(2012第14回)ぽんどの本場 8日間の旅−その8−
英国の旅も、今日が実質最終日。明日はヒースロー空港から帰国するだけ。ラストを飾るのは、首都ロンドン市内のあれこれである。
【第7日目 10月14日(日)ロンドン】
車窓観光
バッキンガム宮殿を出て、次なる訪問先である大英博物館へ向かうまでに、国会議事堂を車窓から眺めながら、ロンドン市内を行く。残念ながら、ビッグベン、いや、2012年6月に「エリザベスタワー」と改称された建築物などは、すべて「車窓観光」と言って、バスの窓から眺めるだけ、ということになっている。
ウェストミンスター寺院やトラファルガー広場のネルソン像もなども、同じく「車窓観光」のみ。せっかくロンドンまで来ているのに、ちょっと物足りない。
大英博物館
とんでもない規模と価値
さて、ギリシアの神殿を思わせる外観の大英博物館に到着した。
いまさら言うまでもなく1759年開館という歴史を持つ世界最大規模の博物館である。
その所蔵品は、世界各地の文化財、書籍など約800万点。うち、常設展示されているものは僅か2%に満たない約15万点というが、それだけでも全部見て回るには、1日2日ではとても無理、という施設である。その収蔵品の文化的学術的価値は、世界中の研究者の垂涎の的。その多くが、とても金銭換算できるレベルのものではないだろう。
これでもって、この博物館、入場料が無料、というのだから驚く。(ただし、寄付は受け付けている)
展示品
博物館の構内は、とんでもなく広い。私たちは、男性現地ガイドである武田さんの解説を聞きながら、ギリシアやエジプトの発掘品、文化財を中心に見て回った。
この所蔵品には、大英帝国が植民地から持ち込んだものが多い。独立国が増えた今、原産国からすれば「略奪されたまま返してくれない」ということになり、この施設は、英国人からも「泥棒博物館」と揶揄されているそうだ。
このため、旧英国領諸国を中心に、文化財返還運動が起こされている一方、英国の言い分は「貴重な文化財を、散逸や盗難から守ってやっているんだ」ということらしい。
エジプト関係のゾーンでは、本国にもここまでは、というほどの所蔵品がてんこ盛り。ピラミッドの中や神殿の構内から運んできたと思われる彫像や工芸品。有名なロゼッタ・ストーンも展示されていたが、私のような浅学菲才の者の目には「ふーん、これがそうか」という程度のものにしか見えなかった。
館内の写真撮影は、基本的にOKだし、私もバシバシ写しまくった。しかし、さすがにミイラだけは、カメラを向ける気が起こらなかった。
かみさんも、「わっ!気持ち悪い」と言う。
まあ、これは、日本人は、ほとんどみんな同じなのだそうだ。
現地ガイドの武田さんがマイクで解説して、私たちはそれを旅行会社貸し出しによる無線レシーバーで聞きながら広い構内を行き来する。だが、このオジサン、早口な上に独特の訛りがあり、言葉を聞き取りにくくて困った。
団体ツァーの定番
土産物
博物館の膨大な所蔵品のほんの一部を瞥見した後、こうした団体ツァーの定番、土産物店へ向かう。私たちが案内されたのは、ロンドン三越。パリ三越の方は閉店となったが、こちらの方は健在。日本人団体客で賑わっていた。
旅行中は、いつも土産物など、ほとんど何も買わない私も、明日は帰国とあって、紅茶やクッキーなどを少々買い込み、残ったポンドのほとんどを使った。
中華料理
買い物バッグをバスに積み込んだ後、昼食場所へと向かう。今日は、中華街で中華料理だ。こちらの地元料理も、思いのほかおいしかったが、やはり日本人としては、舌に馴染んだ中華料理は嬉しい。中国式の回転板を載せた丸いテーブルに就く。
だが、注文した飲み物がなかなか出てこない。ちっとも出てこない。添乗員の藤田さんが困って、何度も急ぐように言うが、女店員に逆ギレされる始末。
このお店、経営者は大陸系か台湾系か知らないが、接客マナーは尊大な中華思想そのものである。料理のお味の方も、さほどのものではなかった。
ウィンザー城
オプショナル・ツァー
さて、ロンドン滞在日の今日、午後は、自由行動かオプショナルツァーの「ウィンザー城観光」のどちらかを選ぶようになっている。
だいたい、団体旅行におけるオプショナルツァーという商品、法外とまでは言わないまでも、自力で往復するよりかなり高めのお値段がついていることが多い。この「ウィンザー城観光」も、一人7千円と結構な高額である。とは言え、ガイド付きで貸切バスによる往復という便利さは、捨てがたい。迷ったが、二人揃ってこの半日ツァーに参加することにした。
世界最古かつ最大の王城
ウィンザー城は、ロンドンから西へ約 1 時間。テムズ河のほとりに建っている。バッキンガム宮殿がエリザベス女王の平日用オフィスだとすれば、このお城は、週末を過ごされる居城である。そして、国賓をもてなす迎賓館であり、その宿泊施設でもある。女王様の戴冠60周年のお祝いの午餐会もここで行われたし、日本の皇族方も、ここで泊まって歓迎されたそうだ。
ウィリアム征服王が、要塞建設にこの地を選んだのが、1070年。およそ45,000平方mの床面積を持ち、現に使用されている王城としては、文句なしに世界最古かつ最大である。
ただ、このお城、空港に近いようで、上空をしょっちゅう旅客機が爆音を轟かせて飛んでいく。女王陛下も、少々、騒がしく感じておられないだろうか。
ここは博物館?
ロンドン市内から、バスに乗ってウィンザー城に着いた私たちは、鉄道駅の脇を抜け、城内に入っていった。入り口でイヤホンと受信機を渡される。この受信機のダイヤルを各部屋に表示されている数字に合わせると日本語で解説が聞けるという。な〜んだ、それなら、高い代金を払ってガイドつきのツァーに参加しなくてもよかった、という気もする。
団体でゾロゾロと城内に入っていく。庭などの撮影は可能だが、建物内部は撮影禁止だという。ちょっとがっかり。
部屋数の多いこと多いこと!非公開部分も含めると、いったい幾部屋あるのだろうか。各部屋には、世界各地から集めた調度や食器、武具、鎧などが展示されている。まるで博物館のようだ。
かみさんが「わあ!すごい!こんな所で暮らすのって、すごい!」と何度も嘆息している。
「ふん、どーせ我が家はウサギ小屋ですよ〜」と内心むくれる私。
天井に騎士団のマークがいくつも描かれている部屋があった。中にペンキで塗りつぶされているマークもある。何か粗相があって、登録を抹消された騎士団のものだそうだ。任務を果たせず、リストラされたわけだ。厳しいものである。
火災と宮廷模型
この城は、1992年に部分火災に見舞われている。その際、100部屋とも言われる部屋が焼けた。それでも主要部分の5分の1だそうだが、貴重な文化財も灰燼に帰した。その修復費用を捻出するため、英国王室は、バッキンガム宮殿を期限付きで有料公開するなどして、5年後に修復を完了したのである。
帰国後に知ったことだが、この城の見所は、「メアリー女王の人形の家」だという。12分の1の縮尺で作られた精巧な宮殿模型。1921年から3年を掛けて約1,500人もの職人や芸術家が製作に携わったもので、エレベーターや家具の鍵、水道に至るまで実際に動くものだそうだ。
そんなものがあるなら、きちんと説明して欲しかったし、一瞥してみたかった。高い代金をとって、旅行会社の現地ガイドのオジサンは、王城備え付けの受信機に解説を任せたきり、何をしていたのかと思う。
屋外に出ると、バッキンガム宮殿でお目にかかれなかった黒い毛皮の帽子。赤い制服の衛兵が立哨していた。並んで記念撮影したかったが、希望者の行列が出来ていて、集合時刻に遅れそうなので、全然知らない子供が衛兵と並んでいるのを写してこの城とお別れした。
最後の晩餐が
フィッシュ&チップス
ロンドン最後、というより英国最後の夕食は、この国の名物料理「フィッシュ&チップス」である。
言うならば英国版ファーストフードが最後の晩餐とは、少し寂しい気もする。言うならば、日本観光ツァー最後の晩餐が牛丼、みたいなものである。が、全食事つき格安ツァーならば、致し方ないか。
とは言っても、フィッシュ&チップスの賞味は、楽しみにしていた。ご存知かとも思うが、フィッシュ&チップスは、その名のとおり、白身魚のフライとジャガイモを細い棒状に切って油で揚げたフライド・ポテトをあわせた料理である。もともと、屋台のようなお店で売っているものであって、手軽な庶民の味なのだ。
この料理、お店によって美味い、不味いの差が大きいらしい。要するに、新鮮な素材を新しい油を使って揚げたてで供されると美味しいのだという。果たして、どんなフィッシュ&チップスが供されるか?
私たちは、ごく普通のレストランに案内された。椅子席に座っていると、ツァー全員に同じ料理が運ばれてくる。典型的な団体さんのお食事風景である。先にビールで喉を潤した私の前にも、フィッシュ&チップスが。
横長の魚フライにやや太目のフライド・ポテト。それにレモンが一切れ添えてある。早速、賞味してみる。うんうん。なかなか美味しい。団体用に同時大量調理されたものにしては、上出来である。ビールも進んで、結構満腹になった。
だが、悲劇はその後に訪れた・・・・。それも、添乗員さんの好意が仇になるとは・・・。
ぽんどの本場への旅、次回は、いよいよ最終回。
−続く−
(2013/05/11)