いよ温泉  伊予市灘町16

営業時間:9:00〜22:30 無休 湯銭:450円

 愛媛県の商工業の拠点である伊予市が栄えた時代には、多くの労働者が街を闊歩し伊予市の銭湯も栄えた。しかし平成になったころからこの地域は大きく変化しだした。車社会となり住宅地は郊外に展開していき、私が銭湯を訪問しだした平成10年には伊予市の中心商店街でさえ人通りはまばらになってしまった。山好きの私には潮湯を利用するくらいでほとんど感心が遠のいていた。その間に伊予市の銭湯はどんどん廃業してなくなっていた。さらに足の遠のく伊予市だったが、ふと「伊予温泉」という聞いたこともない単語の看板を見つけたのだ。気になりつつもなかなか仕事が忙しくての行くことができなかった。そして平成26年、いよいよ伊予温泉に行ってみることにした。  ホテルの温泉を使わせるだけと思っていたが、ここはそうではなかった。写真のように公衆浴場は別棟を建設していて、ある意味伊予の新しい銭湯として機能(ちょっぴり湯銭が高い)している。地下1000mから汲みだしたpH8.0の低張性弱アルカリ性低温泉(赤みがかっている「伊予の黄金湯」という?)多くの効能と高い温浴効果を持っている?らしい。脱衣場の掲示物によると、これを加温し循環洗浄(+塩素系消毒)して使っている。そもそも天然温泉至上主義性が強い愛媛県なのだが、単純泉については温浴効果以外の効能についてほとんど期待できないというのが私の説である。伊予市に特に多かった潮湯の浴槽が一つあれば、その効能を体感している伊予市の高齢者に徐々に指示される公衆浴場になると思うのだが..。

 2Fにある浴室へは狭い階段を上って(エレベ−ターはない)行く。廊下や階段には石鎚山を中心とした山岳絵画や写真が所狭しと飾られている。脱衣場には鍵付きのロッカーが30ほど有り、小さなテレビがある。
 浴室は御影石張りの床で二つの浴槽がある正面の白湯(写真)と右奥の露天風呂である。露天風呂は写真にも少し写っているが三面壁に囲まれ天井もあり窓が無いというだけの浴槽である。石版が敷き詰めてあって少しは高級感があるが、外の景色は少しの植木と垣根越しに見える隣の家とちょっぴりの空。無理に露天風呂にしなくても..という感じだが全体的には落ち着いた感じの明るい浴室である。

 入浴後休憩室に行ってみた。休憩室は1Fの奥にある。和室になっていて結構広い。ここにも山や自然の写真や絵が掲示してある。小さい庭もあるがバックがブロック塀、黒黄の電柱の支持線まであってさらにその外は民家なのでちょっと無理している感じがある。ちゃんとした喫煙ルームもあって狭いながらもまとまっているいかにも銭湯といった家庭的な雰囲気のある温泉浴場であった。

 この日は久しぶりに伊予市街を回ってみたが、五色浜温泉以外の銭湯は廃業という寂しいものであった。商店街では商工会が様々な催し物をしていたが、今後どうなっていくのだろうか。湯銭も銭湯料金+αなので手頃な料金といえるし立地も良いのでそこそこ利用者はいると思う。住宅は郊外に移り、伊予市に用事のある者も松山が近く車や電車の便もあるのでホテルの経営も大変だろう。でも、街の公衆浴場としてこの地域の人々に広々とした浴室をずっと提供していってほしい。