喫煙による寿命の短縮
喫煙による癌の発生や呼吸器系、循環器系の疾患のため、喫煙者は非喫煙者より寿命が短くなると言われています。

イギリスのR・ドール博士らの研究によると喫煙者は非喫煙者に比べて寿命が約10年短いことが解りました。

日本人のデータでは40才の時点で、それからの寿命が吸わない人に比べて男性で3.5年、女性で2.2年寿命が短いという報告があります。

また別の研究ではやはり40才の時点で男性で5年、女性で4年寿命が短いという報告が有ります。

2007村上ら(厚生労働省のデータによる)
依存症からの禁煙計画
喫煙の依存症には、主にニコチンによる脳に対する作用のために生じた身体的依存と喫煙の習慣に基づいた精神的(習慣的)依存があります。

身体的依存に対しては医学的に効果のある薬剤が使用できます。ニコチンガム、ニコチンパッチ薬、最近では、中枢神経に作用して喫煙時の快感をなくすような経口薬が効果を上げています。

一方長い間の喫煙習慣による精神的依存には効果的な薬物療法はありません。朝目覚めの一服や食後の一服、口寂しい時に吸いたくなる欲求の克服には困難なものがあります。

精神的依存克服法
習慣で吸いたくなる気持ちをコントロールするには次の方法があります。

●行動パターンを変更する
喫煙と結びついている行動や生活様式を変更する方法です。たとえば食後のコーヒーや紅茶を止めたり、朝起きてからする行動の順序を変更したりして喫煙する機会を少なくする方法です。

●環境を替えてみる
タバコやライターなどの喫煙に要するものを全て処分したり、喫煙の機会になる宴会や飲み会の出席を控えたり、飲食店では禁煙席に座ったりする方法です。

●代わりになるもので代用する
口寂しい時にガムを噛んだり、口に何かくわえたり、水を飲んだり、深呼吸したりして気分をそらすことが大切です。
薬物療法の実際
治療薬には経口薬(バレニクリン:商品名チャンピックス)とニコチンパッチ薬(貼り薬:商品名ニコチネルTTS)、ニコチンガムがあります。

経口薬のバレニクリンとパッチ薬が医師の診察を受けた場合に保険適用となります。パッチ薬、ニコチンガムは薬局でも自由に入手できますが、この場合は保険適用になりません。

経口薬(バレニクリン)は脳内神経のニコチン受容体に作用して喫煙の欲求を軽減します。また、喫煙中ならば喫煙による多幸感や快感を軽減します。最初の1週間は服用しながらの喫煙が認められますが、2週目からは禁煙します。12週間の保険適用が認められています。

ニコチンパッチ薬、ニコチンガムはその名の通りニコチンが含まれています。タバコのニコチンの代替をするもので、徐々に量を少なくしていきます。ニコチンを含んでいますので、これ自体習慣になる危険性をはらんでいます。

治療薬 保険適用の有無 医師の診察
経口薬(バレニクリン)
ニコチンパッチ薬
× ×
ニコチンガム × ×
禁煙治療の実際
●禁煙治療は「ニコチン依存症治療」として保健医療が認められており、現在経口薬とパッチ薬が治療薬として使えます。薬物療法を用いた身体的依存治療とカウンセリングによる精神的依存治療の両方を行います。

●保険診療できるのは、当院のように「ニコチン依存症治療医療機関」として認可を受けた医療機関に限ります。認定医療機関は「敷地内禁煙」となっております。

●診療の際には問診票
が必要です。この問診票で5点以上の方が対象になります。

●禁煙誓約書を書いていただきます。


●初回〜5回(3ヶ月後)の通院が必要です。3ヶ月後まで禁煙できた方が禁煙成功と判断されます。

●診察の際には吐く息の一酸化炭素測定が義務づけられています。診察時簡単に計測できます。

●禁煙成功率はパッチ薬使用時で約4割、経口薬使用時で約7割(当院の場合)です。

禁煙治療にあたり大切なことは、禁煙による身体への害や危険性を良く認識され、はっきりと禁煙しようとする意思を持って禁煙治療する必要が有ります。

安易に経口薬を服用するだけで自然に禁煙できるわけではありません。

きっぱりと禁煙される決断をして治療されることをお勧めします。