STAP 細胞

 ノーベル賞も夢ではないと期待を集めた科学的発見・発明で、後に捏造が明らかにされたものがある。韓国のソウル大学教授によるES細胞捏造事件、米国ベル研究所のヘンドリック・シェーン研究員による超伝導に関するデータ捏造事件が記憶に新しい。科学には疎いので、詳しいことは記憶しないが、当時マスコミを賑わした。

 理化学研究所のユニット・リーダー、小保方晴子さんによる「スタップ細胞はあります。」記者会見が有名になった。その実験は、2百回以上成功しているということであったから、我々はスタップ細胞が作り出されていたのであろうと推測した。まさか、30前後のエリート美人女性がでたらめを言うはずがないという性善説に立ったのである。

ところが、理化学研究所は、彼女の説明を否定し、再調査をも不要としたのである。大方の人は彼女がもう一度スタップ細胞を作れば良いではないかと思ったし、リーダーだから彼女の下にいる研究員でスタップ細胞の生まれる過程を見た人もいるだろうと想像した。とにかく、再現すれば問題は解決すると思ったのである。

200回もスタップ細胞を実現したというからには、データ・写真・その物の冷凍保存など、証拠となるものを残して置くことは可能であった。また、理研という組織の一員であるから、世界的発見ともなれば、上司への報告はもちろん、外部へ発表するのであれば、上司による相当のチェックがなされて当たり前であった。この場合のチェックは、スタップ細胞実験過程を200回のうち1回見れば、一目瞭然の筈であった。理研の発表によれば、上司によるチェックはなかったようであるから、学者の世界は分かりにくい。

 組織と上司の責任は別としても、小保方晴子さん本人は、必要十分な説明責任を果たしているであろうか。200件の実験を証明するノートを正確に記録してはいないようだから、実験が成功であったかどうか証明できないし、成功を裏付ける論文に使用した写真には取り違いがあるという。これでは、素人はともかく専門の学者を納得させることは無理であろう。現在のデジタルカメラは、機種、撮影年月日、焦点距離、照度、シャッタースピードなどが記録表示されるから、写真を取り違えることは考えにくい。まして、論文を構成する写真は、論文を補強する証拠であるから、これを取り違えると、論文そのものに瑕疵を生じる筈である。

 それは科学者としての見識や信念に関わることであるから、当人も反省することがあろう。もともと、大発見・大発明をするような人は、世間からみれば変わり者が多いから、この人もその範疇の人と思えば気にすることはない。200回も作ったというのであるから、あと1回作れば事は解決するのである。

 幸い理研では、スタップ細胞再現の実験に小保方さんを入れて始めてはどうかという意見もあるようだから、是非とも再現して、鼻を明かしてもらいたい。ネイチャーに掲載した2本の論文は取り下げるようだから、再現しなければ、稀代の嘘つきの仲間入りをしてしまうことになるのである。エプロン美人の若手研究者に、嘘つきのレッテルを貼りたくない人は多いのである。