みなと湯  八幡浜市北浜1-7-39

営業時間:9:00〜22:30 無休

 八幡浜の銭湯が一つ無くなり二つ無くなり、そして海岸部に最後にい残された白浜温泉も八幡浜の発展のため?道路の拡張工事でさらし者にされたあげくほとんど強制的に撤去となっってしまった。そして一度は断念した八幡浜の念願だった温泉がやっと掘り当てられ、白浜温泉の跡地近くにこのみなと湯が誕生した。すぐ斜め後ろに市民体育館もあるので、こぢんまりした温泉浴場ながら安定した集客も望めるだろう。
 そしてこの地に出た温泉とは泥炭の色のついたモール泉である。モール泉は大分市の銭湯や温泉で一般的なので、さほど私には馴染みの湯種であるが全国的には珍しいようだ。効能はさほど期待できそうもないがその色の印象は問題である。ということで、みなと湯では黒湯と称してその価値を高めるのに躍起だ。私にはあざとく思えるが入口横には神棚らしき湯口ももうけ、その上には古生代の地層で育まれた「八幡神社のきせきの湯」という説明書が掲示されている。折しもこの日は八幡浜の秋祭り。中学生がかつぐ牛鬼がこの温泉の玄関前で元気よく御払い?をやっていた。のどかな秋の風物詩と云えなくもないが、学校主導の宗教的な伝統行事は(神道の心の形骸化から)徐々に消えていくことが多い。青いジャージの足の牛鬼とその近くで対応する先生方の様子を見ながら私はそんなことをを危惧していた。

 さて、建物の中に入ってみると、正面に受付カウンターがあり、左は和、右は洋の休憩室になる。洋の休憩室には写真のような八幡浜市に関する様々な掲示があり、市の掲示版もある。飲食販売は自動販売機のみで浴室も含め無駄な装飾もなく人件費も最小限に抑えられており、田舎の政治家の好む土産物や変なサービス施設のてんこ盛りの温泉浴場の多い中、市民のための日常の公衆浴場として品のいい施設になっている。ただ、引っかかったのはアメリカンタトゥー保持者の入浴禁止表示。いろんな考えがあるとは思うが、さりげないタトゥーや入れ墨文化をもつ外国人にとっては差別であって訴えられるとその規制範囲をふくめ問題化することだろう。具体的な迷惑行為を制限するならいいのだが、多様な文化を尊重すべき現代の公共施設としては好ましいことではないと私は思う。

 狭い脱衣場から今日の男湯になっている里山の湯の浴室に入る。まずは看板の黒湯の広い浴槽、そして硝子壁を隔てて向こうに中庭付半露天風呂、左手に洗い場、奥がサウナという合理的な配置になっている。実はこのみなと湯に来るにあたって一番期待していたのは半露天風呂である。ネット上の「露天風呂は塩湯」という一文があったからだ。潮湯と云えば瀬戸内沿いの伝統的な銭湯文化である。八幡浜でもこの温泉のすぐ近くの向灘にあった清水温泉には井戸堀の潮湯があって、昔は馴染みにしていたからだ。しかしここの塩湯とは....塩味がする程度の白湯のことであり少々ガッカリした。でも、何度もいうようだが行政がからむ過剰な設備の温泉浴場が多い中、公衆浴場としての機能面を重視したシンプルなこの温泉施設は現実的な住民サービスとして好感が持てる。少々銭湯文化をスポイルしながらも歴史的な街の銭湯として市の肝いりでリニューアルした大正湯との両軸で運用する身の丈にあった八幡浜の公衆浴場への取り組みは、他の市町村のお手本となるに違いない。