タバコの歴史
タバコは元々世界中にあったのではなく、アメリカ大陸の先住民の習慣でした。15世紀後半にアメリカを訪れたコロンブスらによりヨーロッパに持ち帰られ、瞬く間に世界中に広まりました。

タバコの害が取りざたされ始めたのは意外に遅く、1930年代になってからです。それまで職業病として考えられてきた肺癌は喫煙との関係が問題になり、1950年代にその関係が盛んに研究されました。

そして1960年代になり、欧米で肺癌が喫煙と強い因果関係があるという報告書が出され、タバコが喫煙病(肺癌と喫煙関連疾患)の原因としてはっきりと認識されるようになったのです。
タバコを吸う神の絵 (メキシコ)
タバコに含まれる化学物質
タバコに含まれる成分は現在判明しているだけでも約4000種類の化学物質が判明しております。ニコチン、タール、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などそのほとんどは有害物質です。その中には私たちの周りにある、注意を要する化学薬品として存在するものがあります。
化学物質 用途の例
アセトン ペンキ除去剤
ブタン
ライター燃料
ヒ素 アリ殺虫剤
カドミウム カーバッテリー
一酸化炭素 排気ガス
トルエン 工業用溶剤

タバコに含まれる発ガン物質
有害物質の中でも一番問題になるのは発ガン物質です。タバコには現在判明しているだけでも43種類の発ガン物質が確認されています。しかもこの中には同じ発ガン物質の中でも特に発がん作用の強力な物質が含まれています。

以下はその一部です。

ベンゾ(a)ピレン ニトロソピロリジン
ジメチルニトロソアミン キノリン
メチルエチルニトロソアミン ヒドラジン
ジエチルニトロソアミン 2−ナフチルアミン
N-ニトロソノルニコチン O−トルイジン

ニコチン中毒の仕組み
タバコは何故なかなか止められないのでしょうか?それはタバコに含まれるニコチンの脳への作用の仕方に原因があります。

脳はたくさんの神経細胞からなっており、その神経間の接合はシナプス間隙という部分で、その間の伝達はドーパミン、アセチルコリン等の神経伝達物質が行っています。

ドーパミンが関与する中脳から大脳辺緑系に作用する経路を「脳内報酬系」と呼び、快感、多幸感、覚醒効果、緊張緩和などの作用をもたらすとともに依存性の原因ともなります。

ニコチンが吸収されると脳神経終末にニコチン受容体が沢山作られます。その結果脳内報酬系が強く活性化され、上記のような症状を増幅し、その結果強い依存性を生み出します。

ところが、これと同じ働きをするものにモルヒネ、コカインなどのいわゆる麻薬が有ります。麻薬に類似した脳への作用があるので依存性をもたらし、なかなか止めることができないのです。

こういうところからニコチン依存症は習慣ではなく、「病気」として認知されるようになりました。
喫煙率の変化
平成20年の調査では、日本人の平均喫煙率は21.8%で、年々減少してきています。

男性の喫煙率は36.8%で、40歳代がもっとも高く51.9%でした。平成7年より減少してきており、平成17年度に初めて4割をきっています。

 一方、女性の喫煙率は9.1%で、20歳代が14.3%、30歳代が18.0%と若年層で高い値を示しています。男性に比べ、平成元年より9〜12%の間を上下しながら漸増しています。


厚生労働省国民健康栄養調査より作図