泉湯  (伊予市中山町丑358泉 廃業)


 この銭湯は、おおよそどの辺にあるのかわかりながらなかなか見つからなかった。というのも、山のくぼみの少し奥まったところにあり、煙突も確認しにくかったからである。夜探すとその雰囲気ですぐ見つけることができた。泉町三丁目の前田酒店の横の路地の上に灯る裸電球がこの銭湯の営業を表している。
 この路地をまっすぐに20mほど入ると、この銭湯の側面につき当たる。裸電球の光に照らされて営業案内が見える。近づいてよく見ると、日曜休日、営業時間4時〜10時と書いてあるのがかろうじて見える。左に回り込むと、朱字で泉湯、男湯と書かれた入り口が見えた。入ると番台には誰もいない。右に2畳の天井の低い畳部屋があるが、灯りもなく薄暗い。右のロッカーは、古い漢数字で大きく書かれた十六までのロッカーがある。そのロッカーの中央下には鍵穴が開いている。鍵をはずす道具は番台の上に置いてある。上を見ると、宮岡製麺の古いイメージの広告ポスターに目が止まった。見回すと平成元年の県の告示(250円)が張ってあった。番台に300円を置いて、プラスチックカゴをとり、畳部屋の横のベンチで服を脱いでいると、前の戸が開いておばあさんが、入ってきた。50円のお釣りをもらって、ドアを引いて広い浴室にはいる。
普通湯は御影石で囲われた、地方湯としては大きな湯舟である。奥に形の良い石を組み合わせた湯出し口があり、勢いよく音を立てて湯が落ちていた。浴槽の床は薄茶色を基調とした丸石風のタイルに緑の紅葉タイルが映えている。他の色のタイルで補修した後もある。両横のカランは湯は旧式の宝印の赤カランで、水は一般の蛇口である。入り口近くの両横に立ちシャワーがあるが、一方は破損、もう一方はさび付いて動かなかった。壁は緑のタイルで、壁絵などの装飾はない。目の高さ以上はモルタルで、小さな窓が二つある。中央に鉄の柱があり、天井は、それをはさんで手前は、女湯をまたいだ大きな板張りの蒸気抜きがある。奥はベニアばりだが、中央に小さな蒸気抜きがある。
 さて、この銭湯も平成8年9月をもって廃業した。内子町の銭湯もほぼ時を同じくして廃業となり、56号線沿いの街の銭湯は、大洲までなくなってしまった。ここも、それ以後訪れていないのだが、今はどのようになっているのだろうか。