■■にも、分からなかった。 王の不興を買う危険を冒してまで、なぜ この若い海賊を連れてきてしまったのか。 「なにやら、珍奇な玩具を手に入れたそうだな」 やはり、王には知られていた。 その程度には、まだこの国と王の権威は強固なのだ。 まして今、王は■■に執着している。 「鮮やかな赤い髪だそうだな。そなたの黒と並べば、さぞ美しかろう」 「…御心を煩わせるようなものではございません」 「ただの海賊で、怪我人です。御前に据えるには、見苦しゅうございます」 「では、回復まで待とう。傷が癒えれば、共に参れ」 ―――喉が詰まったようだった。あの年若い海賊をここに連れてくる? ここで、己の姿を晒す? 己と同じことをさせる? だが、逆らう術はない。 ■■にそう命じたのは、この国の最高権力者なのだから。 「御意のままに…」 ■■は答え、その足下に身を伏せた。 ■■が離宮から退出してきたとき、屋敷の灯りは既に落とされていた。 そうしろと、■■自身が命じた。 このような帰還を、召使いにであれ、見られたくはなかった。 けれど■■は忘れていた。監視のためとして己の部屋に留め置いた海賊のことを。 「お帰り」 闇の中から声をかけられて、狼狽しそうになった自分がくちおしい。 「あんた、どうして王サマの言いなりになってんだ」 一番触れて欲しくないことに切り込まれる。 答える義務などないものを―― けれど、舌は答えていた。 「命により」 「誰の?」 「我が父、■■■公の…吾は父の命により、この地に来た故」 「あんたな…」 呆れたような声。 海賊でもこんな無防備な声を出すものなのか。 たださえ、ガキっぽい童顔が、まったくの子どもにしか見えない。 ■■は、しみじみと若い海賊を見つめた。 シャンクスも呆れかえって、この異国の若君を見た。 堂々たる体躯を包んだこの国の伝統的な衣裳の濃紺が、 ノース・ブルーの血を示す白い肌によく映えている。 背に流した艶やかな黒髪。 黒々と沈んで、内面を見せない瞳。 見ただけで貴種と分かる端正な面立ちと細身ながら大柄な体躯に恵まれていて。 なのに、この男は…… こんなでかい図体して、こんなに人目を引くなりをして、 中身は全くのガキだ。 自分の親しか目に入ってない。 自分の親のやり方しか知らない。 家とも言えない家の中で、膝を抱えて蹲っているだけの幼い子ども。 ―――なんというアンバランス。 しみじみと見つめると、■■は居心地悪げに身じろいだ。 シャンクスがつと近寄ると、無意識に一歩下がる。 まるで、野生の獣の仔のように。人を避けようとしている。 「あんた…」 「…なんだ?」 痛々しいほどの警戒心。 しかも、自分でそのことに気づいていない。 なるほど、これでは―― シャンクスを連れ帰ったとき、あの執事達が驚いたはずだ。 「あんた、可愛いや」 「…可愛い?…吾はそのように言われる年ではない」 「年にはかんけーないの。可愛いもんは可愛いの」 椅子に腰を下ろした■■の頭上に掌を持っていく。 ■■の体は少し震えたが、身を引きはしなかった。 そのまま――そっと、頭の上に下ろす。 揺れる髪の毛―― 触れた部分から、熱と共に■■の体が強張っていく様が伝わってきた。 「何もしやしない。安心していいよ」 「あんたはよくやってるよ。よその国でさ。 たった一人でさ」 同じフレーズを繰り返しながら、頭を撫でる。 ■■は動かなかった。 |
| 2002.7.24 |
| ☆ 何とか先が見えてきましたので、初っぱなの部分だけアップ。 こーゆーお話です。 とっても暗ーい出会いでございます。 お嫌な方は、申し訳ありませんが、帰ってくださいませね。 |
このページの壁紙と、上のバナーは
「Asha's Graphics Garden」様からいただきました。
右上の「×」を押して、お帰りください。