県道13号で新居浜市役所から800mほど西進し十全病院前交差点を左折してすぐ南に100mほど行くとこの銭湯があった。周りには四つの広い駐車場が配置されていて、コインランドリー付きの近代的なつくりの建物であった。銭湯の前には食堂や大衆酒場などもあり、銭湯を中心とした小さな街を形成していた。煙突は白塗りのコンクリートで、上部を鉄板で補強してあった。
平成9年に私は入湯した。以下はその訪問記である。
入り口を入ると前にソファのあるゆったりしたフロント形式の番台がある。脱衣場にはいると広い更衣室があるが、中央にある籐のしかれた座席がある。テレビ、寝式マッサージ機、自動販売機、ロッカーなど一般的な備品しかないが、この籐の座席があることで更衣室全体の雰囲気が和らぐような気がする。
浴室は多彩な浴槽でにぎやかである。中央にある主浴槽は奥の湯出し口からでた豊富な湯を手前の少し低くなっている気泡湯の浴槽にそのまま流し、その湯はさらに瀧となって浴槽の下の人工芝に落ちている。このような流れる湯は浴場の雰囲気の活性化ばかりか人間のアメニティ感覚を刺激し、清涼感、安堵感を感じさせるものである。どうせ濾過するのならこのような工夫も有効であろう。右の手前にはボディーマッサージと打たせ湯がある。ジュビナバスとビートバスというらしいがどちらがどちらなのだろうか。左にはバブルジェットの薬湯がある。手前に寝式が二つ、奥に座式が二つあり、今日はアロエ湯であった。その上からは赤外線?らしきランプが照射しており、その上には造草をはわせている。
奥には3段の座席がありテレビも付いたサウナがある。ちょうど夏の甲子園で松商と東海大?との試合をやっていた。熱気は上方から来ているように思える。その前にはスチームサウナもある。そして右奥には珍しい水のはった岩風呂(バブルジェット付き)があって、サウナ後の汗が流せるようになっている。天井は、白のプラスチックで、こころもち中央が下がっているようだ。水岩風呂の上に明かり取りがあり、ここから蒸気も逃がしているのかもしれない。この銭湯はオゾン殺菌浄化装置を取り入れているということである。
しばらく新居浜の銭湯にご無沙汰していた2012年8月、こんなニュースが飛び込んできた。
8月5日午後1時半頃、愛媛県新居浜市江口町の銭湯「春日温泉」から出火、鉄筋3階建て住宅兼店舗約800平方メートルのうち約600平方メートルを焼き、3時間半後に消えた。入浴中の男女約10人は逃げ出して無事だった。 新居浜署の発表では、1階にあるボイラー周辺の燃え方が激しいという。(読売新聞)
そして平成27年、久しぶりに銭湯の実態調査で新居浜を訪れた。再開は難しいだろうなと思いながら春日温泉があった場所へ行ってみた。結果として完全に静かな住宅地になっていた。おそらく完全に壊したのだろう銭湯は跡形もなく、そして銭湯を中心として営業していた飲食店などの小さな街も跡形もなく消滅していたのだ。正直言ってこの銭湯城下町風の雰囲気ってなかなか気に入っていたのでとても残念である。この火災が新居浜市周辺の銭湯業界へ与えたインパクトは大きかったのではないだろうか。春日温泉の場合、人的被害は無かったようなのが不幸中の幸いだったが、古くなった銭湯設備なら保険の査定も厳しいだろうし火災のリスクを実感すれば続けていく事の困難さを実感させただろう。