久米之癒      (松山市南久米町325-1)

営業時間:11:00〜09:00 休日はないようだ

 伊予鉄駅のすぐ南に東道後温泉「ユートピア温泉」がある。ここは私が銭湯が好きなのを聞いたT氏が、父を連れてよく行くというので訪れたのである。イルカをマスコットにしたこの温泉は、外見は悲惨なものである。クリーム色の壁にオレンジ系の瓦の家型の安っぽい感じの建物で、その角の線には電球が這わせてあって、夜はそれを点灯させ、さらに安っぽさを強調している。隣接して時計台風のカラオケ室と屋台風の軽食室があって、そのアンバランスにもがっかりさせられる。中に入って見ると、ロビーも..西洋風のロビーをイメージしているのだけど、きんきらの明るさに天井からは趣味の悪いファンがぶら下がり、正面の目立つところにUFOキャッチャーと等身大のセイラームーンのゲーム機がドンと居座っている。

 しかし、その恥ずかしくなるような雰囲気もロビーまでで、脱衣場から浴室にかけてはがらりと雰囲気が変わる。脱衣場は必ずしもすばらしいとはいえないが籐敷きの床、備品も決して高価なものではなく、庶民的な地味なもので安心感がある。
 そして浴室は、できた古さから考えると充実している。ほとんどだれも入らないミストサウナは別にして、バブルジェットも気泡湯も岩風呂もそれぞれゆったりしている。何よりも広い桧風呂につかっていると、芯から暖まり心が広くなっていくような気がしてくる。サウナもゆったりしていて、その後につかる桧の水風呂は格別である。洗い場もちょうどよく打たせ湯も十分楽しめる。それぞれは他の温泉浴場と対して変わらないのだが、なぜか心のなごむ浴場である。設計者の気負いが感じられない、あるべきものがあるといった適度な安心感と緊張感があるからだろうか。私は深夜に訪れることが多いのだが、多くの人が御影石の床に横になっている。桶が小振りなので、よい枕になるので、酔いがすぎるときは私もここで眠り込むことがある。
 ここ温泉は、東道後温泉といって、今では本家の道後温泉よりも泉質、湯量ともに優れているという。特にこのユートピアは、良い泉源を確保しているらしい。その証拠にこの俗悪な外見と地理的にも不利であるにも関わらず、ここの広い駐車場は付近の地元の客で常にいっぱいである。深夜でも客は多く、この一応禁止の入れ墨の方々も訪れてくる。私も単に温泉に浸かりたいときにはこのユートピアを利用する。もちろんこのような良さを維持できているのは、経営方針や従業員の姿勢や態度のたまものでもある。ちなみに岐阜県R21沿いでもイルカのマークのユートピア温泉を見かけたが、関係あるのだろうか。

 この温泉浴場のまわりの下水路からは冬になると別府のような湯気が上がっている。主要道路から奥まったところにあってもその人気は絶大で、湯も汚れてくるので日曜日の夕方は行かないようにしていた。経営も隣に軽食屋があったりスナックになったりその都度変わっていった。そしてついに経営者が変わったのか名前も変わってしまった。それが「久米之癒」というものだったが、その前に他の名前だったような気もする。「ユートピア」はあまりにも軽いが、「久米之癒」とはいかにも青い名前である。中の経営もなにやら力のこもったものとなった。左の昔のユートピア温泉のときの写真で分かるように屋根のデザインに似合わない感じがする。しかし、脱衣場や浴室などはほとんど昔と変わっていない。以前、深夜に行って疲れてつい横になっていたら、「寝ないでください。」とお兄ちゃんに注意されてしまった。休憩室が狭いので仕方がないとは思うが、ゆっくり休むことができる温泉浴場が多くなった昨今、ちょっと寂しさを覚えた。なお、左の写真はユートピア温泉と呼ばれていたころのものである。