| 【幕間U 朔風払葉 さくふう はをはらう】 |
秋ねぇ。 空があんなに高くて、 ほとんどの木は葉っぱを落としちゃってる。 寒いのはヤだけど、焚き火で焼いた美味しいものもらえるし、 お風呂も気持ちよくなるし、この季節、大好き♪ こうやって、積もった枯れ葉の上を散歩するのも好き。 いつもなら絶対音なんて立てないんだけど、この季節は特別よ。 あたしはここよ。ここにいるのよって、世界中に知らせたくなるの。 |
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ん?微かなカサコソ音が? だぁれ、こんな奥の方まで。 もしかして? 「やっぱり、しゃんくす」 「よぅ。カッツェ。お散歩か、狩猟か」 お散歩よ。しゃんくすは?って、狩猟?のハズないわね。 何か面白いこと無いか探しに来たわけ? ということは、副船長はまだ忙しいのね。 しゃんくすを野放しにしとくくらいだから。 よっぽど退屈してるらしいわ。 しゃんくすってば、風に吹き寄せられて溜まった落ち葉を思い切り蹴り上げて 「ほ〜ら、葉っぱが襲ってくるぞ〜」 しゃんくす、それって、しゃんくすがやってるんじゃない。 このあたくしが、そんな見え透いた手に引っかかるとでも? 失礼しちゃうわね。 |
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| 「ほ〜無視する気か。ンじゃあ、これでどうだー」 ……いやー それ、ダメェ。 しゃんくすが右に左に動くたんびにマントの裾がひらひらして…… あ……だめ…無視なんて、できない〜 「こっちだ、こっちだ〜」 たっぷり十分近く、あたしはしゃんくすのマントを追いかける羽目になったわ。 だって、あたし猫ですもの。 ひらひらを無視するなんて、できないわよ。 しゃんくすのいけずぅ。 |
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だーかーらー、思いっきりしゃんくすのマントにぶら下がってやったんだけど。 あたしを振り回したんだもの。 しゃんくすだって、罰を受けるべきよ。 あたしの予定では、いきなりマントが重くなるから、 しゃんくすはバランスを崩して転けるはず、だったのだけど。 当然、あたしは飛び退いて避けてる、はずだったのだけど。 しゃんくすってば、しゃんくすってば、もうもうー あたしをマントの中に抱え込んだまま、落ち葉の上をスライディングしたのよ。 「あっはぁ。どうだ。驚いたか」 もうもうっ。驚くでしょうよ。 かなり本気で腹が立ったのだけど。 (あたしは人を脅かすのは好きだけど、脅かされるのは好きじゃないのよ) でも、しゃんくすのマントの中は暖かくて、ま、いいかって気になっちゃう。 あたしは抵抗を諦めてしゃんくすの胸元に頭を突っ込んだ。 |
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| しゃんくす。あたしの愛しい…… ……何だったかしら。 飼い主なんて野暮だし、恋人、だと嬉しいけど、 異種間恋愛はさすがにマズイかも。 うーんうーん。 あたしが大切なことを考えてるというのに、 「何、悩んでんだよ」 しゃんくすてば、ぐりぐりしてくる。 おでこ、それから喉。 あ…だめ。力が抜けちゃう。 ここをぐりぐりされて、ものを考えるなんて無粋なことできる猫はいないわ。 あたしの優秀な脳みそもスリープ状態〜 ――いっか。なんと言おうと、しゃんくすがあたしのものなのに、違いはないんだから。 少し汗くさい、でも暖かいしゃんくすのマントの中、あたしはうっとり目を閉じた。 とっても幸せ。なのに…… |
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| えーん、かゆいーー あたしとしゃんくす、並んでお風呂の中、よ。 ちと、あたしの好みには熱すぎ…って、違ーう。 どうして、こうなるのよーー 「もっとしっかり浸かれ」 うっうっ無慈悲な声が降ってくる。 あたし、お風呂は好きだけど、薬湯は好きじゃないのよっ。 こんな薬くさいのなんて。 |
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| 「ったく、お頭はともかく」 「カッツェ。お前がこんなドジ踏むとはな」 ヤな奴! そんな心底呆れかえったような言い方しなくたっていいじゃないの。 忘れてたのよぉ。落ち葉には虫がつきものだってこと。 あたしは、そんなに目立たないけど、 しゃんくすってば、あちこち噛まれちゃって、 痕が赤くなっちゃってる。ごめんねぇ。しゃんくす。 あたしが気が付くべきだったのよ。 |
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| 「そう怒るなよ、ベン。カッツェがしょげてるだろ」 「……俺が怒ってるのは、アンタに対してなんですが。お頭」 「へ、俺?」 「……ほんの小一時間待てなくて、一人で飛び出して、 っあげくに虫さされだらけになって帰ってきて、 それで怒られずにすむとでも?」 「だって、しゃーねえじゃん。なっちまったもんはさ」 そうよそうよと応援しようとして、あたしはぐっと詰まってしまった。 副船長の目を見てしまったのよ。 怒っているというのは嘘。ううん、嘘じゃないけど、ホントでもない。 もっと違う気持ち。こんな目をどこかで見たような。 ええと、いつだったかしら。 |
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考えてるうちに布にくるまれ、ごしごし擦られて、 思い出せなくなってしまったけど。 副船長にすごく悪いことしたような気分だけは残っちゃったわ。 不本意! なんで、あたしがこんな気持ちにならなくちゃいけないのよ。 二度とこんな思いしないよう、次は気を付けるわよ。 副船長に文句なんか言わせないからね。 ええ、しゃんくすはあたしが守らなくちゃ。 しゃんくす、もう絶対虫さされなんてさせないから。 安心してあたしに付いてきていいわよ。 |
| 2003.12.20 |
最強の黒猫カッツェの秋物語―― ごめんなさいm(__)m 冬の新刊に載せたSSです。 でも、なーんにも更新してないことに気が付いて おまけに、新刊発送できるのって、来週以後… 勢いで上げちゃいます。今、ハイになってるもので(^_^;) 少し本とは違ってきています。 変える気はなかったのですけど、 横書きで、かつディスプレイ幅を意識すると、 元のままではちょっとだったもので。 「朔風払葉(さくふう はをはらう)」というタイトルは 「北風が木の葉を払いのける」という意味です。 七十二候の一つです。11月の終わりのこと… いやん、時季に遅れてますね。 |
この壁紙は LITTLE HOUSE 様からいただきました。。
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