あけぼの温泉 (松山市 道後今市10-25,廃業)

営業時間 15:00〜22:30 休日は6のつく日

道後湯之町から西に向かう県道の南を、平行に流れる用水路沿いに味のある通りがある。その通りを、湯之町から数百メートルくらい西に歩くと、左手に「あけぼの湯」の小さな白い明かりが見えてくる。その入り口には、屋号を書いた木札とのれんが一枚かかっている。中にはいると番台の年輩の男性が、イヤホンを耳に当ててテレビを見ていた。脱衣場は特に特徴のあるものではない。ただ2人が入れる程度の小さいボックスサウナの出入りは、浴室の入り口のドアとサウナのドアが干渉して使いにくかった。
 クリーム色の壁でおおわれた浴室にはいると、正面に、アルプスをのぞむ水車小屋と湖のタイル絵がある。背伸びしてみると、女湯は、ピンク色の壁に朝焼けの湖に古城と白鳥が描かれているようだ。薬湯には、打たせ湯としてつかっていた形跡がある。入り口よりの窓はサッシになっていたが、奥側の窓は木枠である。天井は、板張りで、中央に大きな蒸気ぬきがある。中央の湯舟の奥には石を積んでつくった湯出し口があるが、今は湯は出ていない。ただ、そこに柳と椿がさしてあった。このような遊び心のある工夫だけでも、銭湯の雰囲気が変わるものである。客もそこそこ入っている。その一人の不動明王の立派な入れ墨の背に見とれてしまった。

 平成10年11月、道後に泊まることがあったので、久しぶりに「あけぼの温泉」に行くことにした。しかし、さがしてもさがしてもあの素朴な建物が見つからない。小一時間歩いて、この場所だと確信するところには真新しい住宅が建っていることに気づいた。道後温泉はともかく、もうこの辺りには、街の銭湯は1軒もなくなってしまった。