五色浜温泉  伊予市灘町353 廃業

 営業時間:15:00〜22:00 休日は土曜日

 この五色浜温泉は、瀬戸内の銭湯の特徴である潮湯の残る銭湯である。最近改築されたらしく、見た目に新しい白い建物である。駐車場には五台ほどしかおけないが、周りをちょっとさがせば駐車できるスペースは多い。
 頭上にTV、その上にこじんまりとした稲荷神社を祭った番台で湯銭を払って脱衣場にはいる。番台には眼光鋭い若奥さんと某ハードボイルド作家に似た主人のどちらかが座っている。脱衣場は、面積は特に狭いというわけではないのだが、ロッカーがどんと中央にあるので見晴らしも悪く、窮屈である。天井から下がっているファンは、この銭湯が新設したものでないことを示している。また、ロッカーは古い木製のものだが、戸に大きく書かれた番号の配置がバラバラである。よく見ると同じ番号が2つあったりもする。さらによく見ると、「女」と書いたロッカーもある。ということから、ここを改築するときにまだ使えるロッカーを男の更衣室へ集め、女のロッカーは新品にしたと考えるのだがどうだろうか。トイレは手動式のパッコントイレである。いたるところに観葉植物や花のよく管理された鉢植えが配置されている。
 ポトスの鉢が多く置かれた浴室内には、様々な浴槽がある。カーテンのついた打たせ湯、海水と同程度の塩分濃度の潮湯、そしてミストサウナなどである。打たせ湯は利用者の割に騒音の発生源なので、スイッチ色にしてどうだろうかと思う。ミストサウナとは、天井に12個ほどある小さなスプリンクラーから霧状の高温の湯が噴霧されている湿式のサウナである。気温はそれほど高くなく、サウナとしての効果も定かではない。実際、二度訪れて私以外にここに入ったものは一人もいなかった。客は多く、浴室に15人ほどがひしめき合っている。バラエティーのある銭湯なのだが、ほとんどの人が白湯以外は積極的に使ってはいないようだ。男湯は海に面しているので、シャワーのある一角の窓からは、伊予漁港の風景がよく見える。洗い場では固定シャワーだが、入り口の立ちシャワーの湯は熱湯なので気をつけよう。
 その五色浜に歩いて行ってみた。途中に、ここに港を築いた大洲藩の井戸がある。その奥に神社があるが、ここはもともと稲荷神社であったものが、今は住吉様と天神様が祭られている。この銭湯の屋号の由来にもなっている五色浜とは、その神社の裏の浜のことで、平家の美しい姫が身を投じて五色の石になったという伝説が残る。大洲藩の港ということは、坂本龍馬が借り受けて運用した「いろは丸」(紀州の船に衝突して沈没、龍馬は国際法を持ち出して紀州藩から膨大な賠償金をせしめた)ゆかりの地である。しかし、今は日本の観光地化したどの海岸もそうであるように、お世辞にも名前のようなきれいな浜とは言えない状態である。平成25年ここから三崎港までサイクリングロードとして青ラインが引かれた。(最終入浴 H10.2.08)

 この訪問より10年後あたり、港周辺の整備計画が進むとほとんどの銭湯が急速に姿を消してしまった。愛媛県の海辺の銭湯では基本的に潮湯の浴槽があったが、東・中予では最後に残った貴重な銭湯であった。しかし、世の流れには逆らえず平成28年度末をもって営業を取りやめ、市部の銭湯は四国中央市に続いて伊予市も絶滅ということになってしまった。上の写真はH2年、下の写真はH10年、五色浜に向かう港沿いの道から見た五色浜温泉である。