東予市の北を流れる大明神川をまっすぐに登っていくと、丸石垣の美しい田園風景が広がる。さらに上流に登っていくと、平成6年4月にできた真新しいこの温泉館にたどり着く。同時期に公園やキャンプ場も作られ、東予市民の憩いの場として整備されている。温泉館の駐車場も余裕がある。
入るとフロントで人の良さそうなおばさんが迎えてくれた。しかし、「大雨で源泉が壊れたので、今は水道水をわかしています。」と、提示されている。ちょっとがっかりだが仕方がない。ロビーには木の火鉢風の机があり、その天井からは凝った照明が下がっている。休憩和室の前を通り、奥の浴室に向かう。
浴室は「岩の湯」「木の湯」があり、その間に効能書きがある。それによると、この温泉の泉質は、低張性アルカリ性冷鉱泉(アルカリ性単純泉)で、適応症は、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、慢性消化器症、冷え性、疲労回復などである。脱衣場は思ったより広く、中程に籐のかごの置いてある台がある。ただ灰色のスチールロッカーの並ぶような味気ない脱衣場にはなっていないのがよい。
岩の湯の浴室に入る。床は結晶の大きな御影石が敷き詰めてある。この石は適度な大きさで丸みがあるので、暖かみがある。側壁は全面御影石であるが、この丸みのある石が下部に山を形取るように埋め込まれている。そして石の色も微妙に変えてあり、なかなか手の込んだ、そして趣のある側壁となっている。7つある洗い場の様子も良い。浴槽の縁は黒御影で、底にもこの丸みのある御影石が使われているが、水面のゆれを通して見ると、今一歩である。もっと細かい目の花崗岩を使うべきであろう。それはいいとしても、この浴室には、ずっこけるものがある。普通のホーロー風呂おけが水風呂としてドンと置いてあるのだ。周りの落ち着いた石の浴室にはあまりにも間が抜けている。サウナがあるのに、水風呂を設計し忘れていたの?と言いたくなる。壁の一面は総ガラス張りで下の公園の景色がよく見える。
側壁上部と浴槽が木でできている木肌風呂というのもある。私は檜風呂をこよなく愛する人なので、この時は女風呂になっていたので入れないのが残念であった。奥には家族風呂もある。廊下には雪の温泉館、温泉の由来、烏帽子岩の話などが貼ってあった。
温泉のすぐ前に、食堂があったので行ってみた。入り口には、人が通ると点灯するライトが設置されている。びっくりするし、なんか悪いことをしたような気になる。中には人の良さそうな兄ちゃんが一人いた。こんにゃくが名物らしいが、メニューはうどん、そば、おでんしかない。私は山菜そばを食べた。
入浴客は顔見知りらしくいろいろな話をしていた。そろそろ直っているかと思ってきたのに源泉がまだ修理できていないこと、それを直せないのは市が金がないからだとか、台風18号被害を話の種にして楽しそうに話していた。(H11.10)