Pillow talk 


さすがに場所は移した。
シャンクスを抱え上げるように、移動する。
この一月近く使われてなかったシャンクスのための寝室。
それでも、ランプが点っている。
毎夜ベンが用意させていたものだ。

無駄遣いが嫌いなおまえがなー
シャンクスの軽口は、全く無視された。

ドアを後ろ手に閉める間も惜しいと言いたげな性急さで、
ベンはシャンクスを抱え上げた。
サッシュをほどき、前立てを開いて下着ごとずり下げる。
残ったシャツも、はだけられてしまって
身を隠す用を足してはいない。

早急に胸元に手を差し伸べてくるベンの腕を、
シャンクスははたく。

冷めてえ!
おあずけだ。そのかわり。
暖めてやるよ。

ぐいと引き寄せられた掌に、シャンクスの舌が伸びてくる。
濡れて熱いソレに触れられて……
それだけで膝が砕けそうになる。

指を預けたまま、剥き出しになったシャンクスの胸に唇を寄せる。
紅く――花芽のように立ち上がったソレは、触れる前から揺れた

んぁっ…
ベンの唇が近づき、吐息の起こす風に揺れる。
口腔から吐き出される息の熱さに震える。

徐(おもむろ)に近づくと、舌の動きはじき緩慢になり、
それにつれて、シャンクスの足が広げられた。
頭を反り返し、体の中心を開いて、ベンの前に曝す。

何も隠そうとはしない、ベンのお頭―――
急所すらさらけだして、ベンを誘う。

立ち上がって揺れるソレにベンは口づけた。
跳ね上がろうとする腰を押さえ、二度三度―――
数え切れないほどたくさん、口づけて
そして、己が口腔に迎え入れる。

汚ぃぞ、…ンな……
シャンクスの声はすでに震えている。
それでも黙らぬところが、シャンクスだ。

あんたのならいい。あんたになら、どこだって触れられる。

まるで猫のお袋みたいな言い分だな。おまえ。
いっそ俺の母親になるか?


聞きようによっては熱烈なセリフも、睦言にはならず、
シャンクスはきっちり言い返す。


断る!

これも、間髪入れぬ即答だった。

なんだよー、俺が息子じゃ不服ってか?

―――あんたが俺の息子なら……外へ出しゃしない。
閉じこめて、俺の手の裡に置かなきゃ気が済まない。
それじゃあ、あんたは保たんだろう?


自覚はあるのか。
密かに感心しながら、シャンクスは応じる。
じゃアレか。俺は、どっかのレディを救ったわけだな。
おまえがケッコンしたかもしれない?


無言のまま、ベンは中指を噛み、
そのままシャンクスの後ろを突いた。
唾液にぬれてはいても、しばらく遠ざかっていたその感覚に、シャンクスは声を上げる。
骨太の指が、ゆるりと身のうちに押し入ってくる―――
なまじゆっくりと送られるために、その形が途轍(とてつ)もなくリアルに感じられる。
その爪先が、内壁に刺さる感触まで―――
声にならぬ声を、喉の奥から絞り出す。

誰ともヤっちゃなかったようだな。
あ、俺のこと、信じてないワケ?

その体勢で強気にぶうたれたシャンクスへの返事は無く
その代わりのように、意外に優しいキスをこめかみに落とされる。

どうせ、コナは山ほど掛けられたんだろうが。

おうよっ。俺様はモテっからな。
40の村長だろ、28の猟師、14のガキ、8つのネンネ、それから
片手じゃ足りねーな。

一々指を折りながら、けらけらと笑うシャンクスに
ベンは舌打ちする思いを押さえられなかった。

指を折り曲げ、押し広げるようにして人差し指まで差し込む。
っ!
シャンクスの呻きが、ひりつくようなベンの心を更に逆撫でする。



もてもてで結構なことだな。ご丁寧に男にばっかり。
あー、ひでー。女の子にだって、もてたぞ。

喘ぎながら、それでも言い返すのがシャンクスだ。
この格好で、“口答え”するかと、いっそ感心してしまう。


いくつの?
う……11。

結構なことだ。
あんたは子どもにだけは男女を問わずもてるからな。

ナンだよ、その言い方。険があるぞ。ありまくりだぞ。
…………

おまえ、子どもに弱いもんな〜つうか、近寄らんようにしてるもんな。

苦手なだけだ。俺は――
子どもの頃のことなんて覚えちゃいないから……
どう接すればいいのか分からなくなる。

どう、なんて考えるからいけないんだよ。
自分がやりたいようにやりゃいいんだよ。
どっちみち、ガキなんて自分のしたいようにしか動かないんだから。
――その意見、あんたが言うと説得力あるな。
どういう意味だぁ、そりゃ。

―――あんたは、とても、子どもとしても完全だから……
“子ども”ですらなかった俺は、きちんと対応できない……

おまえだって、充分ガキだよ。
そうだ、な。否定できないな。


バカだな、おまえ。
おまえが抱いてるの、誰だと思う?“世界で一番愛された子ども”だぜ

その俺が知ってる。俺が一番知ってる。
おまえはとっくに“我が子を愛さなかった親”なんて乗り越えてるよ。
おまえは“子ども”も愛せてる。

みんな知ってるさ。ルフィだって、おまえを好きだったろ。



腹の奥が一気に押し広げられるような圧迫。
一気に重くなるカラダ。
―――縫いつけられる。

背に回された太い腕は――支えるものなのか、拘束するものか。

本能的にもがこうとする耳元に聞こえる荒い息と
胸元に響いてくる早い鼓動……
それだけがシャンクスの意識を繋いだ。


ここにいるのは、己が選んだ男―――
世界中と引き替えても、己だけを求める男―――
たとえ、己はそんなもの望んでなくとも――
この男には、ソレが必要なのだ。


なぁ、明日さ……
うん……
約束したから、あの村にも一度行くんだ。あのオレンジチョコくれよ。
好きにするとい。あれはあんたのもんだ。
さんきゅ。あいつら喜ぶだろうな。



一気に冷え込んだ空気を気にも留めず、シャンクスはそのまま眠り込んだ。

揺り起こして、続行してやろうかと一瞬考え
けれど、ベンは自らをなだめた。

これ以上ヤると、シャンクスは動けなくなる―――
動けないだけなら結構だが、間違いなくへそを曲げる。
意地になって、ここに居続けしかねない。

それくらいなら、気の済むようにさせてやって、
とっとと出航するする方がマシだ。

ため息を一つついて、ベンは自分も毛布をかぶった。




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