汐湯 (伊予市湊町 廃業)
営業時間:14:30〜22:00,休日は日曜日
伊予の郡中駅から西に向かい商店街をすぎて一直線に進むと、やがて伊予港のはずれに出る。右手の小さな橋を渡るとすぐ、先の朽ちて黒くなった薄緑色の煙突のある汐湯が見える。車なら橋を渡って左折すれば、数台止めれる海岸に出る。銭湯の前にも2台くらい止めれるスペースはあるが駐輪場と見るのが妥当だろう。夜に来ると、ほとんど明かりのないところに、蛍光灯の看板がよく目立つ。入ると土間の廊下になっていて、さらに戸を開けてのれんをくぐる。番台は狭く、飲料の入っている冷蔵庫に向かい合って小さなテレビがある。広い脱衣場の左手には木の脱衣ロッカーがある。奥には、お稲荷さんの立派な神棚がある。
脱衣をすませると浴室にはいる。片方の戸はダミーになっている。脱衣場にも浴室にも湯気抜きがある。ゆったりした浴室には4つの浴槽があり、目立つのはやはり奥の岩風呂だろう。何の表示もないがこの湯は潮湯なのである。それも海水と同じ塩分濃度のものである。この湯に浸かると、浸透圧の関係だろうか、ただの湯と違って傷口などにはピリッとするが、湯自体は柔らかく体を包んでくれるような気がする。直ぐ上にはタイル壁に窓のような部分があって、今は化粧タイルで埋められているが昔は何があったのだろう。もしかすると水槽でもあったのかもしれない。その枠の上に灯台の見える海の小さなタイル絵がある。その絵のヨットだけは斜めに切ったタイルが埋めてある。薬湯はバスクリンのような緑色のものであった。中央の浴槽はそんなに大きくなく、その分、洗い場がゆったりしている。しきり壁の方の洗い場にはシャワーが引いてある。男客は数名来ていたが、無口な人が多く必ず潮湯には使っていた。それに対して女湯はにぎやかな客が来ていた。
銭湯としてゆとりの感じられる作りで私はたいそうここが気に入った。なんといっても潮湯は出た後でも体が芯から暖まって心地がよい。私は70円で買ったひまわりの瓶入り甘酒をラッパ飲みした。