湯舟の側壁から気泡を含んだ湯を噴射しているバブルジェット(なぜか超音波気泡湯という奇妙な名が多い)や、底にたくさん開いた小さな穴からから気泡を出している気泡湯などは、マッサージ効果をねらったものだ。
打たせ湯も多くの銭湯で試みられているが、狭い浴室では、しぶきを飛び散らさないように仕切られている。ただこれは、2000年に起こったレジオネラ問題(死亡事例もある)の影響でほとんどの公衆浴場で一斉に廃止されたようである。
薬湯は、松山では主に入浴剤で、地方に行くに従って湯ノ花を入れた硫黄臭のものが多くなる。大洲や八幡浜の薬湯はほとんど後者である。いかにも温泉という風情があるのだろうが、目にはいると痛みが取れない。
潮湯は、伊予や松前に多いが、塩分の濃いものは本当によく暖まるので、私は好んで利用する。これらは、海水を直接温めているところや、後から岩塩を入れるところなどもあるが、やはり八幡浜の清水温泉(廃業)、伊予市の五色浜温泉や汐湯(廃業)のように海水と同じ程度の塩分濃度であってほしい。
また西日本特有の電気風呂は、いかにも何か効能がありそうなためか、地方の隅々にまで普及している。おそらく一時期、大流行したのであろう。関東ではほとんどないらしいが、本当に効果があるのだろうか。この電気風呂については、効能はもちろんどんな電流をどのように流しているのかわからない点が多い。潮湯の横にあったり電気風呂を薬湯にしているところもあるが、設置業者の意図に反した抵抗値となるのでちょっと怖い感じがする。電気風呂は低周波治療器と同じ原理で体のこりや患部を刺激し症状を緩和するために使われている。実際に試してみるとこっている箇所(私の場合、バイクのせいで肩胛骨と背骨の間に慢性的なこりがある)にビリビリが集中しているように感じる。ということはこの風呂に入ることで健康診断もできるってことかも?
右の写真は、その注意書き(廃業の銭湯からいただき、私の自宅の風呂にもかかっている)であるが、まあ刺激という面では、No.1の浴槽であろう。お年寄りの中には両電極に足と背中を押しつけて入っている。凄いと言うべきか、鈍感というべきか、どっちにしろ私にはできない技である。この電気風呂を堪能するなら松山市の新開温泉。強弱の電気風呂が浴室の中央にあって、強の方には私は入ることができなかった。ペースメーカーのような機器が体内に埋め込まれている場合は命に関わだろうが、私の胃にも今は金具があるので最近は入らないようにしている。これによく似たもので、赤外線湯(松山の松の湯など)とかいうものもあるが、効能は??。
湯を出すために特別につくった部分を何というのだろう。とりあえず湯出し口と呼んでおこう。これは、土地柄、道後温泉を意識した物が多いようである。石をくりぬいたり、岩を積み上げたりさまざまな工夫をしてつくっているが、流行は過ぎたらしく、形ばかり残っている銭湯の方が多いようだ。古い銭湯も含め、シンプルな浴室の銭湯では、湯の下から泉のようにわき出る方式のものが多いようだ。お年寄りには熱い湯が好きな人がいる。公共の場である銭湯での大きな問題は適温をどうするかだ。この問題に対して白湯の浴槽を上部のみ分割して温度差をつけた浴槽もある。もちろん湯出し口に近い方が熱い方である。
松山の銭湯の中にはくみ湯用の長細い湯だめがあるところ(鹿島温泉等だが今も営業している銭湯はない)が見られた。今では温泉浴場でかけ湯のための湯だめを見かけるが、この場合、主浴槽と繋がっていたりして低い位置に水面がある。洗い湯をすくうためにあったのではないかと私は考える。
そのほかにも、銭湯の浴室にはおもしろい物がいろいろある。写真は銭湯のしきりによくある極小の扉である。下のシャンプーと比べてもその小ささがわかるが、大柄の私にはまともに通れそうもない。タイルにもいろいろな工夫がなされている。湯の透明度や温度を表す青系統のタイル、または玉石タイルが浴槽の中にはよく使われている。鯉のタイルが埋め込まれている風流な浴槽(松山市みかわ湯、今治の鯉池温泉)などもある。江戸時代には標準であった石榴口風の副浴室をもつ銭湯(大洲市のよしの湯など)も興味をそそる。なお、カランや壁絵、蒸気抜き、庭園については別のページで紹介する。