政治家と乞食

 世の中には皮肉屋が居て、「政治家と乞食は3日やったらやめられない」と言う。乞食は仕事をせずに、他人から金銭を恵んでもらうことを生業としているが、政治家も献金やパ―ティで金を集める。共通点かもしれないが、政治家はそれが生業ではない。

 民主党の小沢代表の秘書が政治資金規正法違反容疑で検挙された時には、「小沢よ、お前もか」と多くの人が思ったようである。自民党の金権体質を批判すべき野党の党首は、それとは無縁な人物と思い違いをしていたのである。もともと、自民党の金権体質の中枢に居た人だった。政治資金報告書の形式は整っていたようだが、結局、民主党代表の座を降りることになり、それで一時衰えていた政権交代の機運が、新代表を選ぶことで再び盛り上がりを見せている。

 現状で政党の資金は、国から出る政党助成金がある。その他に、政党には一政党一団体の資金団体があり、自民党には(財)国民政治協会がある。ここは、経団連や銀行協会、証券業協会、建設業協会などの諸団体を通じて傘下の会員企業に割り当てて集めた金額を全て、自民党に寄付する強力な組織である。そうした資金調達組織は、公明党には創価学会、共産党には赤旗新聞がある。民主党にはこれというものがない。

選挙ともなれば、自民党幹事長が公認候補に5百万円ほどを渡し、受け取った人が札束をカメラの前に差し出しているところが放映されたりする。党が集金したものの一部を渡しているのであるが、受け取った政治家にしてみれば焼け石に水程度の金額なのである。

選挙には数千万円が必要と言われる。この5百万円程度では役に立たないから、個々の政治家は何らかの資金調達手段が必要で、献金やパ−ティで資金を集めることになる。これに、与党・野党の区別はない。日常の政治活動資金は歳費や支給経費等の範囲で何とかできても、選挙資金ともなると、別の手段で工面しなければならないのである。

こういう事情があるから、政治資金について、国民が納得できるような規制をすることは、これまでも困難であった。すなわち選挙には金がかかることが常識であるから、これを解決しなければ、規制を先行させることはできなかった。カバン・カンバン・ジバンの3バンがなければ、当選は覚束ないといわれる、カバンの中味は金である。

ジバンは、その政治家を応援する集団である。誰某を応援する会を作り、後援会員は多い方が望ましい。冠婚葬祭に関わる付合いは規制されているから、政治活動報告のような形で、印刷物が配布され、ミニ集会がもたれる。これには、世話役が必ず居る。通常人は無償では使えないから、結構ジバンの維持費は大きい。政策秘書等国費がでる秘書とは別に雇う地元秘書や選挙にからむ人件費が大きいのである。

政治資金規正法で、企業・団体献金、パ―ティ券などを全て規制すれば、表向きクリ―ンにはなるだろうが、選挙資金に事欠いてくる。資金規正と金が掛かる選挙の在り方は同時に規制が必要となるのである。個人献金制度が云々されるが、見返りを期待することなく政治家に身銭を切って個人献金するような風土は今の日本にはない。

水清くして魚住まずともいう。多少のことは目をつむって、限度額を定めて個人献金を税額控除で認めるような制度化を図るなど個人献金を促進することになるであろう。政党助成金が税金から出ていることを思えば結果は同じであり、個人の政治参加という観点からはその方が望ましい。羮に懲りて膾を吹く感があるが、企業・団体献金を全て規制するなら、残るのは個人だけである。