令和6年 5月...5月30日配信
上左5/10頃五月松茸の出荷がありました。 上中宇和島城です。 上右 こちらではこうした自生琵琶がいたるところに、生えています。
下左 大雨の後に現れる滝です 下中 5/27百合の花が咲きました。少し遅いようです
下右
高級果実化
このところ果物の高級果実化が、止まらない。背景には果実栽培の低所得化と言うことが、あったのだろうと思う。
この数十年果実栽培農家は市場の気ままな風に押し流され、長い間低価格に翻弄され続け鳴くに泣けぬ涙を流し
続けて、いたのである。
そこに変化が現れたのは価格低迷に泣くリンゴ農家が、高級果実化へと方針転換したことが、きっかけであろうか。
当時リンゴはインドリンゴ・国光・スターキングなどが主力でやっと富士が、出回り始めたころだった。富士を除
けば美味しいと言えるほどの味の物ではなく、ただリンゴと言っただけの評価だったか。とは言えそれでも風邪で
も引かなければ当時は口に入らぬ、果物だった。
そんな味が次第に見向きもされなくなりリンゴ離れが顕著になり、いたるところに打ち捨てられたリンゴの映像が
マスコミなどで報じられ、それを幾度となく目にしたものである。
それはみかんでも言えることで二年に一度暴落を繰り返し行き場を失ったみかんの行くところとは、畑のちょっと
空いたところにリンゴ同様打ち捨てられる、畑の肥やしのみかんであった。
そんなリンゴの高級果実化が功を奏したのか、最近では手の付けられないような、高値である。
直近では以前なら三千円も出せば仕入れ出来ていたものが、七千円を超えるようなバカ高い値段になっている。(そ
れほど良い品ものではない)
それには中国向けの輸出で一部の品物(裾物)が品薄になっていることもあると思うが、もはや庶民などにはリンゴを
食べることなど、夢物語になったのであろうか。
最近の果実高級品化に共通しているのは、甘さの追求である。例えばつい数年前にお目見えした鳥取生まれの新甘泉
と言う梨、これが梨なのかと思うほど梨の概念を覆すほどの、甘さである。言いかえれば梨にこれほどの甘さが必要
なのかと、思うほどである。神前にお供えする供物の中に、水菓子というのがあるが、これは梨のことである。新甘
泉はまさにお菓子である。 甘さ追求の傾向は柑橘でも顕著で最近開発された、紅マドンナと甘平の交配品種媛プリン
セスなどは、目隠しして食べればとても柑橘とは思えないような、食味と甘さである。
長年現状打破を目指して、新品種の登場を待ち望んでいた生産者の声に、十分に応えるものであり、県果樹試験場の
技術員の奮励努力の、賜物である。
この紅プリンセスなども贈答用の物の10玉入り位のもので、小売値が7千円から8千円くらいと、今までのみかん
ではなかった高値である。 これももはや庶民の手の届かないものになったかもしれないが、紅プリンセスも 吉永小百
合のようなものばかりでもなく、我が女房殿のような柄おちの物もそれ相当数あり、自家用とか格外品てあればそれな
りの値段で手に入れることが出来るであろうと思う。
これほど優れた品種にも一長一短があり、甘平などは裂果がひどくひどければ着果量の8割程度が裂果して、売り物に
ならないこともある。紅マドンナなども品種が畑を選ぶと言われるように畑によって味のばらつきがあり、将来人気を
落とすのではないかと、危惧している。
これらの新品種に隠れて余り目立たないが、私が注目している品種が、二つある。
マドンナ・甘平と同時期に品種改良されたもので、黄金柑と清美との交配種である媛小春と、どこで品種改良されたか
(私には)定かではない八朔と甘夏との交配種サマーキング、である。
夏みかん系とは思えない糖度13度というから、早生みかんなどより甘いと言える。甘さには問題ないと言えるが、柑
橘の宿命である寒波には弱いという。採収目前に雪でも降れば収穫は望めなくなるであろうし、一理あって一利一害で
ある。 媛小春にも似たようなことが言える。糖度は15度と柑橘では最高糖度を記録する。しかし玉が小ぶりでキロ単
価が高くても手取りがそれほど上がらず生産者が横を向くのではないかと、ちょっと不安が残る。
高級果実化は時代の流れで止めようとして止められるものではないが、それがさらに進んで消費の二極化が進み生産者
の固い絆に溝をつくることにならないか、ひいてはそれが田舎暮らしの分断に繋がらないかと、危惧するのである。
かつて幼かった頃友達と山に行き、木からぶら下がってパックリと実の割れたアケビの衝撃の甘さは、記憶の中でそれが
薄まることはない。
そんな記憶や経験の積み重ねが田舎暮らしでありまた楽しさでもあった。しかし高級果実化の波は過疎化の波もそうであ
ったが、田舎者の拠りどころとするところを無造作に飲みこみ、波の彼方へ押し流してしまうのだろうか。
過疎化対策は工場誘致一辺倒で見事に失敗したが、果たして柑橘も高級果実化の掛け声だけでこの甘さに溢れかえる時代
を、乗り切れるのだろうか。 余談は慎まなければならないが批判を恐れず言えば、波に流されることになるのではないで、
しょうか。
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