-+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 令和5年  ・・・・2/28日配信
左上・・この数年出始めた媛小春です。黄金柑と小夏の交配種です。糖度は15度位ありそうです。
右上・・椿ですが気候のせいでしょうか、こんな綺麗なのは滅多にありません。
下左・・農道にかぶさっていた雑木を伐りました。
下右・・直径50センチほどでしたが、倒れたときは地響きがしました。
   
   
下・・

田舎暮らし デコポンの話

歴史的な高値で取引されていたみかん・ポンカンもようやく終わり、市場の出荷状況はデコポン・せとかなどの雑柑類に、取って代わられようとしている。

雑柑とはわかりやすく言えば普通温州と言われるみかん以外の物で、一部を除き(ポンカン・伊予間など)年明け後に採収される物を、指す。その雑柑類の中でも最近生産量を増やしてきたのが、デコポンである。

それは一時期もてはやされた伊予柑が安値傾向になり、それに嫌気をさした山方(生産者)が、伊予柑を伐りデコポンに改植をしたから、である。当時の山方の目には今まで味わったことのないデコポンの食味は柑橘の究極の味に、感じられたことであろう。そんなことがあってデコポンは一気に、広がったのである。

デコポンが顔を見せ始めた40年前くらいころには、それはそれは高級品種としてもてはやされたものだが、今では何の変哲もない普通の柑橘になってしまった。

それは以前から何度も書いてきたように販売の方法のまずさに、起因している。一言でデコポンだと言っても品種改良された時期によって、その食べごろ・美味しい時期はまったく違ったものである。

デコポンは熊本果樹試験場で開発され、その他の品種と一緒に品質の評価が行われ、その時不可としてはねられた物を、一部の人が持ち帰り栽培したのが、始まりだと言う。だから出始めたころは、不知火と呼ばれていたのである。

不可とされたもののいざ栽培してみると、その味は当時柑橘と称していたものの食味とは全く別物で最初に食べてみたときは、柑橘の概念をはるかに超えるみかんだった。

ではなぜ普通になったのか、である。とは言え今でも当時の味を彷彿とさせるものは、ある。

最初にできた苗木の農水省への登録版号はおそらくM8号だと思うが、それが品種更新されM16号となり今まではM32号に、なっている。

最初のM8号は3月中旬くらいにならないと酸っぱくて食べられないが、M16号以降では酸抜けが早ければ1月中旬頃には、食べられるようになる。このように同じデコポンでも苗木の更新時期でこれほどの違いが、あるのである。

それを葉っぱひとからげに売るのだから、買うほうのお客さんはたまったものではない。甘いのがあったり酸っぱいのがあったりと点でばらばらの味では、お客さんも買ってはくれないのである。

一般的に柑橘の酸っぱい物は置いておけば甘くなると思われがちだが、デコポンは置いていても、酸味は抜けないのである。樹にならしておき熟して初めて、酸が抜けるのである。だから最初のM8号などは4月に入るころまでならしておけば、全く別物のようなデコポン特有の濃い味になるのである。

山方もそれはわかっているが、それができないのである。それは怠けものだからではない。実が熟してくれば当然鳥がそれをつつきに来るわけで、いやでもそれ以前に採ってしまおうとするのは、作った者として仕方のないことである。

鳥の食害のひどさには、大変なものがある。私も一度経験したことがあるのだが、1月中旬頃食べてみたら十分食べられるようになっていて、明日から採ろうかと予定していたらその日から、3日ほど雨になってしまった。

4日目雨も上がりさあ採ろうかと意気込んで畑に行けば、いきなり黒い塊となってヒヨドリの群れがものすごい羽音を立て、飛び立った。

一瞬身を引いて茫然とそれを見上げたのだが、そんな群れと羽音の大きさは初めてのことで、何が起きているのか理解するには、一瞬戸惑いを感じた。

源平合戦で宇治市にある宇治川の戦いで平家の軍勢が、水鳥の飛び立つ羽音に驚き逃散した気持ちが分かるような、気がしたものである。

およそ1トンほどのわずかな収穫量の3割ほど食べられてしまった。その胸糞の悪さはたとえようもなく、ヒヨドリもせめて雨の日くらいは休んでくれよと思うのが、関の山であった。

そんな鳥の被害を防ぐには1個1個袋掛けをするか防諜ネットをかけるかであるが、これが結構手間のかかる仕事で皆それを、敬遠しているのである。

最近では1個1個の袋掛けの手間を省こうと土嚢袋で10個単位くらいで、袋掛けをしているところもある。以前は袋掛けと言えば紙袋でしたが、最近は化学繊維でできたサンテというものが、使われるようになっている。

そしてその採収時期がちょうどマシン油の散布時期にあたり、マシン油がかかれば果皮がテカテカと光り散布後すぐには採収できなくなり、そうなれば鳥やタヌキの被害にも合うわけで、いやでも早く採収といことになるのである。(マシン油は無農薬栽培でも散布が認められている、唯一の薬剤です。油膜で殺虫します)

余談になるが最近のタヌキは防鳥用にサンテ(靴下の足首の所のようなもの)をかけていてもそれを外して食べていて、以前と比べると随分たちが悪くなっている。イタチごっこならぬタヌキごっこである。ちなみにタヌキの害は鳥ほどではない。

いずれにせよ農家の憂いは浜の真砂のように尽きないものの、ようである。

ところでもう3月になろうかと言うのに、前年に比べてデコポンの出荷量が、少ないようである。不作だと言う話も聞かないし、雪の被害にもあったとも、聞いていない。この時期マシン油の散布時期でもあるのでそれに手を取られ、出荷できないのかなとも思ってみるが、それにしても普通ではない。

まさかとは思うけれどここ数年デコポンの安値が続いていたので、それに嫌気がさして他の品種に改植しているのかもと、思ったりするがどうだろうか。

最近高級柑橘紅マドンナの後継品種紅プリンセスの苗木の販売が、始まったと聞く。いつものことで新しいものが出るとよいか悪いかの判断もつかないままに、皆一斉にそちらのほうに向かって走っていくのは、世の常である。まして改植すれば国から反当40万円の補助金が出るので、それも一役買っているかもしれない。

この紅プリンセス昨年試食する機会があったのだが、紅マドンナの食感はそのままに更に甘くなったような、感じであった。もはや柑橘の食味ではないような気もする。

この紅プリンセスとは紅マドンナと甘平との交配種なのだが、10年ほど前中国から視察団が試験場を訪れ苗木を10数本持ち帰り、現在中国で産地化されているほど栽培、されているという。どこまでも憎たらしい中国である。

新品種の国外流出はさておき、デコポンの行く末は一体どうなるのでしょうか。タンカン・三宝柑などのように忘れられてしまう、存在なのでしょうか。はたまた再び脚光を浴びる日が来るのでしょうか。

一度駄目だったものが復活した例は河内晩柑(宇和ゴールド・御荘柑。愛南ゴールド)しか、私は知らない。

再び日の当たる場所に出てこられるように、皆さんのお知恵を拝借したいものである。




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