北条温泉  (松山市辻1291 廃業)

営業時間:15:30〜22:30 休日は月曜日

 北条市街を南下すると、消防署の少し手前に「焼肉の風早」の看板が見えてくる。その南隣にある、「天然のしお湯」の青い看板の奥にこの銭湯がある。正面に石積みのソテツがあり、入り口の上の壁には大きく北条温泉と書かれている。隣と前に焼肉屋と共用の15台ほど置ける駐車場があり、そこから奥をみると、闇の中でも大きなモルタルの煙突が見えている。この煙突は10月16〜17日で改修するとあるので、さらに立派になるのかもしれない。
 入ると、ベレー帽をかぶった眼光の鋭い老人が番台で迎えてくれた。張り紙や備品が、ごちゃごちゃとある生き生きした脱衣場である。たくさんのカレンダー、天井近くの壁にはアイヌのものをはじめさまざまな観光ポスターや布(のれん)がはってある。ロッカーは右は小さい一般のロッカーだが、左は縦長の大きなロッカーである。テレビはしきりの上と番台のためのものがそれぞれ1台あって、別の番組を放映していた。青いススキ(?)がざっくりとビールジョッキにさしてあったり、タチバナモドキやココヤシなども置いてある。浴室への入り口には、田村隆一の詩、サウナの前には、「ぼけたらあかん、長生きしなはれ」が張られており、いる人は番台に申し出るように書いてあった。サウナに入りたかったので、100円を番台に払い、緑のバスタオルをとった。3人がやっと座れるほどの広さで、気温は約90℃であった。
 浴室の中央には、手前半分が気泡湯の湯舟がある。右奥にはゲート状の構えのある浴槽(バブルジェット)がある。その上からポトスやモンステラをたらし、ジャングル風呂という札がかかっていた。その奥の壁には、海上に突き出た夫婦岩のタイル絵がある。帆掛け船がちょっと不自然だが、島の上の雲などはタイル絵としてはすばらしい表現をしている。左奥の潮湯は、「天然の」とある通り、熱湯と冷水の蛇口はともに海水が出ていた。他の浴槽も湯をどんどんあふれさせており、高縄山からの豊かな水と、余裕のある強力な熱源を持つ銭湯であることがわかる。カランは新旧いろいろあるし、シャワーも旧式のものを工夫して大切につかっている。ステンレスの手すりも各所に取り付けており、心配りが行き届いている。庭には池はないが、噴水の後はある。特に細やかに整備しているとはいえないが、中央に16代大統領リンカーンの横顔という木札のある大きな石がどんと置いてある。天井は中央の低いM字型で、側壁上から湯気を逃がす構造だが、その窓はシャッターが閉まっている。各浴室の上にある小さな蒸気抜きが開いている。