この浴場を出るとき、ふと見るとシャンプーやボディーソープなどとともに「はかたの塩」が売り物として展示してあった。「たしか浴場で塩を使うな!」という表示があったような気がするのだが、とするといったいこの塩は何なんだろうという疑問が残る。私は何度かこの浴場に来たが、塩を使っている客はまだ見たことがない。
さて、ここの施設の最も特徴的なところは、愛媛県で2つだけ(もう一つは松山劇場)ある常設の大衆演芸劇場があることである。温泉入浴とのセット価格は1000円らしいが、時間の許す人はぜひよってみよう。また、宿泊すれば、入浴時間も5時〜24時とのび、他のサービスもゆったりと受けられるであろう。(H11.9.23)
さて、以下は平成6年に訪れたときの旧鷹の子温泉のレポートである。
松山の中心から外れていること、近くにユートピア温泉や伊予鉄健康ランドなどの新しい温泉施設ができたことで、かつての繁栄は感じられない。今の新しい鷹の子温泉のレポートの前にまずは、旧もやが立ちこめる早朝に行ったので特にそう感じたのかもしれない。朝風呂は、奥にある通常の入り口ではなく、中央の入り口から入って狭い通路を通って番台に向かうことになる。280円を番台のおばちゃんの前に置く。
どんな大きな浴場かと期待してはいると、普通の銭湯みたいな脱衣場である。さらに浴室は、小さく、朝風呂を楽しむおじいちゃんでごった返している。広さも普通の銭湯と対してかわりがなく、ただ側壁のけばけばしいタイルや、奥の壁一面に描いてあるバランスの悪いごてごてした松山城によって、ここは少し違う場なんだと感じさせるのである。湯は温泉らしいぬるぬる感がある。脱衣場にはサウナの説明があるが、どこを探してもサウナらしいものはなかった。午前6時というのに、さばけたおじいちゃんが、脱衣場にも隣のロビーのようなところにもたむろして、よたっている。「兄ちゃん、ええ体してるのお。」と服を着ている背から声をかけられて、我れながら返答に困ってしまった。「さあ今日も1日生きるぞ。」というふうに、この温泉の出口から自転車や乳母車を押して散っていくおじいちゃんの姿を見て、1つ1つはごてごてして品のないように思えるこの温泉の良さが何かわかるような気がしてきた。
久しぶりに行くと名前がマンガ字で「たかのこの湯」、ホテルは「たかのこのホテル」になっていた。どうも一端閉鎖されて、経営者が変わったらしい。弘法大師ゆかりの名泉といえども生き残りは大変だ。
鷹ノ子温泉は石手寺への遍路道沿いにあり、石手寺温泉・宿泊・演劇などなどがある総合娯楽施設として栄えたようである。平成6年に温泉もホテルも宴会場も新しく建て変わった(右の写真)が、どうも時代に合ってなかったらしく平成19年に経営難で廃業、全てが取り壊されてしばらく更地状態になっていたらしい。そして巨大アワビ温泉(上の写真)とホテルが建設され、平成24年11月から営業を再開した。様々な特徴ある温泉がある東道後で再起を図るのだが、今のトレンドは大型観光バスでの団体旅行ではなく、車を使った家族ベースのモール中心の利用である。11号線から広い道で繋がっていればいいのだが...。