部長と章人君の普通な部活生活 4

 

 

「夏休みも目前と迫っているがその前に私達には困難な壁が立ちはだかっている!」

何時もの如く部室で部長がホワイトボードに壁の絵を描きながら力説する。
と言うか壁の絵ってそれじゃあ『ぬりかべ』ですよ…。

「上手なぬりかべですねー」

近藤さんもそう思ってるのか。
こう見ると全然困難な壁じゃない。

「で、その壁と言うのはやっぱり…」

「そう期末テストだ!」

…つーかすっかり忘れてた。期末テストかぁ…。

 

 

 

 

「章人君の成績は中…見事に真ん中。『THE・ど真ん中』だな」
「そんなストライク入りそうな名称はいいです」

まあ、確かに成績は良くも無く悪くも無くだが…。
とりあえず欠席はしていないし大丈夫だと思うけど。

「この成績表を見る限りでは何ら問題はないな」
「はぁ…ありがとうございます」

つーかなんで成績表があるんだよ!とツッコミたいがまあ…部長だし。

「普通に聞いてましたからね、赤点の心配はないと思いますよ」

うちの学校では赤点(平均点の半分以下)だと夏休みの半分程を返上して補習授業があるのだ。
夏休みには色々したいのでなんとかそれだけは避けたいんだけど…。

「で、問題は…奈津君だ」

…近藤さん、さっきから喋らないと思ったら…。

「近藤さん…そんなにやばいの?」
「ま…まあ、セーフかアウトで言うとトリプルプレイって感じですかね、あはははー…」

それはもう凄いヤバイんじゃないですか。
口から笑い声と共になんか出てるし。

「と言う事で今回の部活は!」
「部活動の一環ですか、これ」

「皆でお勉強会、だ!」

…だからなんか違うって!

 

 

 

 

 

「皆で勉強、素晴らしく良いと思います。
 先輩が後輩の勉強を見てあげる。これもまた素晴らしい!
 後輩は自分の勉強の為になりますし先輩は自分の復習にもなります
 自分一人では集中も散漫してしまいますが三人も揃えばまた違った意味合いで集中できるでしょう!
 だからこれだけは言わせてください!」

「どうして僕の部屋なんですか!」

はぁ…はぁ…疲れる…台詞が長いよ…。

「ではお邪魔するぞ、章人君の部屋は確かこっちかな」
「お邪魔しまーっす〜」

「と言うかなんで僕の家を知ってると言うか部屋の位置まで知ってるんスか!」

「章人君…あんまり叫ぶと近所迷惑だぞ?」
「わー先輩の部屋って片付いてますねー」

…もういい(泣

 

 

 

 

 

「さて…落ち着いたところで勉強会を始める訳だが」
「ええ、もう好きにしてください」

この人、人の話を聞かなさすぎだよ。

「可愛い後輩の為に私がテストを作ってきた。これをまずはやりたまえ」
「おー難しそうな小説がたくさんありますねー」

「奈津君…夏休みを潰す気かね?」
「い、いえ…そ、そんなことはないですけど…勉強は…ちょっと…」

ぶ、部長が黒いっ…黒いオーラを纏っておられるっ。

「残念だな…折角夏休みは章人君と一緒に島にでも合宿(という名目で)行こうかと思ったんだが…」
「部長さん!早くテストを配ってください!」

切り替え早っ!

 

 

 

 

 

 

 

そしてテストが終わったんだけど。

「部長…あのテスト…」
「ふむ、どうだったかね?章人君、奈津君」

「バッチリでしたよ!流石部長さんの作ったテストです!『そのまま』でてました!」

…そうなのだ。
一語一句間違わず全部出てた。全教科、だ。

「ああ、不正ではないな。私の今までのデータより予測した」
「その能力をもっと他のものに役立ててください」

 

 

 

「これで夏休み、合宿にいけますよね?」
「ああ、楽しみにしているとよい」

「島…って泳げますか!?」
「ああ、人もいないので思いっきり泳ぎなさい。日焼けに気をつけたまえ」
「わーい♪」

…ま、まあ…これでいいのかなぁ?

「終わりよければ全てよし、だ」
「だから独白を読まないでください!」