(2012第4回)片道90分の海外旅行−その4−
2泊3日で3万円未満という格安パックで韓国入りした私たち。安さの見返りに免税店のハシゴが行程に組み込まれ、しかも「離団お断り」という条件付き。そのツァーに僅かに含まれた「自由行動」の時間に、さて、どこで何をする?
【第2日目 2月13日(月) ソウル市内】
自由行動 今夜の予定
これから明日の朝まで自由行動である。と言っても、既に16時過ぎだ。
正午過ぎくらいから自由行動なら、電車に乗って世界遺産の水原華城に行ってみたかったのだが、この寒い中、夕刻、暗くなってから行きたいほどでもない。
出発前にかみさんが「ナンタ」という喜劇を見たいというので、ネットで座席を予約しようとすると、今週はすべて×印が入っていた。さっさとホテルへ帰って休みたい私は、内心ほっとしていた。
ところが、この日の午前中、バスの中で、ゴッドヌナが「ナンタを見に行っても楽しいですよ」と言う。私が「予約が取れなかった」旨、言うとゴッドヌナは「私の方で当たってみます」。彼女が携帯で電話するとあっさり2人分のチケットが予約できた。旅行会社用のチケット枠があるのかもしれない。
ナンタの開演は20:00。終演は21:30頃だと言う。それから地下鉄に乗って知らない道を歩いてホテルに帰るのは、ちょっと不安だ。なにしろ私は重症の方向音痴だし、かみさんも決して当てにはできない。「タクシーは、ぼったくりに気をつけて」というゴッドヌナの話を聞いたばかりだ。
どうしようかと迷っていると、ゴッドヌナが「アカスリをしてみたいという方はおられませんか?帰りはホテルまで送ってくれますよ」と言うので、かみさんが飛びつき、私もこのお誘いに乗ることにした。
なんだか、ゴッドヌナの掌の上で転がされているみたいな気もするが、自由行動に移って以降も、私たちのため、ナンタの劇場やアカスリ店の店員が迎えに来る場所、果ては両替所までついてきて教えてくれるなど、丁寧に対応してくれる。迫力のある女性だが、心根が優しくて親切なお姉さんなのである。
韓国語で尋ねても
ゴッドヌナと別れた後、かみさんが「覗いてみたい」という南大門市場(ナムデムン・シジャン)へと向かった。
地図では、明洞からすぐ近くにあるはずなのだが、どうもよく分からない。
新聞の売店を開いていたアジュンマ(おばさん)に韓国語で尋ねた。
「ナムデムン・シジャンウン オディエヨ?(南大門市場はどこですか?)」
すると日本語で、
「あちら。新世界百貨店(シンセゲペクファジョム)の向こう側。この地下街を通ると近いですよ」
仁寺洞でもそうだったが、韓国人に韓国語で尋ねても答えは日本語。なぜ、私が日本人だとわかるのだろう?韓国語が怪しいというなら、中国人かも知れないのに。
とにかくアジュンマに「コマップスムニダ(ありがとうございます)」と御礼を言って地下道へ。
南大門市場
南大門市場は、規模では同じソウル市内の東大門市場(トンデムン・シジャン)に及ばないし、近年は観光客向けの市場になっていて価格も観光向け、という声も聞く。
しかしながら、その品揃え、熱気。さすが韓国の庶民の息吹を感じさせる市場である。日本で言えば、上野のアメ横だろうか、しゃれた免税品店やデパートとは全然違ったパワーが溢れている。
かみさんは、この先にある南大門(正式名は「崇礼門」スンネムン)の再建工事の様子も見たがっていたが、シートに覆われて何も見えないというので、こちらのほうはあきらめた。
(崇礼門は、韓国の国宝第1号だが、2008年2月、放火事件により焼失。現在、今年12月の完工を目指して再建工事中である。)
骨付きカルビとサムギョップル
南大門市場で韓国庶民のエネルギーを実感したあと、私たちは、明洞に戻り、夕食場所を探すことにした。2日目の夕食だけは、旅費に含まれていないのである。
「せっかくソウルに来たからには、本場の焼肉を食べたい」とかみさんが言う。私も異存なし。手元には、ゴッドヌナこと朴さんに教えたもらったお店数軒の位置を示す地図。どこで食べても良いのだが、その中で、決して高級店とは言えないが賑わっているお店に入った。
ゴッドヌナにもらった地図を見せると「ビール1本無料です」とのこと。得した気分である。メニューには日本語も書かれていて、分かりやすい。
私たちは、骨付きカルビと豚肉の三枚肉であるサムギョップルが含まれているコース料理を指して「トゥイルプン・チュセヨ(2人前下さい)」と注文した。
テーブルのコンロに点火した後、料理が次々に運ばれてくる。カルビは、女店員が豪快にハサミで切って並べていく。焼きあがった肉は、サンジャンという味噌をつけてレタスの一種であるチシャ菜に包んで食べる。うーーん、おいしい!
肉だけでお腹一杯になったところへ、冷麺とチヂミが出てきた。「えっ!まだあったが?」と、かみさんがびっくり。2人ともおいしさに負けて?無理に口にねじ込む。さすがの私たちも、もうギブアップである。
注文を間違えたのかも、と恐る恐る「ケサネ・チュセヨ(会計お願いします)」と言う。メニューで見たとおり、日本円で2人分6,600円だった。日本なら、福沢諭吉1人分は、確実に必要だっただろう。いやぁ満足!
ナンタ
ソウルの夜が更けてきた。寒い!露店を冷やかしながら、身を縮めるようにして明洞ナンタ劇場へと歩く。
「ナンタ」とは、漢字では「乱打」と書く。韓国で初めてのノンバーバルパフォーマンス(セリフがなく、リズムやビートのみのパフォーマンス)である。
レストランの厨房を舞台にして、伝統の「サムルノリ」のリズムを巧みに取り入れ、キッチンにある様々な道具を使ってビートを刻む。セリフがなくてもストーリーが理解でき、大笑いさせてくれる、という。
なんて知ったようなことを言っている私は、この旅行が決まるまで全然知らなかった。前述のとおり、かみさんが「是非、観劇してみたい」と言うので、ゴッドヌナにチケットを手配してもらい、足を運んだ次第である。
内容は・・・ごたごたと書くより、このリンクを見ていただきたい。
感想は、「笑える」「楽しい」「観客は日本人が多い」。
だが私は、この日歩き続けた疲れのためか、後半は座席で眠り込んでしまった。
アカスリ−1−
ナンタの公演が終了し、これもゴッドヌナを通じて予約を入れたアカスリ体験へ。アカスリは、私もかみさんも初めてである。
ゴッドヌナに言われていたとおり、劇場前で待っていると、30歳くらいのアッパ(兄ちゃん)が「ぽんどさん?」と声を掛けてきた。「ネー(そうです)」と言うと、自分についてくるように手振りで示す。どうやら日本語はほとんど出来ないらしい。私たちは、車で移動するものと思っていた。
だが、アッパは、無言でどんどん歩いていく。しばらく歩いて「コノ地下デス」と言う。
さて、これからが大変だった。
−続く−
(2012/03/29)