部長と章人君の普通な部活生活 5

 

 

「待望の夏休み合宿だ
 宿題も出ているが遊びと勉強もしっかりしていい思い出に」

「はーい」
「…うい」

白い砂浜、青い空。
今僕達はある島にいる。

「今日のところは海を満喫してくれたまえ
 まずは準備運動からだ、腕を大きく廻してー…」

ああ…つまり部活の合宿なんだけど…。

「章人君、準備運動は大切だぞ?
 溺れて人工呼吸イベントでも起こすつもりか?」

「いや……すみません、そんなつもりはないんですが…」
「先輩が溺れても私が助けますよー、安心してください!」

周りの景色を改めて見る。
例えば……この木なんて日本ではTVとかでしか見れないよね。

「何処ですか?此処」
「南半球、とだけ答えておこう」

「アンタ、僕達を何処に連れて来てんスか!」

 

 

 

 

 

 

 

先月(部4)で言ってた合宿の話だがてっきり近藤さんのやる気を出させる為の方便かと思っていたけど。
一昨日急に部長から電話がかかってきて学校に集合。

近藤さんと一緒に目隠しされて(何故か)
気づいたら島に居たというわけだ。

荷造りした覚えはないけど荷物がちゃんとあった。
まあ…もうこのくらいじゃ驚かなかったけど…。

「パスポートなくても海外旅行できるんですねー」
「近藤さん、怖い事言わない」

「いや、パスポートはちゃんとこちらで用意してある」
「何時の間に!?」

…何処まで用意周到なんだ、この人。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…ロケーションは最高ですし楽しみますか」
「ふむ、章人君もなかなか判ってきたな」
「おーよぎーましょー!」

連れられたもんはしょうがないよね。
海は透き通るように青いしいい天気だし。

「じゃ泳いできま…ぐえっ!」

ぐ…ぐぅ…足かけられて砂浜に…。

「まあ待て。奈津君に対して何かコメントはないかね?」
「…どーなんですかー?」

こ、コメント?
土木建築用の結合剤やコンクリート・モルタルの主原料とする無機質の粉末?
あ、それセメントか!

「一人ボケツッコミする余裕はあるんだな…」
「セメントの説明が凄いですねー」

この人等人の思考読むよ!

「あー…感想ですよね。近藤さん?」
「はい!どーですか?先輩」

…うーん。
えーっと………。

あー…なるほど。

「水着似合ってるね。元気ハツラツ?」

『オフコース!』

よ、よかった。二度ボケなくてよかった!

「いやー章人君もそこまで言えるようになってるではないか」
「私照れちゃいますよーぅ!およいできまーす」

近藤さんはにやけつつ海に入っていった。
やっぱ…誉めるのは礼儀なんですか。

「ま、ありきたりな誉め言葉ではあるが合格点だ」
「うぐ…ありがとうございます。じゃ僕も行ってきます」

気をつけてな。と部長の声を聞いて近藤さんの泳ぐところまで行った。
んー気持ちいいー。

 

 

 

 

 

 

近藤さんが使ってる浮き輪に手をかけて身体の力を抜く。
砂浜では部長がパラソルをかけて…本?を読んでるのが見える。

「あー誰もいなくて気持ちいーですねー先輩」
「うん、まあ…誰もいなさすぎだけど…」

此処に連れてこられて部長と近藤さん以外見てないし。

「凄い夏の思い出ですよねー!部長さんに感謝です」
「部長…ねぇ…?一体何者なんだろ」

今となっては一つ上の先輩というのもアヤシイ感じだ。

「部長さんて……」
「うん……」

ああ…近藤さんもそう思うか…。

「なんでスクール水着なんですかね?」

「そっちかい!」

違うでしょ!

…ん?

い、今なんと?

「ど、どうしました?先輩。そんなみょんな顔して」
「あ…あ?あー……スクール水着?」

みょん、ってなんかそんな顔とかないと思うけど。

「部長さんならセクシー系の水着なんて似合いそうですけどね
 でも名札のところに部長って書いてあるところは流石です!」

落ち着け…。章人、白川章人落ち着け…。

「ちょ、ちょっと疲れたから浜で休んでくるよ」
「えー?先輩ーちょっと待ってくださいよー!もうちょっと二…」

近藤さんが何か叫んでるけどこれはスクランブル(?)だ!
全力で部長の元に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長!部長!部長ー!」
「なんだい、章人君。そんな大きい声だして」

は、はぁ…はぁ…はぁ…。
た、確かに!スクール水着を!来ている!

い、いや!あれだ!特殊な性癖だな!
所謂、女装癖だ!

「や、やだなぁ…部長。スクール水着なんて趣味が悪いですよー」
「鳥肌たってるぞ?」

そ、そりゃ…鳥肌ぐらいたちますがな。

「そんなにこの水着はダメか?」
「そりゃダメですよーアハハハ」

わ、笑いが乾くっ!
と近藤さんまで浜に上がってきた。

「ま、今日のはシャレだ」

ホッ…。思わず安堵のため息が出る。
やっぱり冗談じゃないですか。

「ですよねー。明日は一緒に買いに行ったホルターネックですか?」
「明日は…それにするかな。他にも色々持ってきているしな」

は?

「もしかして毎日違う水着ですか?羨ましいですー」
「ふむ、奈津君のも幾つか用意してあるので後で見たまえ」

「やったぁー♪」

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…嘘だーっ!」

「先輩、『海だーっ!』ですよ」
「オッチョコチョイだな、章人君は」