ます靴を脱ぎ、自動販売機でチケットを買い、靴箱のカギを持ってフロントへいくと、そのカギとチケットと交換で脱衣ロッカーのカギを渡してくれる。私はロッカーに靴を入れていなかったので、再び脱靴場に戻ることとなった。
定期的に男湯と女湯は入れ替わるが、その日は右が男湯であった。脱衣場はこぎれいで、床も椅子も籐で、スチールロッカーはいただけないが、赤ちゃん用のベットがあったり、無料のドライヤー、整髪剤などの細かいサービスが考えられている。脱衣場の中には冷風室という冷房のよくきいた部屋があり、湯冷めを防ぐためにはよいと書いてある。このような部屋はいままでどの温泉浴場にもなかった。
浴室は、最近の一般的な温泉浴場の造りである。ここの床はタイルだが、女湯はブロック場の石らしい。浴槽には赤い流紋岩のような石が使われている。主浴槽の傍らには定番のバイブラの他に、白爆湯という微小気泡湯がある。この白爆湯は90cmもの深さがあるので、直接入れないように鎖がかかっている。
露天風呂の横には打たせ湯が2本ある。床は石のパターンのモルタルの直打ちである。フットマッサージ用のパネルも埋め込まれている。正面の階段状の庭には数個の大きな流紋岩が並べられ、椰子類やツワブキなどが植えられているが、コンセプトがはっきりせず、落ち着かない空間となっている。
この温泉の中で最も興味深いのは、低温サウナである。一列に並んだサウナ室の座席はゆったり6人が座れるようになっている。座った人の前と後ろには熱源がある。6人分6対もある。気温は50度程度で、熱源はやぐらごたつと同様のもので、さほど高熱にはならず、さわれるほどである。窓も広く開放的であり、効能書きのように十分な発刊効果があるなら老人や子どもでも安全なサウナであろう。世界初の試みと書いてあり凝ったサウナではあるが、テレビのある高温サウナに対してあまり人気がなく、結局私がいる間に入ったのは私だけであった。高温サウナは入り口前にもガラス張りの部屋があり、タオルかけも用意されているが、もちろんだれも使用していない。途中に入ってきたメンテナンスの作業員は、おそらくフロントと兼ねているのか、白シャツに黒のズボンをまくり上げていた。
「湯快亭」という食堂は、なかなか暖かそうな雰囲気がある。休憩室などは一般的なである。開業からだいぶたっているが、客はかなりいるようである。温泉浴場の主流は、試行錯誤の結果、ハイエイジの日本人のアメニティーに訴えかける方向に向いている。この温泉浴場は、それと違った方向を目指しているようだ。
しかしその後、しばらくして休業してしまった。そのうち営業している聞いたので行ってみた。「トロン温泉」の名が消え健康ランドとしての再開のようだ。特に特徴のない田舎の温泉浴場になっていたがそれはそれでいいのだろう。左の配置図は新しいオズの湯のものである。白爆湯という超微小気泡湯が売りとなり、石風呂とタイル風呂という2つのタイプがあるとパンフレットには書いてあるが、実際には浴槽の縁の材質や形が違うというだけのようである。ただここの湯銭は、サウナを利用しない場合には360円という銭湯より安い金額になる。そのためか客足が途切れることはないようだった。肱北地域の銭湯として機能しているのかもしれない。