部長と章人君の普通な部活生活2

 

 

「春であるな」

部長は窓の外から校門近くに植わっている桜を見ながら呟いた。
…呟いた、じゃなくて明らかにこっちを見ながら言った。

部活に入って…そもそも何の部活かわからない…と言うより部長と知り合ってだが
この時の言い方はあんまりよろしくない事を企んでいるのである。

「季節上過ごし易くてよいですね」
「うむ、山も鮮やかに色づいてよい」

…お?
なんか今回はこのまま何もなかったりしますか?

「さて…明後日は入学式だな」
「…そうですね」

願いは10tハンマーによって打ち砕かれた。

「一応部活と銘打っているからには部員を増やさないといけないな」
「一応、ってなんスか、一応て」

表向きは部活みたいな言い方で嫌だな。

この学校…何故か最低人数三人いれば部活と認めてもらえるらしい。
普通は5人で同好会とか…そんな感じだと思うんだけど。

僕、部長…とあと一人、部長の一つ上の学年の人が居たらしいんだけど
卒業してしまった。(と言うより他に人いたんだ…)

平穏無事、毎日平和、人畜無害、をモットーにしている僕にとって
部活…いや部長は…止めるべき存在なのかもしれない。

…いわゆる、コンビではないよ?

「それで、だ」
「勧誘して来い、ですか」

はい、では今回の部活内容は『新入生獲得』になりました。

 

 

 

 

 

「でも部長…この部どーやって説明するんですか?僕も内容知らないんですけど」

そもそも部活の名前すら知らないよ。

「…章人君、君の任務は説明ではない」
「は?」

「料理を作ってきてくれ」

…。

……。

花見…ッスか。ぜってー花見。
だって桜見てたし。

「花見ですか」
「ふむ、なかなか鋭くなってきたね」

…で、まあ…僕も参加な訳だ。

 

 

 

 

 

「部長…」
「章人君、花見はやはりいいものだね」

うん、その辺は非常に理解します。
桜は見事に満開だし、周りも静かだし…。

「ってみんな『何やってんだ?コイツら?』みたいな目でみてますよ!」
「花見だろう」

入学式から帰る新入生は一定の距離をあけてこちらを見ながら校門から帰っている。
どうでもいいことだけど、在学生は休みだ。

「しかし、章人君の料理は美味しいな」
「ありがとうございます!」

半ば自棄になって答えて更に距離が開く。
なんで…二人で花見やらなきゃいけないんだ…。

「あ、この玉子焼きおいしいですね」
「ふむ…なるほど。これは絶品だな」

「ええ…それは自慢の一作…」

なんか…女子生徒がいるのは気のせいですか?

「すみません。そこの巻き寿司とってもらえます?」
「これか…ほぅ…見事な桜になっている」

「ですね〜、美味しいです」
「あっはっは、美味しいな」

いや、部長!
アンタなじむの早ェよ!

「で…君は…誰かな?」

「自己紹介ですか!私この春入学した近藤奈津と言います!よろしく〜」

…非常に明るく元気で素直でよい子だと思うんだが
この子と部長を合わせると危険な香りがする。

「ではこちらも自己紹介せねばいかんな」
「私は通称『部長』だ。訳あって名前は明かせない」
「何言ってるんですか!名前ぐらいいいじゃないですか!」

「で、こちらでツッコミをしているのが章人君だ」
「部長に章人先輩ですね、よろしくお願いします」

き、聞いちゃいいねぇ…。

「と言う訳で奈津君の担任には話をつけておくから安心したまえ」
「はい、これからもお願いしますね」

「話を聞けっ!」

…とほほ…
なんかこれからは疲労が二倍になるのか…