国道196号線で本町を北上し、路面電車の線路を越え、山越交差点を右折して200mも行くと用水路越しに、この銭湯のサウナの大きな看板が見える。車を数台止めるスペースがあるし、隣には喫茶店「さくら」もある。中にはいると縦長の古い靴箱がある。中ののれんをくぐって脱衣場に入ると目につくのが、かご入れである。そこには籐の四角い脱衣かごが数個入れてある。ここにも3人程度が座れるボックスサウナがあるので、脱衣場はせまく感じる。浴室は、壁はもちろんアーチ型の天井も薄緑色のアラベスク風のタイル張りである。左の奥には仕切られた大きなスペースがある。他の銭湯から考えると庭であったと思われるが、今はコンクリートがうたれ何もない。下に浄化槽があるみたいだが、せっかくのこの空間を何か利用できないものだろうか。右奥には細長い小さな浴槽があるが、ただの白湯のようだ。学生らしい2人が入っていたが、薄暗いので怪しい雰囲気がする。この浴槽の上には、アルプスに山小屋と湖のタイル絵がある。ここは場所がら大学生が多いので、おもしろい風呂の入り方が見られる。神経質にタオルをしっかり巻いてびくびくしながら体を洗っている者や、異常にごしごし体をこすっている者、数個のシャンプーやリンス類を並べてていねいに頭を洗っている者など、見ているだけでも退屈しなかった。
地理的に学生の利用が多かったと思われるこの銭湯も、ついに平成10年に廃業となり、建物も壊され、駐車場になってしまった。学生のころ愛湯していた方々も多いのではないだろうか。今の学生の住まいは小型のマンション形式が多くなり、うち風呂がついているのがあたり前になってきている。おそらくそのような生活様式の変化のあおりをにかぶってしまったのであろう。残念なことである。