部長と章人君の普通な部活生活1

 

 

「腹減ったな」
「そうですか?別に僕は空いてないですけど」
「いやいや…今月はちと厳しくてな、昼は抜いているのだよ」
そう言って部長は遠い目で外を眺める。また馬鹿な買い物でもしたのだろう。

「米はあるんだが何せおかずがない」
「じゃあ家に帰ってご飯食べてください」

にべもなくそう突っ返す。また何かろくでもないことを考えてそうだから。

「時に章人君、肉を山ほど食したくはないか」
「ありません、僕小食ですし」
「いやいや…そんな即答しなくてもいい、別に奢れと言っている訳ではないよ」

いや…肉云々の話をされたら奢りの話になるですよ、普通。

「じゃあなんで肉の話なんですか?」
「健全な男子高校生は肉が好きではないか、それに則ってみたのだが」
「はぁ、主体性がないですね。部長も」

つーかこの人の思考は混乱そのものだ。主体性のへったくれもない。

「肉料理といえば何があるかな?」
「肉料理…ですか?身近なもので言えば…焼肉、しゃぶしゃぶ…とか?」

「そう!焼肉!非常にそれ近い!」
「…つまり部長は焼肉が食べたいとの事なんですね」
部長は首を横に振る。

「違うな章人君。誰でもあれを食べてみたいという欲求があるではないか」
「焼肉食べたことないんですか?」
「焼肉…とはまた違ったものだな、あれは」
「もったいぶらずに早く言ってください」

と部長はホワイトボードに簡単な絵を描く

「マンガ肉だ!」

どう見てもマンガやアニメで出てくる骨付きの肉だった。
「それが食べたいんですか」

「そう!私の夢だね」

言い切りやがったよ。

「でも調理とか難しくないですか?食べるとしても」
「別に中まで火を通す方法はいくらでもある」
「…それで…材料とかあるじゃないですか」

「買った」

………。

「牛を一頭買って作ってもらってるんだよ」

「アホだろ、アンタ」

「部長に向かってアンタとはなんだ、アンタとは」

アホは否定せんのかいな。
「マンガ肉が到着するまでの間お金借りたいのだが」
「何考えてるんスか!」

結局、部長にお金を貸してしまった。
返してもらえるのだから別にいいだろう。

「これだけ渡しますから無駄遣いしないでくださいよ」
「うむ、痛み入る。さ、晩御飯の材料でも買って帰るか」
「久々のおかずはいいですけど高いのはやめてくださいよ、もう貸しませんから」
「よし、今日はフライドチキンだ!」
「おい!」