森の国 ぽっぽ温泉  北宇和郡松野町松丸110

営業時間:10:00〜21:30 湯銭:510円 第2月曜休

 鬼北町から国道381号を予土線に沿って南下し、出目峠を越えてしばらくくるまで走ると、旧道との交差点となる。右の旧道の方に進み、ちょっと行くと田圃の向こうの山の麓に「まつの温泉」の看板がみえてくる。それがH7年10月に訪問した廃業している松野温泉であり、今は松野温泉の看板代わりを演じている。そしてそれを受け継いだのが、平成14年開業の「森の国ぽっぽ温泉」である。ここは、松丸駅と合体化した温泉施設である。平成9年度から営業を開始したおさかな館を中心とする「虹の森公園」も川をはさんで対岸にあって歩いて移動できる。平成の大合併に取り残された形となり愛媛県で最も小さな町となった松野町にとって、交通、行政、観光、文化の拠点が集中しているこの一帯の盛衰が町の運命線を握っている形である。ちなみにこの予土線にはミニ新幹線列車やトロッコ列車などのおもしろい列車も走っているなど、松野町も含む四万十川流域はさまざま面でおもしろい発見がある地域である。

 私がこのぽっぽ温泉を始めてみたのは、予土線で高知へ向かう途中である。駅に温泉ができたことは知っていたが、小さな町にこんなに大きな施設があるのには驚いた。そのときは外観を眺めるだけであったが、H26秋、念願の入浴にこぎつけた。駅前の通りは天満神社の参詣道にもなっているらしくこの日は秋祭りの幟が立っていて、気持ちもわくわくしてきた。
 駅舎兼温泉浴場は白壁の蔵を二つ並べたような建物で、木部は昔の駅に多かったタール塗りの黒っぽい建物である。2階建てで、2階が温泉浴場のようだ。駅前には十分な駐車スペースもあるし、特徴的な店舗もある。
 まずは温泉に入ってみよう。左手が温泉の入口である。靴を脱いで階段を上るが、身体の不自由な人のためのエレベーターもある。2Fは町の物産や飲み物、ガチャガチャまでもがずらりと並んだ休憩室である。私の目を引いたのは1個50円で売られているアケビであった。様々なパンフレットや松野町のイベントや案内も置いてある。まずは、自動販売機で入浴券を買ってカウンター兼レジに渡す。そして、脱衣場に向かう。浴場には「明治の湯」(虹の湯?)と「滑床の湯」(森の湯?)があって、男湯と女湯が日替わりになっているようだ。このときの男湯は「明治の湯」だった。滑床とは松野を通らないと車では行けない南予アルプス内にある宇和島市の景勝地である。雪輪の滝という滑滝が有名である。だから「滑床の湯」は岩風呂を基調とした浴槽配置がなされている。 明治の湯は、昔ミスコンで準優勝した松野美人を記念して名づけられた松野の酒「伊予美人」の造り酒屋の酒樽浴槽をメインとした浴室である。私の住む伊方町の昔の亀ヶ池温泉も使い込まれた酒樽が特徴だったことを思い出した。ここの使い込まれている直径2mほどの露天大樽浴槽はなかなか良い味わいである。一時レジオネラ騒動で絶滅しかかった打たせ湯が浴室の中央にどんとある。これらは木造の柱(だいむ朽ちてきているがその味わいもいい)で、天井にも廃民家などの流用と思われる丸太が通してあって、それが明治のイメージなのだろうと思う。温泉はpH=8.6のラドン含有低張性アルカリ性冷鉱泉で大門温泉という。

 湯上がりで1Fの駅舎の方にも行ってみた。待合室の他にギャラリー、奥のふれあい福祉センターには2つの多目的室、調理実習室などもあって、地域の展示や小さなイベントもできそうだ。確か足湯もあるはずだとプラットホームに出てみる。階段があってホームの上の階に石組みの足湯があった。2Fからも行けそうだが2Fの通路は通行止めになっていた。足湯は目のやり場が重要である。だが、ここは2Fなので広見川をはさんで虹の森公園を臨める絶好のポイントだが、写真のように手すりと看板があるために足湯に浸かるとほとんど景色は見えなくなる。そのためかせっかくの足湯も利用する人はいなかった。
 次に橋を渡り、虹の森公園前の河川敷で湯を沸かして、ぽっぽ温泉を見ながらもってきた弁当を食べた。こういう週末もよいものである。

 ここからは私がH7年秋に行った「まつの温泉」をレポートする。
まつの温泉は、見晴らしの良い丘の中腹にあって近づくとその看板がすぐ目につくので迷うことはない。下の道路には松野町出身の俳人・芝不器男の石碑があり、8台ほど停めることができる駐車場がある。まつの温泉は漏るのか水のない池のある結構大きい庭がある。まつの温泉は日の平(炭酸水素ナトリウム)鉱泉で湯銭は何と180円だった。フロントの明るく気さくなおばさんにで湯銭を払い上がると左に30畳ほどの広い畳の休憩室(お茶のサービス有り)があり、右が浴室になっている。
 脱衣場には立派な木のロッカーがあるがカギはあったり無かったりする。体重計の針は曲がった体重計があって天井には扇風機が回っていた。浴室は集灰岩?の床で、右壁は岩風のタイル、左壁は石風のタイルである。浴槽は御影石でできていて奥に湯出し口があった。
 せっかく松野まで来たのでまつの温泉の裏山(松野公園)にも登ってみた。不器男ゆかりの俳句の小道がつくられていて、それを上ると公衆便所と祠があり、頂上には貯水施設がある。そこから尾根伝いに下るとまつの温泉のボイラー設備に至る。この温泉施設の天井は写真のように一面にソーラーパネルが並び、太陽熱を利用して燃料効率の良い加熱ができたのであろう。それで180円の湯銭が可能になるわけだ。河川敷では大規模な工事が行われていたが、今考えるとそれが松野町を全県的に有名にしたおさかな館のある虹の森公園の基礎工事だったのだろう。そして田んぼには意図的に造ったのか分からないがコスモスがたくさん咲いていたのを記憶している。右の写真はH26に撮ったまつの温泉である。多少草に浸食されつつあるが建物は健在で営業せし日の姿を主張している。