新光温泉   新居浜市 東雲2-6-5 廃業

営業時間:?  休日は金曜日

 新居浜市役所から県道13号(平和通り)を東に進むとやがて国領川を越え東雲町に入る。さらに東進して、東高校入り口のバス停のそばの歩道橋の登り口の正面にこの銭湯があった。平成27年、この銭湯のあった地点に来てみるともうこのおっとりした銭湯の姿はなかった。以後は平成10年5月にこの銭湯を訪れたときの訪問記である。

 外見は商店のようでもあるが店頭を覗いてみても何の店かわからない。銭湯への入り口は、建物の左にある駐輪場の前にある。コンクリート製の丸煙突は、平成9年に見たときは西面が少し崩れかけていたが、このときは鉄のたががはめられ修理されていた。
 自転車置き場には1台の自転車もなく営業しているのか心配だったが、入口を覗くと番台に気のよさそうな老人が座って、おばあさんと話をしていた。一般の銭湯と違いフロントのような番台で湯銭を払い、更衣室に行くという温泉浴場のような形式である。従って、番台からは更衣室や浴室は見えない。番台はゆったりしておりいろいろな物が置いてあるが、後ろの黒い大時計が目を引く。番台のおじさんは外の雨の様子を聞いてきた。どちらが男湯なのかわからないので聞くと「どちらでもいいよ」と言われたのでとまどっていると、おばあさんが「左よ」と言った。冗談とも思えないので右の女湯には人の気配がなくもう入りにくる人もいないから、おじいさんはそう言ったのかもしれない。
 脱衣場はソファーが3つとロッカーと大きな鏡くらいで、きれいに片づけられており、あまりにも落ち着いた雰囲気なので息をのんだ。おじいさんが一人着衣中だったが、やがて出ていった。浴室もがらんとした雰囲気である。楕円の大きな浴槽が中央にあり、バスクリンの薬湯が右奥にある。左奥の小さな浴槽は使われていないようだ。入口横には立ちシャワーがあった跡があり、定期的にその辺から排水の音がする。天井は白のモルタルで仕切り中央上に格子のはいった小さな蒸気抜きがある。正面壁にはアルプスをイメージしたひかえめなタイル絵がある。
 たまたま私が入った時間(午後7時ごろなんだが)だけかもしれないが、ほとんど人の気配のないこの銭湯には、あたかも由緒ある大きな旅館の風呂に深夜に入っているようなイメージをもった。私は日本の家屋の中の落ち着きのある空間も好きだが、銭湯に人の活動するにおいがないのはさびしく、昔のよい銭湯の行く末をさみしく案じる気持ちがこみ上げてきた。