道後温泉本館 神之湯 (松山市 道後湯之町5-6)
営業時間 6:30〜23:00 無休
道後温泉本館は、日本で最も古い三千年湯として、全国的に有名な市営の公衆浴場である。明治27年からごてごてと建て増しされた本館の建物そのものも、国の重要文化財となっている。聖徳太子をはじめ夏目漱石、正岡子規などの著名な人の逸話も多いみたいだが、私はそんなことにはあまり興味がわかない。
私は、まだアーケードの閉まっている眠そうな商店街を通って、朝の道後温泉を訪ねた。正面右で購入したチケット(280円)を番台に渡して、50円タオル(石鹸付)を借り、籐のむしろが敷き詰められた、幅が2mほどの狭い廊下を脱衣場に向かう。奥には1ランク上の「霊(たま)之湯」もあるが、湯銭は2倍以上する。神之湯には、なぜかほぼ同じ大きさの浴室が東西に2つある。私は広い脱衣場で衣服を脱いで、まず東湯に入った。御影石張りの鈍重なつくりで湯舟の中央に漢詩の刻まれた大人ふたかかえほどある大きな石柱がある。そこから湯が出ており、老人が腕や腰にその湯を当てている。その石柱の上部には子供(少彦名かも)を抱いた大国主尊らしき彫刻がある。西湯もほとんど同じなのだが、大国主は玉をもっており、湯出口も2つある。朝なのでそれぞれ5人ぐらいしか入っていなかったが、この狭さなら週末の夕方にはさぞ混み合うのだろう。浴室内の壁には所々に小さな鳥の絵のあるタイルがあるだけの、あっさりした浴場の壁には、ただ「寝そべらないで下さい」との注意書きがあるだけである。
脱衣場では、みんなゆったりと語り合ったりお茶を飲んだりしている。2階席に行く者もいるが、どうも観光客らしき人が多いようである。暑いのでお茶台の横の戸も開けてしまっており通行人から丸見えである。便所は中庭を眺めながらずっと奥に入ったところにある。椿湯とともに道後の良き社交場としてさらににぎわっていくことだろう。