クアテルメ宝泉坊  西予市城川町高野子46

営業時間:10:00〜22:00 休日はなし

 城川の市街を抜け、国道197号線沿いを南下すると国道沿いに売店やプール・テニスコート・ロッジ・食堂とともにこの宝泉坊の総合施設が見えてくる。天正の昔、矢傷を負った法師がここの霊泉で傷を癒し、そのまま村に残って人々を災難から救ったという伝説の残る温泉である。以来村人は法師のことを宝泉坊様と称して尊んだのである。今でも大樫の群落の中に宝泉坊様を祀った一宇の堂があり、そこからわき出る冷泉に感謝のお祭りをしているという。
 この城川の地は、南予アルプスや四万十川源流域の山々を登っていた頃、必ずといっていほど通っていた地である。この伝説の地に城川町によってこの伝説の冷泉にちなんだ総合レジャー施設宝泉坊温泉ができた。私も山登り後のの汗を流すことも何度かあったがここのところとんとご無沙汰していた。ところが、すでに十分いい設備のある宝泉坊温泉に平成の大合併バブルの頃(H17)その名もクアテルメ宝泉坊というさらに大規模な温泉施設ができたと聞いて久しぶりに訪れることになった。
 R197を南下していくともとの宝泉坊のすぐ下に写真のような目立つ温泉施設ができていた。側壁には石版を貼った北欧風?の平屋の大きな建物で駐車場も広い。靴をロッカーに入れて昔の2倍の湯銭で入浴券を買って、正面のカウンターに渡すと脱衣場のロッカーのキーを渡される。左手の廊下をどんどん行くと男湯ののれんがかかった入口がある。ちょっと入って右手に行くと広い脱衣場がある。それは温泉の脱衣場ではなく、利用料1200円もする多機能温泉プール(バルネオプール)のものである。これがここの目玉のようだが、だれが日常的に利用するのだろうか。ちゃんとしたマーケティングのもとに作られたものかは疑わしい施設であると感じた。

 温泉の脱衣場はそれほど広くはなく、洗面所も兼用の機能的なものである。早速浴場に入っていくが、やたら安っぽい張り紙が多くてうんざりする。しかし、中に入ると雰囲気は一変した。浴場の床と側壁の下部は青石の石版が敷き詰めてあり、天井と上部の側壁は板張りで全体的に落ち着いた雰囲気である。浴槽の縁も木材が使われており温かい雰囲気である。天井には明かり取り兼蒸気抜きが大きくとってあり照明も控えめなデザインでいい感じである。ただ、16ほどある洗い場に一つ一つある照明はもったいない感じだが..。奥に森下仁丹の生薬風呂:薬仁湯の浴槽がある。露天風呂も適度な広さであるが展望はほとんど無い。
 サウナには今時珍しく敷物がないと思ったが、入口の横を見るとプールのビート板のようなサウナクッションと氷の入ったアイスボックスが置いてあった。

 入浴が終わり廊下に出る。ここの廊下には右の写真のような休憩スペースがあって冷水のサービスもある。そこで持ってきた弁当をいただきながらふと外を見ると、隣接して整骨院があるのに気づく。廊下の奥にはトレーニングルームがありさらに奥にはロッジに繋がる通路があるようだ。
 そしてフロントにキーを返し休憩室へ行ってみた。小さなキッズルームと各机に使えないモニターのあるリクライニングシートが並んだ休憩室とその横に軽食コーナーがある。一通り見てみての感想は、温水プールが必要ならそれだけ作って温泉は古い浴場だけでいいということだ。

 以下は、H8夏とH10頃に訪れた旧宝泉坊温泉の記録である。

 当時の建物は今もクアテルメのすぐ上にそのまま残っている。当時からここは高川公民館も兼ねている施設だった。併設した宿泊施設、そしてすぐ下の渓流とスポーツ施設など、どの世代にも親しめる機能的な施設であった。今でも土産物屋や公民館として活用されているようだ。
 正面の入口から入り、受付で250円を支払う。そのまま廊下を奥に進み、突き当たりを下ると浴場になる。二つの浴場は一方は菖蒲の湯、もう一方をコスモスの湯という。これは男湯女湯で交代するらしく運良く両方の浴場に入ることができた。
 浴場の名前は写真を見ると分かると思うが、側壁のタイルのデザインに由来する。いろいろな浴場を見てきたが私はこれほど風情のあるタイル絵に出会ったことがなかったので息をのんだ。これは有田焼のタイル絵だけのよさではなく、川石を積んでつくった石組みとのベストマッチングのなせる技である。なめらかな赤色チャートで押し出すように組まれた岩の間々から力強く伸びやかに咲きそろう菖蒲、かたや控えめながらごつごつした岩の横に優しくいたわるように咲きそろう秋桜、春と秋の季節の妙を見事に表した名作中の名作の浴槽である。周りの色彩や床の御影石、浴槽の縁の色もこの情景を邪魔することなくまとまっている。実際、多くの老人がこの浴場を利用しているようであった。地元の人に使ってもらうには銭湯料金以下であることが大事である。
 同窓会できたときには、この静かな温泉宿(繰り出すところは他にない)で語り明かして楽しい一夜を過ごした。そして思うのは、新しくクアテルメ宝泉坊という施設を造る必要があったのだろうかということである。平成の大合併のころは合併特例債を当て込んでか合併する市町村は競って箱物建築を推進した。しかし、西予市のように4つもの似たような温泉浴場施設を抱え込んだ市は他にない。どれもいい味わいを持つ温泉浴場ではあるが、設備超過の感は否めない。特例債の期限後に一斉に市のお荷物施設になるのは目に見えている。結果としてどのようにリストラされるのかが心配である。私は旧宝泉坊温泉程度の設備がR197の交通量や城川の経済圏を考えた場合は適切な設備ではないかと思う。さらにせっかくの秋桜の湯と菖蒲の湯が利用できなくなるのはあまりに忍びない。