八幡浜の魚市場から白浜方面に北上していくと、白浜バス停のところに小さな白浜温泉の看板がみえる。入り口に「さわやかサウナ」の看板がある。港と市場に近いからか元気な客が続々と自転車で乗り付けてくる。入り口は道路よりも少し高いところにある。銭湯の前には薪がうずたかく詰まれており、隣の小屋のようなところにも、燃料の薪やおがくずがたくさんはいっている。このような燃料をつかっているため、先の細くなったコンクリート煙突からは柔らかな煙がたなびいている。
おとなしそうな番台のおばさんに湯銭を渡して入る。脱衣場は狭く、サウナも増設しているので、さらに狭く感じる。マナーが悪いのかおおざっぱなのか元気な客がふきもせずに裸で脱衣場で休息したりテレビを見たりしているので、椅子はぬれているし脱衣場はいつも混雑している。浴室は中央にある丸い浴槽にバブルジェットがついている。右奥の電気風呂には、左奥と同様に薄い湯ノ花が入っているので心なしか電気が強いように感じる。本来はそれだけだったのだろうが、サウナをつけた関係で二つの奥の湯船をつなぐ形で中央奥に水風呂を増設したようなつくりになっている。また、真ん中の湯船に送る熱湯は中央しきりのところから湯船の湯だし口まで金属パイプで空中を介して接続されている。人がさわりそうな部分には竹でシールドがしてある。天井と壁の一部はライトブルーでつい最近ペンキが塗られたようで明るい。しきりの上に蒸気抜きがある。
大きな浴室も狭いが、元気な客でにぎやかであり、他の銭湯では入る人の少ない水風呂でさえ常に誰かが入っている。また、ここの客のほとんどは働き盛りの男であった。サウナは3人掛けだが、比較的広く木製の椅子が2つあるので無理すれば5人座れる。砂時計は10分である。本来銭湯とは、このようなにぎわうとともに広い世代の社交場出会ったのだろうと思った。
平成25年、八幡浜の港湾地区は道路を拡張し、グランドフジを中心としたショッピングモールができた。白浜温泉は道路沿いにあったため拡張工事に伴う立ち退きの対象にされた。新たに銭湯を建て直すことはできないので、最後までがんばったが、へ伊勢25年11月、ついに廃業となった。右の写真は取り壊された後の白浜温泉跡地である。ここは広い道路になり、八幡浜には温泉浴場もないから公衆浴場は大正湯だけとなった。