことに気付いた。今、現地時刻で20時30分なのだが、今夜は夕食がないのである。フランクフルトからローマまでの航空便の機内食は、前述のとおり、甘いケーキ1個だけだった。今夜は、まさかのメシ抜きだ。

 出発前に渡された注意書きに
「関空で食べ物を何か買っておくように」との記述があったのだが、格別気にも留めていなかった。だから、手元には関空・フランクフルト間で渡されて、ウェストポーチに放り込んだままにしていた小さなチョコレート菓子しかない。これは大変!

 ホテルに着いて部屋へ入り、
もうひとつ困ったことが!欧州では、欠かせないミネラルウォーターを部屋内に置いていないのである。うーーーん、食べ物ばかりか水までも!

 結局、水道水を一度電気ポットで沸かしてから冷まして飲み、チョコレート菓子をかじってローマ到着第一夜の夕食にした。
 
なんというローマの休日第一夜だろうか。


 1日目は移動だけで終わった。いよいよ明日から観光である。まずはポンペイの遺跡から。しかし、一人参加の悲哀を感じたり・・・。
 次回をお楽しみに。

−続く−

(2016/04/17)




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