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    Snap Shot 1    ――その夜



 船に帰って船長室に入るなり己の腰を抱いた男を、
シャンクスは、素直に抱き返した。どちらかというと喜んで。
「珍しーじゃん、おまえが船でしたがるなんて」
 不衛生だの、集団生活の風紀がどーのこーの、
いっつも講釈たれるくせに――と笑う。
お堅い副船長に常に説教食らってる身としては、それくらい許されるだろう。
シャンクスは基本的に場所のえり好みはしないのだから。
「…ああ」
 まぁここは港の中だし――
そう言うベンの口調には、少し照れたような色とともに、隠しきれない昂ぶりがあった。
その気配が、シャンクスを煽った。
 彼がその気なら、シャンクスとしてもお相手するに吝(やぶさ)かでない。
元々スキンシップは好きな方だ。


「だなっ」
 そのまま、諸共に床に転がる。なんともダイナミックな賛同の仕方だったが、
停泊中は常に敷きっぱなしの絨毯が役に立った。先だってのウェスト・ブルーへの航海の折り、
手触りが気に入って買い求めたものだ。二人の意見が一致するという珍しい買い物でもあった。
 滑らかに毛足が揃えられたそれは、たっぷりとした厚さでもって、
シャンクスの乱暴きわまりない動きも受け止めた。



「やっぱ、こっちがいいや」
 あのかっこで触られてるとさ…なんかこう、ざわざわしちまって。
 なんだろな、あれ。やっぱ、ずるずるした服なんか着たことないからかなぁ。
――一人で言って、一人で納得している。
 それは、“弱い”と言うのだと、教えてやる気は更々無い。
シャンクスが知らずとも良いことだ。
「いつものかっこが一番てことだよな〜」
 ゆったりしたシャツの中で、その身を上下させて他愛なく喜んでいる。
ちょっと、いやかなり……“事”を為そうという態度ではない。

 シャンクスのシャツは海島綿製だったりする。
光沢や滑りの良さはシルクほどではないが、肌に添う心地よさは“最高”のはずだ。
 ずぼらなシャンクスがボタンをかけるのをサボっても大丈夫なよう、打ち合わせも深くしてある。
今は、サッシュを解いているので、その内に手を入れるのは簡単だ。
「ひゃっ」
 冷てぇじゃないか、シャンクスが不平を言い立てる。
「じき、温かくなる」
 ベンは無視して先に進んでいった。両の胸飾りに同時に触れる。
軽く爪を当てると、先刻とは色の違う声が、シャンクスの喉奥から洩れる。
声、とも言えないようなそれは、途切れることなく長く続いた。潮騒のように響いてくる声。
ベンは左手でシャンクスの右の胸をゆっくり撫でながら、右手を下へと滑らせた。
 ゆるゆると、下りていく――腹筋から臍へ臍から鼠蹊部(そけいぶ)へ――
かすめるようにしながら肝心な部分をわざと避けて、そのまま下肢へと下りる。
気紛れに見せて、しっかり下心満載の動きだ。シャンクスの“弱い”ところに火を付けて、
しかも物足りない程度で離れていく――シャンクスは反応を隠さないから、それは容易いことだった。
「てめっ、あくどいぞ」
 焦れたシャンクスが足を絡めてベンを蹴り上げる。
この状態で蹴られたところで、たいしたダメージはない。
むしろ密着できてありがたいくらいだ。


 それに、解けさせるのは簡単なことだ。
“事”の最中にもパートナーを罵り続ける彼の口を己の口でもって塞ぐ。
都合良く開いている中へ舌を潜り込ませると、シャンクスはちゃんと迎えに来た。
舌と舌を絡み合わせて、向きを変えて、追いかけて。
しばらく繰り返すと、ベンのふくらはぎに乗っていたシャンクスの足はゆっくりと離れていった。


 拘束が無くなったので好きなだけシャンクスの上にのしかかる。
唇から離れ、顎から喉元を通り、首筋のうねりを楽しむ。
そして、そのまま、はだけた胸元に顔を埋める。

 ふっと鼻を突く――香りが違う――


 昔、衣裳部屋や女中部屋で嗅いだ匂いに似ていて、
けれど、それとは決定的に違うところがある。――“女”をひけらかす匂いだ。
 昏い甘やかさとでも言うべき匂いが、さほど強くはないものの
深く籠もってシャンクスの身にまとわりついている。
シャンクスがあの館で女達と過ごし、女達のドレスを身に纏って過ごした“時”の刻印。
シャンクスが、ベン以外の者と共に過ごしたという証明――
絡みつくそれが、ベックマンの神経を刺激する。


 さっきまでとは裏腹に、性急に前を含めば、シャンクスの身体が反り返る。
熱くなったそれは脈動を伝え、血流の動きは、ベックマンにも伝わる。伝染る。
ベンのそれも、既に激しく充血している。
 身をよじろうとするものを押さえつけ、先へ向けて舐めおろし、前歯だけで圧迫する。
 とたんに、シャンクスは弾けた。声にならない声が、部屋に満ちる。
荒い息と湿った熱気が、部屋に満ちる。さっきまでの匂いは消えている。
シャンクスの輪郭に沿って立ち上るのは、馴染んだ彼自身の体臭――
ベンは安堵して、身を剥がした。


 シャンクスが落ち着くのを待つ間、用意をする。
船箪笥の引き出しから茶色の小瓶を取り出し蓋を開け、
シャンクスの腰を持ち上げてクッションを宛う。…すっかり馴染んでしまった手順だ。
その頃には、小瓶の液体から匂いが立っている。
レモンでイランイランの濃厚さを和らげたオイルの、独特の甘い香り。
ふだんなら強烈すぎる香もこんな時には“この先”への期待をもたらす。
本来の役割である媚薬効果も効いてるのかもしれない。
 シャンクスの喘ぎが治まってきたのを確かめて、声をかける。


「シャンクス……いいか」


 おう、といういつもの返事の代わりに、戻ってきたのは、
「……おれ、オマエにそう言われるの、すげースキみたい」


「…シャンクス」


「だって、いつもの匂いがして、あん時しか見せないような顔したおまえがいて、
すごくドキドキする。おまえとヤんだって思うとさ」


 ベンの顔を見て、一生懸命説明する――その様はまるで……
まるで母親に今日の戦果を報告する新米の水夫のようで。ベンは思わず、その頭を引き寄せた。


「俺も、だよ」

 この時に、ドキドキするのは自分だけじゃない。
怖れ知らずのはずのシャンクスがそう言ってくれるのが愛おしく、
ベンの動きは、性急なものになった。



「じゅーたん汚れちまったよな」
 掠れた声でシャンクスがいう。盛大に声を上げた後なのだから、
むやみに喋るなと言っているのに、聞きゃしない。
「クリーニングしなきゃダメかな、コレ」
……いつも着た切り雀で平気なくせに、とは言わず、
ベンはシャンクスの頭を撫でながら語りかける。
「この手の絨毯は目が細かいから、織り上がるまでに三年はかかるってこと知ってるか」

 ぶんぶんっと、音がしそうなほど勢いよく、シャンクスは首を横に振る。
正直で結構なことだ。
「じゃ、織り上がったらどうするかは?」
「?できたら、売るんだろ」
「まぁそうだが、その前に町中へ運んでいくんだ。
で、一番賑やかな通りの真ん中に一日置いておく」
「んなコトしたら、ぺしゃんこになっちまうじゃないか、汚れるし」
「ああ、馬車に轢いてもらい、馬や駱駝の糞尿で汚される。人も踏むしな。
その上で仕上げのブラッシングをするんだ」

――だから、この絨毯はとても強い。これ以上汚れようがないからな。

「なら、遠慮はいらないな」
……にっ、と音がしそうな笑いと共に、ベンに向かって腕が伸びてきた。
「やろうぜ、もっ一回な」
 とても素早く、ベンの上に跨る。
 見下ろして笑う、その笑顔に、ベンが抵抗できた試しはないのだ。
――そもそも、抵抗する気もない。



「…ああ」
 頷いてそのまま、ベンはこの上なく甘やかな誘惑に向かって身を投げた。




☆ えーん、私はなぜ、こんなものを長々とーー
 ローズ様に笑われるうーー
でも、書いちゃったものはしようがないですよね。居直りっ!
 BGMはDTBWBの『サクセス』です。
 6月8日にナマで聞いて以来、以下のフレーズが
「頭ん中駆け巡っ」ております。トシじゃあーー
「待たせたね〜次の港はありはしないよ〜」
「〜ことばにまかせて〜この身を投げる〜」

 文中に出てくる海島綿は、私の憧れ♪です。
西印度諸島にのみ生産される世界で最もすぐれた品質をもつ綿花です。
繊維の宝石とも称されます。詳しい情報は、次のサイトで、どうぞ〜
http://www.dokobo.co.jp/doko/kaitomen/
http://www.kaitoumen.co.jp/info/brand1.html
http://www.sutv.zaq.ne.jp/ckafw600/yofuku/sea-island-cotton.htm
2002.6.27






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