宮北温泉  伊予三島市 中之庄506 廃業

営業時間16:00〜21:30 休業は日曜日 

 新居浜からのR11号が伊予三島駅のすぐ手前で、JRの線路をまたぐ地点がある。そこから海側を見ると、すぐ足下にブロック塀に囲まれたこの銭湯が見える。斜め前に小さな駐車場があり、隣の製箸工場と同じような屋根付き煙突が並んでいる。おそらくこの工場との連携で加温燃料を調達しているのだろう。上は住居になっているようだ。
 のれんをくぐると豊満で温和な感じのするおばさんが迎えてくれた。番台は靴脱ぎ場からではしきりがあって小窓を通してしか連絡できないので、脱衣場に上がって湯銭を払った。ここは2つ前の県の銭湯料金告示が貼ってある。脱衣場には中央に机が一つ、イスが2つある。ロッカーの数字は珍しく横に加算されている。しきりの上に大きなファンがあるが、今日は2つある扇風機の一つが回っていた。
 浴室もそう広いものではなく、側壁には装飾も壁絵もなくすっきりとしている。入口正面についたて状の洗い場があるが、足もとには滑り防止のタイルが付け加えられていることから考えると、昔事故があったのかもしれない。左奥に浅く横長の湯船があり、湯の噴き出す中央の深い正方形の湯船とつながっている。天井は板張りで、奥が高くなっており、さらに中央がくぼんでいて、そのくぼみの端の奥壁に蒸気抜きがある。
 この銭湯の見所はカランである。カランの博物館のようにいろいろな種類のカランがあるのだ。ナス型と宝のものが多いが、よく見ると最古のものと思える金属レバーのカランが1つ、そうしてそれが少し進化しためずらしい垂直ピストン型のカランが3つほどある。シャワーも1つある。湯桶は県公衆浴場組合の赤字のロゴの入った白いケロリン桶である。めざわりな注意書きも少ないので「つけまいタオル、かけまいめいわく」の古い呼びかけの注意板が印象に残った。
 ぼんやりと湯に浸かっていると、「赤トンボ」曲とともに市の放送が蒸気抜きから大音響で飛び込んできた。午後5時の放送らしい。この銭湯は製箸工場と同時経営なので燃料面で有利であるが、近くの市営住宅も古くなり、運動公園などの設置に伴って周りが一般住宅地化している。 さらに、平成10年4月末からはすぐ近くに、「三島乃湯」という近代的な温泉浴場ができた。湯銭がここの2倍以上ではあるが、少なからずこの銭湯にも影響があることだろう。(平成10年5月)

 平成26年に再調査したときには、残念なことにここも含め既に四国中央市の銭湯は全て廃業してしまっていた。この銭湯は平成27年も煙突を含め建物はそのまま残っていた。このときは銭湯のまわりを散歩してみた。するとこの銭湯のすぐ奥に歩き回ってみた。すると写真のようなかなりの数の長屋風の木造平屋の団地の街が広がっている光景が目に飛び込んできた。私が子どもの頃はよく見かけたこのような形態の団地を日本で見たのはかなり久しぶりである。この団地の人の中のかなりの人がこの銭湯を使っていたのだろうなあと、洗面器に石鹸を入れ首にタオルを巻いた子どもや家族連れがここから銭湯に向かっている昭和時代によく見られた光景を想像してしまった。