(2012第13回)ぽんどの本場 8日間の旅-その7-

 いよいよ、この旅も終盤が近づいてきた。コッツウォルズ地方のかわいい村々を後にした私たちは、歴史の町、バースへ、そして、首都ロンドンへと向かう。

【第6日目 10月13日(土)バースからロンドンへ】

バース

なだらかな丘陵を行く


 英国一美しい村を堪能した私たちは、32kmほど離れた
バースの町へと向かう。
 途中、丘陵地帯にダムが見え、その向こうに石造りの家々が並んだ町が見える。その間には、緩やかなアップダウンに敷き詰められた芝生の絨毯。
どうしてこれほどきれいな風景が続くのか、と思うほどだ。

 こうした風景は、急峻な山々に囲まれた日本では、まず見られない
(北海道は別だが)。この旅に出発する前は、バス車窓の風景など、正直言って、全然期待していなかった。なのに、繰り返すようだが、これは、スイスの湖畔やドイツのロマンチック街道に決してひけをとらないレベルである。

 いや、決してお世辞ではない。実感である。そもそも私が英国にお世辞なんか言う義理もない。

温泉の町

 さて、バースである。

 今までずっと小さな村や町を回ってきたのに、大きな町へと入ってきた。と言っても、建物の古さはこれまでの村や町ほぼそのままに、建物の数がぐんと増えたような町、それがバースだった。19世紀初頭、ジョージ王朝時代の建物がそのまま残るこの街並みは、
ユネスコの世界遺産に指定されている。

 バースは、bathの語源になった町だという。その名のとおり、ローマ人がこの地を支配していた頃に開いた温泉がある。2世紀のこと、というから古い話だ。
(なお、これは逆で、温泉が出るからバースという地名になったのだ、とする異説もある)

ロイヤル・クレセント


「世界一美しい集合住宅」ロイヤル・クレセント そのバースで最初に向かったのは、温泉ではなく、「ロイヤル・クレセント」という建物。言うならば、半楕円形のテラスハウスである。しかし、ただのテラスハウスではない。竣工1775年、
「世界一美しい集合住宅」と言われる建造物なのである。

 もちろん石造り。地下1階、地上3階の部屋が30戸、連なっている。現在も人が居住しているので、内部の見学は出来ないが、一部はホテルになっているので、宿泊すれば見られるのだそうだ。

 庭は、芝生と花が植栽された庭園になっていて、広い公園のようだ。木立の中では、中学生くらいの男の子たちがボール遊びに興じていた。

 ちなみに、このテラスハウス、不動産としての相場は、
1戸ン億円なのだそうである。

バース大聖堂とローマ浴場

バース大聖堂外観 次に、私たち向かったのは、バース大聖堂。石造りの荘厳な寺院である。ここも、その由緒などをきちんと説明すべきところだが、この旅行記は、名所・観光案内を目的としたものではないので、写真の掲載だけにさせていただく。
ローマ浴場
 そして、この町の地名にもなっている風呂。つまり
ローマ浴場である。

 この浴場は、バース大聖堂のすぐ隣にある。私たちも、ローマ人が入浴したという温泉の遺跡を、日本語解説の流れるレシーバーをつけて見学したが、特に興味もない私は、ざっと見て回るだけにした。ただ、風呂嫌いが多いと思っていた欧州人でも、ローマ人は風呂好き、ということはよく分かった。 

町並み

ローマ浴場近くの広場では路上バンドや大道芸人が 浴場遺跡を出て、周囲を散策する。

 広場では、大道芸人による芸や、路上バンドによる演奏が行われていた。曲はカントリー調。そういえば、カントリーのふるさとは米国だが、そのルーツはアイルランドなどケルト系の音楽だと聞いたことがある。
バース市内の公園と丘の上の住宅群
 街中を歩いて、公園を見下ろす場所に出た。ゴルフ場さながらの風景に色とりどりの花が色彩を添えている。その向こうには、木々。そのまた向こうの高台には、石造りの建物群。

 あとで知ったことだが、古い町並み、家並みが連なると見えたこの町は、1942年4月、ドイツ空軍の爆撃により大きく破壊されている。これらの多くは、その後、
元通りに再建されたものなのである。古いものを大切にする。この国の人たちの執念、いや、頑固さと言ってもよいだろう。これには、本当に感心する。

公園の近くには馬車も走っていた 街中の教会では、結婚式が開かれるらしく、正装した紳士、淑女が集まっていた。大人たちと同じ服装で、目一杯おしゃれした子供たちがいる。かみさんが、
「わぁ、可~愛い~!」と、一言。

 さて、集合時刻。藤田さんが人数を数えるが2人足りない。どうしたものかと案じていたら、山田さんご夫妻が「ごめんなさい。集合時刻を勘違いしていました」と息を弾ませながら駆け込んできた。

ロンドン着

パブと折り紙

 バースからいよいよ最終目的地のロンドンを目指す。距離は187km。バスだと3時間半を要する。このため、この日の午後は、ほとんど移動時間だけになり、何度かのトイレ休憩の後、やっとロンドン郊外のホテルに到着した。

パブ形式のビールで酔いつつチキン料理を賞味する 夕食時のアルコールは、例によって、
店内のパブ。行列に並んで「1パイント・オブ・ギネス、プリーズ」というように、飲み物を注文し、その場で代金を払って受け取る。前述したとおり、面倒なようだが、明朗会計、チップの心配も無用なかなか合理的である。今夜のメニューは、チキン料理だ。

 一行の海原さんは、いつも
折り紙持参。リタイヤ組の男性だ。地元の子供たちがいると、その目の前で、兜や折鶴を鮮やかな手つきで折って、手渡している。今夜も、レストラン内にいた子供たちに折鶴をあげて、喜ばれていた。
 言葉が通じなくても、「喜ばせたい」「嬉しい」という気持ちは、確実に通じるものなのである。 

英語

 言葉の話が出てきたついでにもうひとつ。

 欧州はどこでもそうだが、水道水が硬水なので、ミネラルウォーターを購入して飲むことが多い。そして、ミネラルウォーターの方がビールより高いことが珍しくないのである。

 そのペットボトルは、バス車中で運転手氏から買うと比較的安く買える。当然、運転手氏は英国人だから、
「I'd like to have a bottle of water.」とでも言って注文するところだが、一行の実年女性軍団は、そんな言い方はしない。日本語の発音そのままで「うおーたあ、わん」

 これで
上等に通じるのである。相手も同じ人間。発音や文法など間違えても、こちらの言おうとしていることを理解しようと努めてくれるのが普通だから、こみいった商談や外交交渉でなければ、片言や単語の羅列にボディランゲージの組み合わせで十分だ。

 また、この国を旅行していて感じたことは、当たり前のことながら、看板や案内表示を見て、いちいち
「この単語、英語に直すとどういう意味かな?」などと考えなくてよい、ということである。英語圏への旅行なら、中学生程度の英語力があれば、必要にして十分だと思う。

 もっとも、私なんか、特にリスニング能力など、とても「必要にして十分」なレベルとは言い難いのだが。


【第7日目 10月14日(日)ロンドン】

バッキンガム宮殿

静かな宮殿と騎馬警官


朝早いためか、バッキンガム宮殿周辺は、あまり観光客の姿も見えず、静かだった 帰国前日。ロンドンの朝だ。抜けるような青空。こちらは、日本より2ヶ月先の気候なので、やはり寒い。厚手のジャケットにマフラー、手袋といういでたちでバスに乗り込む。

 私たちが、最初に向かうのは、ロンドン観光の定番、バッキンガム宮殿。この町の名物、2階建てバスが何台も連なって道を走る。今日は日曜日だからだろうか、あまり道路は混雑していない。

 私たちのツァーでは、ずっと女性添乗員の藤田さんがガイドを兼ねる形で案内をしてきた。ここでロンドン専門のガイドが一人加わる。40代くらいの男性、武田さんである。

 武田さんに先導されて、バッキンガム宮殿の正門前へ。話には聞いていたが、
決して壮大な建築物ではない。そして、朝早くて、衛兵の交替式なんかもしていないから、門前は閑散としていた。テレビで見たウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式当日の賑わいとは、別の場所であるかのような静かなたたずまいである。

バッキンガム宮殿を警護する騎馬警官 正門前のモニュメントで記念撮影をしていたら、騎馬警官が近づいてきた。かっこいい。格好はいいのだが、自動車全盛の今日、昔ながらに騎乗した警察官が、
宮殿警備や治安維持にどれほどの実効性があるのだろうか。伝統を守る意思表示か、一種の観光客向けのパフォーマンスなのだろうか。


衛兵2人

 門の中を覗いてみた。左右に衛兵が一人ずつ。よく観光パンフに出ているような黒い熊の毛皮の帽子に赤い服ではなく、ごく普通の軍服姿。白人と黒人が一人ずつなのだが、従来、この宮殿の衛兵は、全員白人だったそうだ。それをチャールズ皇太子の強い意向で黒人衛兵も立つようになったとか。こんなことも含め、チャールズさんは、結構、リベラルな考え方の持ち主のようである。

熊の毛皮の帽子に赤い服・・・ではなく普通の軍服を着た衛兵 2人の衛兵さんは、ずっと不動の姿勢ではなく、時々、銃を肩に左右へ行き来する。人形みたいに立ちっぱなしでは退屈だろうし、観光客としても、動きがあった方がよい。

 今日は、日曜日なので、女王陛下は、郊外のウインザー城におられるそうで、宮殿の屋上には、ユニオンジャックは掲げられていなかった。そのウインザー城は、今日の午後、訪問することになっている。


 ぽんどの本場への旅、次回は、大英博物館などロンドン市内からウィンザー城を巡る。
 次回もご一読願わしく。


-続く-

(2013/05/04)





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