カラフルなのれんをくぐって番台に湯銭を置く。広々とした番台の背にはシャンプーなどの豊富な入浴グッズが並べてある。脱靴場も広いが仕切りがあってその向こう側には全身マッサージと書いた寝式の古いマッサージ機がある。番台の上には、瀬戸物の狛犬の守る神鏡のある立派な神棚があり、雄郡神社のお札が立っている。またその神棚の左には、ワラを編んで作った船に乗っているものと素焼きの2体の恵比寿が陣取っている。入り口もそうだが、浴場への入り口も自動で閉まる半自動ドアであった。番台の前には太い柱があって、2度目に来たときには大型の薄型テレビが番台の反対側に設置してあった。番台から見えないことにあるが、よく見るとお客さんの下半身まで見えないようにがっちりした衝立も設置してあって、現代の恥ずかしがり屋?の客に配慮しているのだなあと思った。エアコンもあるが男女の脱衣場の仕切りの上には古風な三枚バネの送風ファンもぶら下がっているのがいいアクセントになっている。最初来たときは脱衣所の左奥に混み合う小さなサウナ(顔なじみが狭いながらもおもしろおかしく世間話を語り合っていたのが特に印象に残っている)があったが、それは撤去されていた。中央の台もがっちりしたもので、マッサージチェアやくつろぐための丸机もあって結構広く快適な空間になっている。
浴室も広々としており、タイル絵はないが床は淡色のグレイ、側壁はアクセントの入ったピンクタイルで明るい。湯舟は御影石で、底には青いタイルが張ってあって落ちついた色のアレンジである。中央の4つに仕切られた湯舟は底でつながっている。写真の向こうから湯口付の気泡風呂、御影石で電気風呂と強弱を刻んである左右の電気風呂、そして白湯の少し大きな浴槽である。
私が注目したのは他では見られない2段階の電気風呂である。「弱」は普通の電気風呂である。問題は「強」の方でこれがかなり強力なのである。最初来たときは指を入れるだけでも飛び上がるほどショックがあってかなりびっくりしてしたのである。私も歳をとってちょっと強い電気風呂の耐性もできてきたので、2度目に来たときはこの「強」への入湯挑戦が一つの楽しみであった。しかし、結果としては片腕を入れるのがやっとで、生命の危険を感じて全身をつけることは諦めた。私の胃には手術でちいさい金属片が組み込まれているので、問題はないか今度医者に確認をとってからだと思った。この「強」の電気風呂に入っている人を私は見たことはないが、かなりヘビーな電気風呂愛好家にしか活用できないという意味で銭湯通の意欲をそそるレアな浴槽である。なお、左奥には岩風呂風のバブルジェットマッサージ浴槽があってちゃんと補助の手すりもついている。
浴室の右奥にはサウナと水風呂がセットである。以前に来たときは浴室はスチームサウナ(壁はすべてタイル張りで、左に三人くらい座れる木のベンチ、右の5人くらいかけれるコンクリートのベンチがあった。木のベンチはその奥のアルミ板におおわれた水の循環する音が聞こえる熱源からのスチームの出口があって入口には50℃と書いてあった)だったが、2度目に来たときは100℃弱の普通のサウナになっていて内装も完全にリニューアルされていた。スピーカーからラジオの音や音楽が聞こえるのは前と同じで、大きな12分時計と温度計が設置してあった。以前の脱衣場にあったサウナは4人がやっと座れるほどの広さなのに満員だったがスチームサウナにはほとんど人が入っていなかったようなので、結果としてこのような運用になったのだろう。
十分に体を温めて銭湯を出る。挨拶の声を背に外に出てみると、私が普通車でヒヤヒヤしながらやっと曲がった細い路地からのシビアなクランクをクラウンが余裕で曲がって出て行くところであった。さすが馴染みの客は、曲がるタイミングも見事である。